幽霊の彼と同棲生活〜引っ越したら最愛の彼と再会しました?!〜

ありす

プロローグ

ラブレター。


それは、好きな人に気持ちを伝えるもの。

それは、愛したいと思った人に送るメッセージ。

私は好きな人にラブレターを書いた。


『あなたの事が好きです、付き合ってください。』

そう書いたラブレターは、渡すことなく終わった。


彼は、死んでしまった。事故にあってしまい、この世を去った。泣いた。沢山泣いてしまった。最愛の彼が、死んでしまったことに。


​───────​───────​───────​​─​─


そして、彼がいなくなってから数年後。

私、安達みらいは、いつもと変わらない日々を過ごしていた。


だけど、そんな私に1つの情報が舞い込んできた。


「転校…?」

「そう、転校。お父さんの仕事の関係でね。」


母は、私にそう伝えた。


「引越したら、もう1軒家を借りようと思ってるの。みらい、あなたももう高校生でしょ?一人暮らししてみよ?」

「う、うん、わかった」


母に押され、私は断れずに承諾した。

高校から転校というのは珍しい話だが、仕方ないのかもしれない。


そして、引越し。大変だったが、新しく住まう新居はとても新鮮で、見慣れない風景だった。


私は引越しの片付けに疲れたのか、片付けが終わるや否や、すぐに寝てしまった。


突然、物音がした。リビングからだ。私は飛び起き、物音が聞こえた方に向かった。

人が座っている…?何故か、見覚えがあるような……そんな感じがする。


その瞬間、こちらを振り向いた。


「……みらいちゃん?」


その人、いや、。幽霊は、私の名を呼んだ。聞き覚えのある声。長い時間一緒にいて、忘れるはずのない声。そして、私の好きだった人にとても似ている。


「かなた……?」


私は思わず、彼の名前を呼んでしまった。


「やっぱり。ひさしぶり、みらいちゃん。」


幽霊……彼は、私の最愛の人、萩瀬はぎせかなただった。まだ道半ばで命を落とした、あの人。姿かたちも、あの時のまま…


「かなただ……」


私は、かなたに触れようとした。目の前にいるかなたの存在を確かめたかったから。


「え……?」

「……」


だが、すり抜けてしまった。まるで、そこに居ないみたいに、見えてるのに、触れない。


「…忘れちゃった?俺さ、数年前に事故で死んじゃってるの。でも、ここでまだ成仏できてないんだ。」


かなたは私にそう言った。


「…そっか、ごめんね」

「謝ることじゃないよ?死んじゃったのはしゃーないし」

「うん…」


私は酷く落ち込んだ。死んでしまった事実は、変わらないことに。


「ところで、なんでみらいちゃんがここにいるの?」


かなたは聞いてきた。


「親の都合で、転校…引越してきて…」

「なるほど…?」


私は、一通り事情を話した。こんなこと、話しても何もならないのにな…


「ふむ、じゃあ、一緒に暮らす?」

「へ?」

「ひとりじゃ寂しいじゃん、それにほら、物には触れるし、」


かなたはとんでもないことを提案した。まさか、好きな人から一緒に暮らすことを提案されるなんて。

状況が飲み込めなかった私は訳が分からず返答した。


「え、じゃあ、よろしくお願いします…?」


そうして私は、かなたと暮らすことになった。

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