井の中の蛙、大海を目指す
もふもふ
第1話
まとめ
「井の中の蛙、大海を目指す」
気付いたときには彼はここにいた
冷たい井戸の中で気ままに泳いで、寝て、過ごしていた
ここが世界の全てだと、思っていた
ある日、数年に一度の大雨で井戸の水は溢れ、彼は外の世界を知る
「ケロケロ?ここはなんだケロ?」
見たことも無い世界に飛び出して行くカエルくん
目に映るもの全てが初めての、鮮やかな眩しい世界
頭がくらくらしそうだ
そこに声が響きます
「おい!お前何してんだチュン!」
1羽のスズメさんがカエルくんに話しかけます
「何って、わかんないケロ」
「お前、どこのカエルだチュン?」
「多分、あそこだケロ」
井戸を指差すカエルくん
「なーんだ、井の中の蛙かチュン」
「何のことだケロ?」
「要するに、お前は何も知らないってことチュン。海、って知ってるチュンか?すっごくおっきくて、動く水たまりがあるチュン」
「聞いたこと無いケロ、そんなものあるわけ無いケロ」
「じゃあ見せてやるから付いてこいチュン」
そうしてカエルくんとスズメさんの大冒険が始まりました
「井の中の蛙、大海を知る」
続き
カエルくんとスズメさんは長い冒険の末に、ついに海に辿り着きました
「あー!!思ったより疲れたチュン!軽はずみに海を見せるなんて言わなきゃ良かったチュン!」
でも、スズメさんのボヤキはカエルくんの耳には届きません
きらきらと目を輝かせながら海を、じぃっと見つめています
波の動きにびっくりしながら、真っ白い砂浜をぴょんぴょんと跳ねて波打ち際に近付き、恐る恐る海水に指を触れました
次の瞬間カエルくんの絶叫が響きます
「痛いケロ、痛いケローーーー!!」
ほとんどのカエルは淡水でしか生きられません
海水の塩分のせいです
「何で、何でケロ!!こんなに大きい水たまりなのに!泳ぎたいケロ!!」
大粒の涙を流すカエルくん
なだめるスズメさんの声は届きません
「絶対に泳いでやるケロ!!」
その日からカエルくんの訓練が始まりました
早朝の10キロランニングから始まり腕立て伏せ、腹筋、スクワット、それぞれ96回を3セット
食事内容はタンパク質を多めにして、脂っこいものは控えるように
更に1日の食事の回数を増やし、代わりに一度の量は減らしました
筋肉になるべく栄養を与えるためです
SASUKEにも出場するようになり、最初こそは開始5秒で失格になるお笑い担当でしたが、回数を重ねる内に、最近ではエントリーナンバー90番台のガチ勢の仲間入りを果たしています
ファイナルステージにも一度だけ挑戦しました
そんな日々が続いて、いつしかそこには身長2メートルはあろうかというマッチョがいました
腕パンパン!
脚パンパン!
腹筋バッキバキ!
まるで筋肉のシルバニアファミリーです
タンクトップの下から筋肉が激しく自己主張をしています
もはやそこには、かつてのカエルくんの面影はありません
全身が緑色なことに目を瞑れば
自信に満ちあふれた表情で海を見つめ、波に触れ、痛みに絶叫する全身緑のマッチョ
スズメさんは静かな声でマッチョに言います
「なぁ、海ってのはここだけじゃないんだチュン」
「何がだケロ!?海なんてもう嫌いだケロ!」
涙目のシルバニア筋肉が叫びます
「海は海でも、世界だチュン! お前ならやれるチュン!オリンピックと言う名の、大海原に飛び込むチュン!」
「スズメさん……わかったケロ!!」
彼らが金メダルを勝ち取れたのか、それはわからない
しかし、人は変われる
カエルでもマッチョになれる
彼らに明るい未来が待っていることを、私は信じたい
井の中の蛙、大海を目指す もふもふ @mohumohuuuu
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