ダンジョン街

「ダンジョンか…ここにアイツらが入って行ったって事か?」


「おそらくそうでしょうね。荷物が荒れて放置されていた事を考えると、既に死んでいるかも知れません」


 ヒューは荷物に武器がなかった事とダンジョンを結びつけ結論を出した。

 十数人の山賊が死んだ可能性があるダンジョンを前に尻込みしていると


「…入ってみるか」

 ガイオが中を探索する事を提案した。


「本気ですか?このダンジョンは危険な可能性が高いんですよ」


「あぁ、だが俺たちが前に行ったダンジョンよりもここから感じる威圧感は小さい。…もしかしたらできたばかりのダンジョンかも知れないだろ」


「確かにそうですが…」

 ヒュー自身も魔力感知により感じた魔力は以前に訪れたダンジョンの魔力よりも小さかった。

 だが、十数人もの山賊が死んだ可能性があるという事実が足をすくませている。


「そうだな。ガイオの言う通りだ。かもしれないと言う可能性だけで尻込みしてちゃ何もできやしないしな」


「あなたは止める方だと思ってましたよ。ベックさん。…確かにそうですね。死ぬのが怖くて冒険者なんかできない。その言葉にも賛同しましから」


 ヒューは依頼を受ける時、ガイオが言った言葉を思い出していた。


「俺もたまにはいい事言うだろ。—さて、行くぞ」

「はい」 「あぁ」


 ガイオの呼びかけに答え、3人はダンジョンの探索へと向かった。



 中に入ると、そこはスライムやゴブリンといった低位の魔物や落とし穴といった簡単な罠が仕掛けられていた。


「罠や魔物も低位なものばかりで最上位クラスの人間を倒せた山賊がこの程度でやられるとは考えずらいですね。1人2人ならともかく十数人全員が」


「そうだな。だが警戒は怠るなよ」


「わかってる。弱いからといって侮ってかかると痛い目を見るからな。ゴブリンにやられたら笑い物だ」


「でも、成り立ての冒険者の死因の大半が魔物を侮って死んでしまう事ですからね」


 冒険者に成り立ての若者が一番多い死因はゴブリンやスライムといった低位の魔物によるものだった。先輩冒険者達の話や戦い方を見て自分でも勝てると思い、挑み、負ける。そこで初めて侮らない事、情報収集の大切さを学び死んでいくものが多いのが現状だった。


「お前も死にかけてたもんな」


「っやめてください。人の恥ずかしい過去を晒すのを」


「おい!集中しろ。山賊連中だってそう侮ったから死んだのかも知れないんだぞ」


「すみません」「すまん」


 一行はダンジョンを隅々まで探索していき広間へと辿り着いた。


「ここが一階層目の最後か」


「それなりの覚悟を決めて来ましたが特に目立った箇所はなかったですね。…いや後半は何故か迷路や罠が目立ってましたけど」


「…この程度のダンジョンで十数人の山賊団がやられたとは考えにくい。やはり、別の場所に拠点を移したと考えるのが妥当だろう。まぁこの先に何かあるかも知れないが」 


「そうだな。2層目を探索する装備もないし、一旦戻って街道調査の続きをしよう。そしてギルドに戻って報告だ」


「——っ!」

 ヒューが突然後ろを振り向き、あたりを見渡した。


「ど、どうした?」


「…いえ、今誰かに見られているような気がして」


「こんな場所で、そんなこと言うなよ。さっさといくぞ」


 3人は出口へ向かって歩き出した。念の為にもう一度危険な箇所がないかを探索しながら。



 ———ダンジョン探索から数日後。

 3人は無事に街道調査の依頼を終え、ソーテリエの冒険者ギルドに帰還した。


「それで、調査の方はどうだった?」


「街道調査はまぁ目立った魔物なんかはいなかったな。いるのは下級の魔物ばかりだ」


「そうか」


 他にもガイオ達は調査について報告していき、報告を終えた後。本題と言わんばかりにグレイが口にした。


「街道調査に関しては了解した…それで、山賊に関してはどうだった?」


「山賊に関しては——」


 ガイオが言いかけると被せるようにヒューが発言する。


「山賊に関しては発見で来ませんでした。探知魔法を使い街道から半径1キロ程を調査しましたが山賊本体は発見できませんでした。ですが痕跡はあったのでいた事は確かなようです。ですが荷物が荒らされていてしばらく帰っていないようでした」


「…何でお前が言うんだよ。リーダーのやくめだろ?」


 ガイオが文句ありげな顔で言うと


「山賊の痕跡を発見したのは僕ですし、僕の方が簡潔に説明できますから」


 ヒューがすかさず反論する。


「…この野郎…」

「山賊に関してですが痕跡の他にも発見したものがあります」


「何を見つけたんだ?」


「ダンジョンです。一応ダンジョン内も一階層だけ調査しましたが山賊は居ませんでした。中も弱い魔物ばかりで山賊がやられたとも考えにくいです。おそらくは他に拠点を移したんだと思います」


「ふむ…」

 グレイは思案し


「そうだな…調査したのが一階層だけなら先の階層に潜伏している可能性、もしくは山賊を殺した魔物がいる可能性がある。それにダンジョン自体も放っておく事はできない」


 今回調査した街道は鉱床が発見された事で今後さらに利用者が増える。そんな場所の近くにダンジョンが発見されたと分かれば危険が増えることで利用者が減ってしまう可能性があった。


「街道からダンジョンまでの道を整備して他の冒険者にも伝えよう。ダンジョン前仮設ギルドも設置する。一先ずはこれでいいだろう」


「いいんじゃねぇか」


「とりあえずご苦労。ゆっくり休め。ダンジョンの方はまぁお前らが攻略してくれてもいいぞ」


「そうしてやるか。実際一階層目は大した事なかったしな」


「その調子でやってくれ」


「おう」

「では失礼します」


 3人が部屋出ていくのを見送り


「これから関係各所に根回しか。全く事務仕事にも慣れてきたもんだな」


 グレイは愚痴をこぼした。



 数日後。『風の旅団』の3人は宣言通りダンジョンの攻略に向かった。


 街道からダンジョンまでの道が整備され、多くの冒険者が滞在し、道の端にはどこからか聞きつけた商人が露店を開いていた。


「こりゃすごいな。俺たちが見つけてからそんな時間は経ってないが。まるでダンジョン街だな」


「ですね。街というか道に露店が並んでるだけですけど。発見さられたばかりのダンジョンですからお宝狙いですかね」


「だろうな」


 ダンジョンへ向かう道中、他の冒険者への聞き込みや露店の商品を見ていた。


「露店は便利アイテムや武具防具の修理などですね。もうこんなに商人がいるのは流石という感じですね」


「ダンジョン前に仮設ギルドが設置してあるらしいから、さっさと行こう」


 仮設ギルドの前には多くの冒険者が列をなしていた。

 その中でガイオが1人の冒険者に目をつける。


「おっ!ベイルじゃねぇか。何だお前も来てたのか」


「ん?ガイオか。久しぶりだな」


「知り合いですか?」

 知り合いらしい2人を見てヒューが問いかける。


「おう。こいつはベイル。ソロの冒険者で等級は三級だ。ベイル。コイツらは俺の仲間でヒューとベックだ。確かベックとは会ったことあるよな?」


「あぁ。会ったことがある。久しぶりだな。それとガイオさっきの説明だが一つ間違ってる。俺は三級じゃなくて今は二級だ」


「お前、とうとう二級になったのかすげえな」


「確かにソロで二級はすごいですね」


『風の旅団』は冒険者パーティとしては三級だが、個人ではガイオとベックは二級、ヒューは三級となっている。個人の等級は実力だけでなくパーティでの活動内容も評価に含まれるため、ソロで二級まで上り詰めたベイルはガイオやベックより実力者ということになる。


「ところでベイル。今ダンジョン攻略がどこまで行ったか知ってるか?」


「耳には挟んだな。6階層までは攻略出来たらしい。罠が異常に多くて迷路も複雑だがそれ以外は特になかったそうだ」


「そうなのか。一階層とあんま変わらなんだな」


「何だ、知ってるのか?このダンジョン」


「そりゃここの発見者は俺達だからな。最初に来た時に一階層だけは攻略したんだよ。それ以降は装備不足で行ってないけどな」


「そうか。ならこれは知らないだろ。7階層からは雰囲気がガラッと変わってそれまで洞窟だったのがそこからは遺跡になってるそうだ。出てくる魔物もそこそこ強くなって勢いだけじゃ攻略は無理らしい」


「なるほど。なら俺たちで攻略してやろう」


 ガイオ達はベイルと共に受付の列へと並んだ。





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更新の遅れはデ○モンの仕業だと思います。by作者

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