オブジェ

「オブジェ」

この街に引っ越して一月程が経つ

街の空気にも慣れてきたが、気になる事が一つある

アパートの目の前の公園の中央に、2メートル程の真っ赤な球体が鎮座しているんだ

越してきた初日に、隣人に挨拶がてら訪ねてみたが

「私も最初は不気味でした」

「すぐに慣れますよ」

だとさ

あいにくまだ慣れてはいない

近所の居酒屋でも開拓しようと思い、数件回っていたらどうも飲みすぎた

千鳥足になっているのが自分でもわかる

帰る途中にあの球体が気になり、酔った頭でぼんやりと見つめ、軽くケリを入れた

赤い球体の色が変わった気がした

飲みすぎてるな

目を凝らし見つめると

確かに変わっている

表面に浮かんだ無数の点が点滅している

まるでイカか何かのように

ぞわ、と肌が粟立った

球体が裂け、触手のようなものが飛び出してきて私の顔に

目が覚めた

寝汗がひどい

昨夜は飲みに行った、と思う

途中から記憶が無い

頭が痛い

水を飲もうとしたら呼び鈴が鳴る

「こんにちわ！隣に越してきた者です！これ、つまらないものですが……よろしくお願いします」

「ああ、そう……こちらこそ、わざわざどうも」

「あの、ところでここ、気になることがあるんですけど、あの丸いやつって、何なんですか？何か不気味で……」

「私も最初は不気味でした」

「すぐに慣れますよ」