第2話 恵子の場合②


 もっとも暑い盛りに訪れたのはしかし、北海道の北の果てにある百名山最北端の利尻山だった。

 稚内の付近の、昆布の獲れる海域に浮かぶ離れ島に聳えていて、富士、と異名をとった。


 美麗な絶景がここかしこにあり、高山植物、珍しい花卉も多かった。

 最高峰は、3120メートルあったが、危険なので登れなかった。

 事前に、全ルートは小一時間で一周できるはずと調査済みだったが、ここですら、炎天下の日盛りは、やはり並大抵な暑さではなく、登山なれした恵子もヘバッテしまった。

 

 ちょうど、瀟洒なコテージを思わす、中腹の山小屋があったので、休憩することにした。 

 

 …クーラーの冷風を期待しつつ、足を踏み入れると、あにはからんやというか、冷房だけはガンガンに効いていて一気に汗がひいた。


 「いらっしゃあい」 と、ちょっとゲイっぽいマスター?が、歯を見せて笑った。

 茶髪で、水商売なれしているような雰囲気。


 客は逆に、短髪で、筋骨隆々の、山男?タイプの若者が3人いて、一斉に此方を見て、意味ありげに恵子を品定め? 値踏み? する気配がした。


 「こんにちわ~」良家の子女そのものの素のままの無防備さで、恵子は可愛らしくあいさつした。 ちょっと男たちが動揺する気配がして、結局むにゃむにゃと三人とも曖昧に返事しただけだった。(内気なんだなあ)と、恵子は一人合点したが、自分が彼らにとって(あまりにも美しい娘さん)であるがゆえ、と、そういうエキストラなファクターには無頓着だった。

  

 <続く>

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る