孤高なクラスメイトは俺の頼みをきいてくれる
木場篤彦
第1話変わらない日常
「あの……落ちましたよ、望月さん」
「……ありがと」
チェック柄のハンカチが落ち、拾い上げ知らせた。
落ち着いた低い声で感謝の言葉を述べ、スカートのポケットにしまい、立ち去ろうと脚を踏み出した望月。
「うん……」
前髪で瞳の動きは分からなかった。
俺は数十秒程佇んでから教室に向かう。
望月杏奈は近付き難い雰囲気を纏った孤高なクラスメイトで校内で有名だ。
左隣の席の佐藤と二列前の須藤が談笑していた。
「なぁ、望月さんってほんとおっぱいデカいよなぁ〜?彼氏募集中だったりしねぇかなぁ!なぁ〜?」
「ほんと、それな!シてぇよぉ〜望月さんとぉ〜!!」
下品な会話に通りすがった林田が窘めた。
「聞こえるように言うことないでしょ、アンタら」
「うっさいよ、マジメ田ぁ!俺らがどんな会話してようが勝手だろ!はっ!」
「そうだそうだ!!口ィ挟まないでくれない」
「そんなだからカノジョが出来ないのよ!ね、中峰くん?」
「んえっ!?あぁー……そうかも」
同意を求められ、驚きながらも頬杖をついたままに頷いた俺だった。
「なんで肯定してんだ慎也ァ。お前はこっち側だろうが。マジメ田に乗っかんなよ!!」
須藤が怒りを込めた大声で突っかかってきた。
「須藤達とは違うもんね、中峰くんは。ありがとう」
「オイ、待てよ!まだ話ィつい——」
「終わったよ。じゃあ」
引き留めようと林田の手首に片腕を伸ばした佐藤は彼女に振り払われ、立ち去られた。
俺はこれ以上絡まれることを避け、読みかけの文庫本を机の中から取り出し、読み出した。
その後の午後の授業は滞りなく終わり放課後になって教室を出ていく俺だった。
通学路の途中にあるコンビニでサイダーとスナック菓子を何袋か買い、自宅に帰宅した。
他校に通う
「それ、俺のだぞ。それに自分家へ帰って寛いでろよ」
「んー、疲れた身体にアイスは沁み渡るぅ〜!つまんないこと言うなし〜!?」
中津ヶ池中学校に通っていた同級生でウルフカットの伊東は、高校でもスクールカーストの一軍だ。
「つまんないことじゃないっての。ゲームならおまえが帰ってないと遊べないだろ!」
「そっちは夜やろ。今はシンちゃんとアレ、プレイしたい。それともコッチが目当て、かなぁ〜?」
それなりにある胸をぐいぐい腕に押し当てながら誘惑してくる彼女。
「違ぁっ……ゲームの方だよぅ!!」
「ふふ〜んっ!今日は諦めよう」
テレビに繋いでいるゲーム機を起動させ、コントローラーを渡す俺だった。
「今日は全勝するから!!」
彼女は鼻息を吐き、意気込む。
俺と伊東はコントローラーを握りしめ、対戦を楽しむ。
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