隣の幼馴染は魔王さま!〜バカ勇者と陰険賢者を殺しにやって来ました。糞女神もです。

2nd kanta

第1話 1目覚め

ビーィ、ビィー、ビーィ、


「えっ!五号病室のサリアちゃんの心臓が止まっている!」


「吉田さん!先生に連絡して!

私は病室に行くわ!」


「はい!下川さん!」


 夜勤勤務のナースステーションでは慌ただしく皆が走りだした。


 患者の容態変化はよくある事なので我を忘れる程パニックに陥る者は一人も居ないが、いかんせん1分1秒を争う事態には変わりは無い。


下川は五号室の戸を開き中に入る。


「サリアちゃん!」


 室内の照明を付けるとベッドには誰もいなかった。


へっ?


いけない!鼻が出た。


「サリアちゃん!」


 直ぐに窓際のカーテンが半分開けられそこに、誰かが立っているのを下川は見つけた。


「サリアちゃんなの?」


 その子は、ゆっくりと振り返り私を見てベッドの枕元の上を見ていた。


神外しんがいサリア……か


「下川さん!おはようございます!今日もいい天気ですね!」


ニコッ!


「えっ、えっ、えーー!!おはよー?」


 いけない、看護師はいかなる時も冷静でなければならない!とそう自分に言い聞かせる下川だった。


 その時急ぎ足で病室に近づく複数の足音が聞こえた。


「下川君!神外さんの容態は……」


「先生おはようございます!今日は絶好の行楽日和ですね!」


 そこには、銀髪で瞳の赤いメチャンコ可愛い美少女がいた。


「えっ?サリアちゃん髪染めた?」


「先生!神外さんは脳死状態で人口呼吸器で何とかこの半年間、生命を維持し続けていたんですよ!」


「だよねー、サリアちゃんチョット観てもいいかな?」


「エッチな事しなければ?」


「ぐっ!取り敢えずね。明日というか今日か、精密検査をするからね」


「は〜い」


「少し触るからね」


「オッパイじゃなきゃいいですよ先生」


ぐぬぬぬ、


 先生は触診をしようとしてたの?そして女子高生の胸を触ろうとしていた……


吉田はそう感じた。


「検温と血圧をみてね」


「はい!」


「目の反応を見ますよ」


 ペンライトを当てマジマジと見るとマジに瞳の色が真紅になっている。

その他は異常がない。

首の周りのリンパの腫れもない。

口の中も異常がないキレイな歯並びだ。


「先生、体温36度3分です。血圧は上122下75です」


「平熱だね。血圧も問題ないね。じゃ聴診器を当てるね」


「いや〜ん先生のエッチ!」


サリアは大きな胸を両腕で隠した。


「そう言えば彼女はブラをしていない筈」


下川さんがゴチる。


「ぐっぬぬぬ、これは医療行為であってプレイでは無いよ……」


コイツ、プレイと言ったな!


「先生、私がサリアちゃんの胸に聴診器を当てますので診断してください」


「あっ……ありがと、吉田君……」


「なんか、先生残念そうね。でも私女子高生だから、仕方が無いよね」


とケラケラ笑うサリア。


「う〜ん、異常無しだわ。八時ぐらいにでも、ご家族に知らせておいた方がいいね」


「分かりました連絡しておきます」


「まだ朝が早いから、サリアちゃんは、それまで寝ているといいよ」


「えー!私半年間ずぅーと寝ていたんですよ!その間の情報を仕入れています。

たしか、スマホがあった筈」


「多分引き出しの中だと思うわ」


「ありがとうございます下川さん」


 エヘッと笑う姿は年相応の女子高生だと下川は思った。


「じゃ後でね」


「は〜い先生!」


「先生、機材は全て下げても、よろしいでしょうか?」


「必要無いね。下げちゃって」


「はい、分かりました」


 機材のコードを束ねながら下川は疑問に思う事を、思い切ってサリアに聞いてみた。


「サリアちゃんと私、初対面だよね貴方がこの病院に運ばれて来た時は意識が無かった」


「あーそうですね。初めましてです

でも、人の声は聴こえていました。

私の周りで何をやっているのかも想像の範囲ですけど分かってましたよ」


「初めのうちは下川さんが担当してましたよね」


「やっぱり聞こえてきたんだね」


 嘘だ!脳波は話し掛けても刺激を与えてもピクリともしなかった事を今でも覚えている。


 いずれ、この子も臓器を摘出され全国に送られる事になっていたんだ。

虚無感に襲われたのを今でも思い出し泣きそうになる。


「どの辺まで覚えているの」


「う〜ん、大体の事なら……さっきの先生が私の胸を触ろうとして、吉田さんと下川さんに止められて、後で二人からネチネチと言われた事かな?」


「うん、そんな事もあったね。あの先生根はいい人なんだけど、性癖がねえ……」


「そうなんだ、私の勘があたったのね」


 ん?……別室での先生への説教いや、注意喚起を何故サリアちゃんが知っているの?


 眼の色も髪の毛の色も雰囲気もって元気な頃のサリアちゃんを知らないけど、半年も寝たきりにしては、元気が良過ぎる。床ずれギリギリの背中など健康的な女子高生そのものだった。


「サリアちゃんはどうして眼の色や髪の毛の色まで変わったかしら?」


「ああ、多分私が一回死んだからかな?」


えっ!何を言っているのよこの子は!


「下川さん、私お腹が空いたわ。普通のご飯って食べれるの?」


「直ぐには無理だわ、なんせ半年間食事を取っていないし、胃に直接管を通して流し込んでいたんだよ!……?!

チョット待って!よく見せて!」


「イヤ〜ン、下川さんあんまり見ないでよ!

恥ずかしいわ」


「貴方!何で傷跡がないのよ!胃瘻の傷痕も点滴のあとも無い!」


「さあ、死んで蘇ったからじゃないですか?私にも、分かりませんよ」


 下川はサリアの両肩から手を避けて入院着を整える。


「御免なさい……私冷静では無かったわ」


「いいですよ、私だって自分の事なのに良く分かっていなから」


はあ、直ぐには退院出来そうにないね。


その間に色々と調べるか。



☆☆★★★★☆★☆☆☆☆☆


第2話は18時予定です

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