第2話 飛び立つ思い
少女が牢屋から抜け出してすぐシャーロットが鬱憤を晴らすため、ディオロイ城にある外の広場で警備担当の剣士達相手に剣術の練習をしていた
「シャーロット様、そろそろ終わりにしてくれませんか?」
「いえ、まだもう少し」
疲れた顔の対戦相手の剣士に返事をして、はぁ。と一つ深呼吸をして息を整える一方、広場にある木陰で練習に付き合わされ疲れた剣士達がぐったりと休んでいる
「シャーロット、皆さんが困っていますよ」
「お母様」
声をかけきた白髪でウェーブかかった髪が腰まである女性にシャーロットが驚き持っていた剣を納める
「この方々はこのお城を守る大切な人たちですよ。練習は良いですが、あまり無理はさせないように」
「はい、ごめんなさい……」
木陰で休む警備の人たちを見ながらシャーロットに注意をすると、しょんぼりと少しうつむいていると、ノースに付き添っていた一人が申し訳なさそうに話しかけた
「ノース様、お時間がありませんので……」
「お母様もお出かけですか?」
「ええ。しばらくお留守番かもしれないわ。シャーロット、頼みましたよ」
「もちろんです。ここを守るのは私の役目ですから」
「あら、頼もしくなったわね」
シャーロットの返事を聞いてノースが嬉しそうに微笑み、シャーロットもエヘヘと微笑む
「では、ノース様」
再び声をかけられて広場を去っていくノース。後ろ姿を少し寂しげに見送った後、数回顔を横に振った
「さて、もう一試合」
収めた剣を見てそう呟くと、木陰で休んでいた剣士達は困ったように顔を見合わせた
「何の話をしているんだろ」
広場の木の枝に座り様子を見ていた少女が一人呟く。シャーロットとノースの会話が終わり、広場が少しずつ騒がしくなり、少女がいる木にも人が通りすぎていく
「まあ、私には必要ないかな」
人々を見ながら、ふぅ。と一息つくとふとシャーロットの頭上をグルリと一周する白い鳥がいた。少女がその鳥に向かって手を振ると、気づいた白い鳥が急いで少女がいる木に向かって飛んできた
「間違えてそっくりさんの方に行っちゃったの?」
隣の木の枝に止まった白い鳥にクスクスと笑って話しかけていると、足元がガヤガヤとまた騒がしくなっていた
「シャーロット様、危ない!」
シャーロットと練習していた剣士の剣が相討ちで真上に飛び、シャーロットに向かって落ちていく。驚きで剣先を見つめたまま動かないシャーロット。周りにいる人達が慌て出し、シャーロットも逃げられずぎゅっと強く目を閉じた。すると、体をぎゅっと抱きしめられた感覚がきた後、カシャンと剣が地面に落ちる音が聞こえた
「本当に危なかったね、大丈夫?」
と、顔のすぐ側で声が聞こえてきて恐る恐る閉じていた目を開くと、さっき牢屋に閉じ込めたはずの少女が自分を抱きしめていた
「えっ、あなた、なんで?」
シャーロットが驚き戸惑っていると、少女が優しくシャーロットを降ろす。地面に足が着くと我に返ったシャーロットが少し乱れた服を正していると、白い鳥が二人の元に飛んでやってきた
「シャロ、大丈夫?怪我していない?」
「リリー、ここに来ちゃダメだよ。さっきの所で休んでて」
「……シャロ?」
落ちた剣を拾いながら会話を聞いたシャーロットが顔を強ばらせ二人を見る。目線があった少女がはぁ。と一つため息をついた
「あなたシャロっていう名前なの?」
「あーあ。リリーのせいで、バレたじゃん」
二人の間にいる白い鳥のリリーに少し不機嫌そうに言うと、リリーが二人を囲うようにグルグルと飛び回る。リリーの動きに癇に触ったシャーロットが拾った剣をまたシャロと呼ばれた少女に剣先を向け、騒ぎに駆けつけた家政婦達と離れて様子を見ていた剣士達の方に険しい表情のまま少し顔を傾けた
「コイツをすぐに牢屋に連れ戻しなさい!」
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