【短歌連作】誌面掲載作品より抜粋
夏山栞
Morning
耳朶にひかりを纏わせるための穴があること 朝のつめたさ
バゲットで荒れた上あごなぞりつつ死者数を見た、けさは戦の
ひとつふたつといのちを数えたくはないジャムの瓶底くろぐろとして
すっぴんのわたしと見合う洗面所 赦しあわないことを赦せば
チーク塗るためのほほえみコーラルはゆくはずだった岬の名前
梅雨明けの報より先に夏が来てまぶしさに悪意はないけれど
どの比喩もどうせ嘘なら口紅の色のなまえで呼ばれてみたい
いまだれも死にませんように マスカラが乾ききるまでそっとまばたく
(かばん2024年7月号掲載)
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