第28話 時折、思い出しながら

 シャロとリリーがシャーロットの部屋を出て数時間後、少し日が落ちて来た頃、ディオロイ城の稽古場にシャーロットの声が聞こえていた

「シャーロット様、そろそろ終了にしましょう」

 剣を持ち、はぁ。と大きく肩を揺らすシャーロットに、練習相手にされている警備の人達が疲れた顔で佇んでいる

「いえ、まだもう少し……」

「しかしもう皆疲れていますので……」

「ここ最近サボっていたから、もう少し」

 そう言うと、一人剣を降り練習を始めるシャーロット。警備の人たちは、ほっと一息をついて稽古場の壁にもたれ座りだす。その稽古場の入り口では家政婦達も困った顔でシャーロットの様子を見ていた

「魔術の本を読み出したと思えば今度は剣術……」

「熱心なのは良いことですが……」

 困ったように呟きながら剣術の練習を続けるシャーロットを見守っていると、あっという間に稽古場の外は暗くなっていた


「さすがに疲れたわ」

 シャーロットが、ふぅ。と一つ深呼吸をして稽古場を後にする。ディオロイ城に戻るシャーロットの両脇に家政婦達が付き添い歩き、タオルを渡す

「シャーロット様、お疲れ様です」

「お腹がすいたわ。すぐに何か食べれる?」

「ええ、そろそろ夕食のお時間ですので、すぐに用意します。それと、食後のデザートですがシャーロット様のご希望通り後程お部屋にお持ちしますね」

 家政婦の言葉にシャーロットが足を止め怪訝な顔をする。少し遅れて一緒に歩いていた家政婦達も足を止めシャーロットを見る

「あの、なにか?」

「私、やっぱり魔術師は嫌いだわ」

「……はぁ」

「悪いけれど、部屋の魔術書は書庫に片付けていてくれる?」

「ええ、すぐに」

 返事を聞いて部屋に戻るためまた家政婦達と共に歩きだす。結んでいた髪をほどき、ふぅ。とまたため息をつくと、目を閉じシャロとリリーを思い出し家政婦に声をかけた

「あと、食後のデザートはやっぱり食堂で食べるからよろしくね」

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