虹影斬刀
第一章 再会の虹
廃墟と化した都市の上空に、ふと虹色の光が走った。
それは夕暮れの空を裂き、まるで世界の残骸に「まだ希望は残っている」と告げるかのように漂う。
インクは剣を握り締め、その光を見上げながら小さく呟いた。
「……先輩。」
虹が導く先に立っていたのは、一人の男――七歌。
かつて同じ道場で共に汗を流し、剣の道を歩んだ先輩であり、憧れであり、越えるべき壁。
だが今、二人の再会は戦場であり、敵としてのものだった。
七歌は静かに剣を抜き、構えをとる。
その瞳には揺るぎなき決意、そしてわずかな哀しみが宿っている。
「よう、後輩。……こんなところでまた会うとはな。」
その声音は、かつて無数の稽古で聞いた懐かしい響きだった。だが今は、どこか鋭く、冷たさを孕んでいる。
インクの背には、虹の
対する七歌は、
光と音――二つの異なる力が拮抗した瞬間、廃墟の街はざわめき、崩れたビルの壁が震えた。
次の刹那、二人の剣が交錯し、鋭い火花が闇を切り裂いた。
第二章 響き合う旋律
剣と剣が交わるたび、七色の閃光と七重の旋律が戦場を染めていく。
まるで舞台の上に二人だけが立ち、剣戟そのものが楽曲となって世界に刻まれていくかのようだった。
七歌の剣は重い。だがその一撃には無駄がなく、音楽のように流麗で美しい。
「インク……お前、強くなったな。」
その言葉には、かすかな誇りと、弟子を見守る師のような響きがあった。
インクは肩で息をしながらも、まっすぐ先輩を見据える。
「俺は……先輩を超えるためにここに立ってるんだ!」
七歌の《ナナツノウタ》が七重の音を奏でるたび、その音は見えない刃となって襲いかかる。
しかしインクの七色の力は、それを鮮やかな光の紋様に変換し、受け止めていく。
光と音がぶつかり合い、爆ぜるたび、廃墟の壁に虹色の譜面が描かれていった。
それは戦いであり、同時に二人だけの「合奏」だった。
第三章 先輩と後輩
剣戟の嵐の中、七歌はふと剣を引き、低く呟いた。
「……インク。お前に任せたいことがある。」
インクは目を見開く。
「任せたい……? 何を言ってるんですか、先輩。」
七歌の瞳はどこまでも澄み切っていた。
「この戦いの先に待っているものを、見届けろ。俺には……もう、行けない場所だからな。」
インクの胸に、鋭い痛みが走る。
「な……何言ってんだよ、先輩! そんなの……聞きたくない!」
剣戟の余韻が空気を震わせる中、二人の心だけが真っ向からぶつかっていた。
だが七歌の声には、一片の迷いもなかった。
「後輩……お前にしかできないことがある。だからこそ、俺は――ここで立ち止まる。」
その言葉の重さに、インクは息を詰まらせた。
第四章 色の決意
インクの心に、迷いと怒りと哀しみが渦巻く。
「俺は……先輩を倒すためにここにいるんじゃない。だけど、戦わなきゃいけないんだ!」
叫ぶと同時に、七色の光が一層強く輝き、虹が街を覆う。
廃墟の影にさえ色が差し込み、砕けた瓦礫が七色に照らされる。
七歌もまた、音を重ねていく。
《ナナツノウタ》の旋律は一層濃く、深く、重厚に響き渡る。
それはまるで二人が最後の稽古をしているかのように――しかし今は、稽古ではなく死闘。
七歌が叫ぶ。
「来い、後輩!」
インクが応える。
「行きます、先輩!」
七色と七音が正面からぶつかり、爆発のような閃光と轟音が廃墟の街を飲み込んだ。
第五章 迫る影
激戦の末、七歌は剣を下ろした。
その頬にはかすかな笑みが浮かんでいる。
「……やっぱり。お前は、強いな。」
インクは荒い呼吸の中で叫んだ。
「先輩、まだ終わってねぇ! 俺は――!」
だが、その瞬間。
戦場の空気が急激に凍りついた。
肌を刺すような冷気と、息を奪うほどの圧力。
黒い気配が、音もなく立ち込める。
七色の光をも侵食するような闇が渦巻き、静かに形を成していく。
影の奥から姿を現したのは――冥川。
その瞳は深淵のように黒く、声は世界の終わりを告げるように低く響いた。
「……終焉の旋律を、奏でる時が来たか。」
インクは振り向き、剣を握り直す。
背中に冷たい汗が流れるが、その目は決して逸らさなかった。
七歌は最後に後輩へと視線を送る。
その目には、全てを託す覚悟と優しさがあった。
「後は……任せたぞ。」
虹と闇が交差する瞬間、物語は新たな局面へ――。
インクVS冥川、ここに開幕。
第六章 闇を裂く虹
闇の中に立つ冥川は、深淵のような瞳でインクを見据えていた。
「……お前か。虹色を背負う者。」
インクは剣を構える。
「冥川……! 先輩の意思は、俺が継ぐ!」
冥川の魂解――《影滅ノ幽葬》が発動する。
無数の黒い鎖が地面から伸び、空を覆い尽くす。
「この闇に飲まれろ。」
インクの七色の力が爆ぜる。
「七色が導く――虹の力、七つの色!」
光と闇が正面から激突し、戦場全体が震えた。
第七章 響き合う力
冥川の鎖が無数に襲いかかる。
インクはその一撃一撃を虹色の剣で受け止め、反撃の閃光を放つ。
「くっ……強すぎる……!」
だが、その顔には諦めの色はない。
冥川は冷たく笑む。
「悪くない。だが虹の光など、闇の底ではかき消える。」
インクは叫ぶ。
「消えねぇ! 俺の光は先輩が繋いでくれた絆の証なんだ!」
七色の閃光が、冥川の闇を一瞬だけ切り裂いた。
第八章 終焉の歌
冥川が本気を出す。
空間が歪み、黒い花弁が宙を舞う。
「……これが、影滅ノ幽葬の真の姿だ。」
黒花が咲き乱れる戦場に、インクは立ちすくむ。
全ての色を飲み込むような暗黒。
「この世界は終焉へと向かう。お前も例外ではない。」
インクは膝をつきそうになりながらも立ち上がる。
「……終焉なんて、させねぇよ!」
その声に、七色の光が再び強く宿る。
第九章 先輩の声
刹那。
インクの耳に、七歌の声が響いた気がした。
『後輩……迷うな。お前の色を信じろ。』
インクは震える手を握り締め、虹の剣を掲げる。
「俺は……俺の色で、世界を守る!」
七色の輝きが巨大な光輪となり、黒い花弁を焼き払う。
冥川の瞳が初めて揺らいだ。
「……その光は……」
第十章 開戦の果て
二人の力が最高潮に達する。
虹の光輪と闇の花弁が激突し、戦場を飲み込むほどの閃光を生む。
「うおおおおおおッ!!!」
「……終焉を、拒むか!」
爆発の中心で、インクと冥川の剣がぶつかり合う。
虹と闇がせめぎ合い、周囲の大地が崩壊していく。
――勝敗はまだ見えない。
だが、確かにここに物語の核心が刻まれた。
「冥川ァァァァ!!!」
「来い、七色の使い手インク!」
インクVS冥川、激闘は続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます