頭蛮族系エージェントが逝く! 魔法の世界で人知れずターゲットを暗殺せよ!
テマキズシ
第1話 エージェント009
世界に突如ダンジョンが生まれたのは今から三十年前のことだった。
世界は魔力に満ち溢れ、パニックが発生。
再び世界が安定したのはここ最近になってようやくだった。
現在世界では二つの職業が社会現象となっている。
一つは探索者。
ダンジョンの中を探索し、多くのモンスターから現れるドロップ品やダンジョンから生まれる薬草を入手するのが仕事。
今ダンジョン業は世界的な産業へとなっており、死亡率は高いがその分人気も高い。
もう一つはヒーロー。
一昔前は幻想のモノと扱われていたが魔法が生まれた今は現実のモノとなった。
魔法を悪用し悪さを働く悪人や、ダンジョンの外にでてしまったモンスターを倒すなどを主な仕事をしている。
こちらも死亡率は高いが、憧れる子供が多く、この二つの職業は子供達の職業人気ランキングのトップ2を常に争っている。
だがこの世界にはもう一つ。ダンジョンが生まれたの同時に世界中で規模が拡大した職業があった。
それはエージェント。世界中が混乱した際に、国連主導で世界を守るために大量のエージェントを作り出したのだ。
組織の名はALL。世界の表では名を残していない秘密結社。
本作はそのエージェント達の中でも最も有名で、世界中で恐れられているエージェントの仕事を話にしたものである。
「エージェント009任務の時間だ」
頭の中で声が響く。
最新の魔導具によって作られた機械が私の頭に埋め込まれており、そこからコマンダー理沙から連絡が入る。
「今回の任務はこのアメリカマサチューセッツ州一帯を裏で支配するマフィア組織。メフィウスのボス。メフィウス・ソルジャーの暗殺だ。準備は一任する…暗殺を開始しろ」
「了解したコマンダー!」
「本任務のサポートは私。エージェント011が行います。ナビゲートはお任せください」
エージェントは人混みの中へと紛れていく。あくまで自然に、自身が暗殺者だとバレないように。
「メフィウス・ソルジャーは自身の誕生日の時、こうして世界中から有権者達を集めてパーティーをしている。有名なヒーローや探索者もな。暗殺者として当たり前の事だが正面からの戦闘は避けろよ」
「2階エリアに居たターゲットが降り始めました。現在中央エリアの階段に居ます」
「あのシャンデリア…。きれいだな〜」
「エージェント…? 何を企んでいる…?」
「あ、ターゲットがシャンデリアの下に…」
「!? やめろエージェント! 今すぐその銃を降ろせ!」
「こんなの見せられたら撃つしかねえ!」
「エージェントぉ!!!」
即座に発砲。銃声と共にシャンデリアがターゲットの頭上に落ちる。
任務完了…。これより帰還す…。
「ぐわあああああ!!」
「009の生命機能が低下」
ヒーローや探索者達に取り押さえられ、マフィアのメンバーに全身を撃たれる。
体中が穴凹になり、私は死んだ…。
「くそ! まさかシャンデリアに魅了の魔法がかけられているなんて! なんて罠だ!」
「シャンデリアからそのような魔法は検出されませんでした」
「お前が釣られただけだエージェント。これに懲りたらキチンと暗殺をするんだぞ」
これがエージェント009が世界最強たる所以。彼女が使える最強の魔法。
時間の巻き戻しである。
戻った時間は暗殺を行う瞬間。
どのような状況であっても、死ねば望んだ時間に戻ることができる。
魔法を封じる魔道具を使用しても、魔力が尽きていたとしてもこの魔法を封じることはできない。
完全無欠の魔法なのだ。
使用者がアホであることを除けば。
「うわあああああ!!! クローゼットに隠れたのに見つかったあああ!!!」
「敵に追われている状態でクローゼットに隠れた所で! クローゼットごと撃たれるのは当たり前だろうが!!」
……使用者がアホであることを除けば。
だからこそそんな009を支える二人がいる。
コマンダー理沙の使う魔法により、コマンダー理沙と011は時間の巻き戻しを認識。
その情報を下に、確実にターゲットの暗殺を行えるよう、009のサポートを行なっている。
「よし良いぞエージェント。そのままターゲットが1人になるのを待て。突貫はするなよ」
「分かってますよ。私がそんな事すると思いますか?」
「お前はそんな事をしたんだ。……ひとまず手に持っている包丁をしまえ」
ターゲットが居る2階フロアの一室にエージェントは潜んでいた。
現状ターゲットは隣の部屋で護衛たちと何かを話している様子。迂闊に動けば護衛達に殺され終わり。
「現在ターゲットは護衛6人を連れて例の取引について話しているようです」
「例の取引…? それってこの変な杖に関係してるんですかコマンダー?」
エージェントのいる部屋は大量の箱が置かれている倉庫。
数多の物資がある中で、一番異彩を放っている真っ赤な杖を手に持つ。
ほんのりと体が暖かくなった。
「ああそうだ。これは現在ターゲットが量産を計画している兵器。赤の魔法石の効果で炎の魔法が誰でも使えるようになり、杖のスイッチを押すことで斧へと姿を変える。ターゲットはコイツを紛争地域にばら撒いている」
「炎…。そして斧に…」
「エージェント。聞いているのか? 何故窓を開ける」
「わ、ほんとに出た」
「何をしているエージェントぉ!!!」
「杖の魔法により外壁が破壊。ターゲット達が部屋の前に来ています」
外から数名の足音が聞こえてくる。
私は持っていた魔法の杖を高く掲げた。
「ファイアー!!! ヒャッハー! 汚物は消毒だー!!!」
「駄目だ世紀末に脳をやられてる…」
「護衛の内3名が死亡。三十秒後新たな護衛20人が追加されます」
「カモーーーン!!!」
私は斧でターゲットの頭を消し飛ばす。
その勢いで残りの護衛も殺害。
ガラスを突き破り外へと逃げ出した。
「ヒャッハー! これが世紀末の力だぜー!」
「脱出エリアにエージェント009が到達。これよりナビゲーションを終了します」
「隠蔽……どうしよ」
「まさかメフィウス・ソルジャーが敗れるとは…」
「コマンダー理沙子飼いのエージェント。相変わらず恐ろしい腕だ。冷徹で的確に対象を殺す、凄腕に違いない」
「表ではマフィア内での派閥争いとして処理されている! 周辺は完全に燃やされていてデータを取ることもままならない!」
「ランスロット! 貴様はALLの人間だろう! エージェントに関する情報は得られなかったのか!」
「理沙の隠蔽能力は本物だ! 何人もスパイを送り込んだが皆殺された! お前達も分かってるだろう! エージェントも恐ろしいが理沙の能力もまた、恐ろしい事を!」
「………ここでそれ以上ランスロットを責め立てるな。理沙の子飼いに殺られたのは皆同じ。あの怪物を、世界最高のエージェントを必ず我々は始末しなければならない。ベディヴィエール。例の計画はどうなっている」
「完璧です。世界中に声を掛け、最高の部隊を集めています」
「流石だ。ベディヴィエールに理沙の子飼いは任せ、我々は計画を進めるぞ。全ては我らが王の為に」
「「「全ては我らが王のために」」」
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