第33話 少し振り向いて

 ノースと共にディオロイ城の隣にある牢屋に来たシャーロット。門番をしている魔術師がノースに一礼をして術式をかけ重くした扉をノース達の代わりに開けた。中には入るとまた別の魔術師がノース達を前を歩き案内をする

「クローム様、ノース様が来ました」

 案内されてすぐ牢屋の前にいたクロームに魔術師が声をかける。振り向いたクロームがシャーロットと目が合い、シャーロットが嬉しそうに駆け寄り抱きついた

「お父様!おはようございます」

「おはよう。シャーロット、どうしてここに?」

「騒がしくて、目が覚めたみたいなの。お部屋で一人でいるよりも良いでしょ」

 ノースがクロームの質問に答えると、シャーロットがクロームを抱きしめていた手を離した

「お父様、迷っていた子はどこに?」

 そう聞くとクロームとノースが顔を見合わせノースが頷く。それを見たクロームが前にある牢屋の隣の牢屋まで移動しはじめ、ノースやシャーロット達が後を追いかける。牢屋の前に止まったクロームの

背後からシャーロットも牢屋の中を見ると、シャーロットと同じく白く長い髪の女の子がこちらに背を向けるようにたち壁を見つめていた。背後から視線を感じたのか、少し目線を後ろに向ける。シャーロットと目が合い、すぐに目線を背けるようにまた壁の方に顔を向けると、シャロだと確信したシャーロットも少しうつ向いた


「私達が出掛けている間に、シャーロットに似た子が侵入したそうなのよ」

「そうなのか」

「ええ、私の指示でここに入れましたわ。でも魔術師だったみたいで、すぐに逃げられて……」

「シャーロットが……。魔術師相手に頑張ったね」

 うつ向いたままシャーロットが言うと、クロームがシャーロットの頭を撫でて労う。優しく撫でられ少しうつ向いていた顔を上げ、クロームとノースを交互に見ると、二人は優しく微笑む

「みんなに詳しく話を聞かないといけないな。シャーロット、少しリビングで待っていてくれるかい?」

「ええ、でも……」

「シャーロット、あなたの好きな朝ごはんを用意するから待っていましょ」

「分かりました。お父様、またね」

 ノースがシャーロットの背中に手を添え入り口まで歩き出る。クロームが二人の帰る様子を見守り、魔術師がギィと重々しく扉が閉ざした。クロームが目線を変えシャロがいる牢屋の方を見ると、ついさっきまで居たはずのシャロの姿がなくなっていた

「すぐに探します!」

「いや、結界を張っても逃げたのなら、君達が探しても無駄だろう」

「では……」

 クロームの話を聞いて、魔術師達が顔を見合わせる。その間にクロームは入り口の方まで歩き、まだ牢屋の前でクロームを見ている魔術師達の方に振り向いた

「それよりシャーロットのために美味しい食事と私の術式も重ねて見張りをつけよう。探すのはその後にしよう」

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