星の記憶、君の心
蒼龍
第1話感じない君の心
俺、星凪悠真には、生まれつき変な力がある。人の心が、オーラみたいな感覚でわかるんだ。
隣の席の佐藤が好きな子をチラ見すると、胸に暖かく脈打つ波動が響く。まるで柔らかい光が揺れるみたいだ。担任がテストの答案にイライラしてると、ギザギザした鋭い波動が刺さる。不安そうな友達の顔には、冷たい靄が漂う。16年間、それが当たり前だった。
でも、高校2年の春、月瀬葵が転校してきた日、俺の能力は初めて空振った。
教室の窓際、陽光に照らされた彼女。黒髪がさらりと揺れ、青い瞳が教科書に落ちる。その瞬間、胸に何も響かなかった。波動も、靄も、光も、ゼロ。
いや、ゼロってのはちょっと違う。朝霧陽向――物心ついたときから一緒の幼馴染――の心も、ずっと感じたことない。陽向が1人目、葵が2人目だ。
「悠真、ぼーっとしてんなよ! また頭痛か?」陽向がニヤニヤしながら肩を叩く。写真部のカメラを首に下げ、いつもの明るい笑顔。茶色い瞳がキラキラしてるけど、なんか引っかかる。
「いや、違うって」俺はごまかす。陽向のオーラ、感じないのに、なんでこんな気になるんだ?
放課後、美術室に寄った。文化祭のポスターを頼まれ、美術部の葵に相談だ。彼女はキャンバスに向かい、筆を動かしてる。そこに浮かぶのは、見たことない星座。光の点が複雑に連なり、まるで夜空が動いてるみたいだ。
「それ、なんて星座?」思わず声をかける。
葵が振り向く。クールな瞳が俺を捉え、わずかに微笑む。「…知らない。なんとなく、描きたかっただけ」
その声、静かでピュアで、胸がざわつく。オーラは感じないのに、なんでこんなドキドキする?
夜、写真部に顔を出す。陽向が現像した写真を見せてくる。「なあ、悠真、この天文台、なんか懐かしいよな?」
写真には古い石造りの建物、星見神殿と呼ばれる天文台。星の光が石壁に映り、なんか心を掴む。
「懐かしい? 見たことねえよ」俺が笑うと、陽向は「へえ、そうか?」とニヤリ。でも、その目、なんか知ってるみたいだ。
夜、天文部の屋上、星空を見ながら思う。葵の星の絵、陽向の「懐かしいよな」。なんでお前らの心だけ、読めないんだ?
陽向の目、なんか知ってるみたいだ。まるで、俺が忘れた何か大事なことを、2人が持ってるみたいに。
星の記憶、君の心 蒼龍 @Souryumarin3
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