俺のクラスメイトと繰り広げられる、異能力ラブコメがまともなわけがない。
甘織玲音
第0話 俺のクラスメイトがマトモな訳がない
遥か遠くに聳え立つ学校。それは俺たちの始まりであり、終わりであった。大抵の物語はプロローグから入り、いずれはエンドロールを迎えることになる。出会いと別れ、衝突と成長。永遠の思い出。つまり、青春とは物語である。
この桜散る温かな季節に、俺は中学を無事卒業し、晴れて高校生デビューにへとなった。中学ではあまり周囲に馴染めずに、ただ退屈な毎日に苛立ち、早々たる卒業の日を待っていた。そのため、あまり同級生が通いそうに無いな普遍的な学校にへと無事進学し、俺の物語の基盤を立てる事ができたのだ。そして、家も学校用に引っ越した。家族は居ないから寧ろ好条件だったのかもしれない。だが、家賃3万円の賃貸だから欠陥は多いけども。
平坦で退屈な桜道を通り、俺は《西野高等学校》へ足を運んだ。一体誰が有り難がって聞いているのか分からないくらい長々と、嬉しそうに語る校長の話もようやく終わり、俺たち新入生は担任達に連れられ、新たなクラスと対面する。どうやら俺は1年1組とかいうわかりやすいクラスになった。
クラスに入ると出席番号順に座ることになり、教師の自己紹介を終えると、自然と定番の自己紹介タイムになった。
いつも思うが『あ』行の人は毎回トップバッターで可哀想だな。せめて『か』行なら少々考える暇も小洒落たボケを考える事も出来るのにな。
ほら、例えばさ『ただの人間には興味ありません。この中に.....』的なインパクトアリげで何処かで聞いたことのある宇宙人とか未来人とか探しちゃうタイプの自己紹介だったりさ『おっす、オラ悟....』とか出来るのにな。
まあ、その台詞を言った彼女でさえ、少しは悩んだ時間があっただろう。もしもその子の名前が『あ』行で順番が一番最初だったらばきっと威勢も消え失せ『え、えっと。ただの人間.....です。あ、宜しくお願いします』とかで物語が早々に終わっていただろう。まあ、後者の自己紹介は順番など関係なさそうだがな。
いや、まあこの話に特に意味はないのだがな。なぜなら出席番号とか関係ないバラバラの順番だったからだ。
なんでだよと、まあとにかく無難に自己紹介が済んでいってどんどん俺の番に近づいてきた。
パッと見て、一際目立っていて変な奴も居なさそうだから俺は安堵していた。このクラスメイトと俺は青春を共にすると思うと何処か湧き立つ気持ちがあるのかもしれない。
しかし俺が希望を抱いたのはここまで。ある一人の自己紹介によって吹き飛ばされる事になったのだ。えっと、その子は立ち上がり皆と一緒の様に自己紹介をする。
「どうもこんにちは。秀納涼 功徳です。私は超能力者です。どうぞ皆さん、仲良くしてください。以上です」
この瞬間俺は凍った。なんだ?聞き間違いなのか?ってか、この女超能力とか自称しなかったか?
いやいや、多分自己紹介で印象に残るように昨日必死になって考えたに違いない。多分あれだろ。ライトノベルとかアニメに触発されて変な自己紹介をついついしてしまった、的な奴だろう。
いやいや、マジに考えるな俺。逆に、こういう変人枠がクラスに一人はいるのが約束だ。別にそこまで気にする必要はない。恐らくここまで宣言しているから寧ろ、俺の平穏な学生生活を邪魔する存在にはならないであろう。
ただ既に見た目から仕上がっている気がする。次はその少女が立ち上がった。
「鼎談・シャーロックホームズ、それが僕の名だ。僕は見てわかる通り探偵志望だ。もしもこのクラスに僕の助手になりたい人がいたら、いつでも待ってる。勿論助手になった子達には過酷で大変な目に遭うかもしれない。しかし、大丈夫。安心したまえ。この僕、七代目シャーロットホームズが居たらどんな事件もたちまち解決!!あ、無論助手は男女問わずだ。宜しく」
はい?
俺は思わず驚嘆した。それと同時に背筋に蒼く寒い汗が流れていくのを感じた。なんだ?ハズレクラスなのか?ここは。他の皆がそこまで驚いていないことに寧ろ驚きだよ。
あとボクっ娘?属性盛りすぎだな。一つだけでも充分だ。あと何故ハットを被っている?室内は脱いだ方がいい。
「みなさん、こんにちわー♪ 奥遍 芽琉ですよー?私はですねー。絵本からやって来ましたー♪♪仲良くしよーね。宜しくお願いします!」
普通に自己紹介で疑問系はおかしいよ。何処となく溢れ出すフワフワとした空気感。
あああ、いや気にするな、俺。案外時間が経てばどうにかなる。
ほら、別に絵本が好きなだけの少女なのかもしれないだろ。速攻変人扱いは良く無い。
「どうも、彩乃 紫亜よ。私は今呪いを受けて、歩けないので車椅子生活なの。呪いを解く方法を知っている方がいれば教えてください。解呪方法は問いません。因みに蟹とは関係ないですからね。宜しくお願いします」
すみません。これについてはノーコメントでお願いします。
「御香野 木鶴だ!!私は異世界で聖騎士をやっていた。今は訳あってこの世界にいるが宜しく!!」
訳あっての部分が気になるし、聖騎士だと?ツッコミたいことは沢山あるけど、一つだけ言える。
聖騎士なのにおっぱい小さいんだな。
「アタシは阿須形 奈木。先に言っておくけど、アンタ達と馴れ合う気は無いんだからね。友達なんて要らないから絶対に話しかけないでね。以上」
ツンデレだな。うん、典型的なツンデレ少女。だって、どう見ても高校生に見えないくらい幼いんだもん。よくある感じの、なんていうか.....theみたいな。
「あっ、えっと。私は薟麻耶 言葉です.....えっと、皆さん.....よろしくお願いします。」
うん。普通だ。普通が一番だ。それでこそ平和というものだ。自己紹介なのにヘッドホンつけたままなのがすこし気になるが、他のやつ程じゃない。
えっと、嘘みたいだろ。これが俺のクラスメイト達。これな俺の青春の仲間達だ。まあ、長々と言うものアレだからこの際ハッキリと言おう。
『このクラスメイトはまともじゃ無い。』
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