魔王に遊戯(ゲーム)は向いてない!

睦キジ郎

プロローグ

01「ある魔王の視点」


この世界を創造した女神は人間を愛した。


女神は人間に祝福を与えた。

その祝福の名は”スキル”というらしい。


魔族には”スキル”はおろか、祝福も、愛情すらも与えられなかった。


だが、我々にはこの大地がある。

そんなに広くない地だが自然豊かで、ひっそりと生きていくには充分だ。

この居場所さえあれば、他には何も望まない。

先代は人間に奪われないように魔術による結界を施した。


しかし、その結界が力を失ってしまった。

理由は簡単だ。

ガラスのように砕け散ってしまったのだ。

人間の手によって。


人間の力がそれほどまでに大きくなってしまったのだろう。

もう私には再び結界を施す力は残っていなかった。



震える掌をグッと握る。



早く。

早く、なんとかしないと……!!

誰かに私の地位と力を継承しなければならない!


私は小さな島……”魔界”と呼ばれる地の王となる者たちを集めた。

急いで七人の”魔王候補”の中から一人を選ばなければならない。



握った拳の感覚は無くなり、一滴の雫が魔法陣の上に落ちた。

その瞬間魔法陣がまばゆい光を放つ。




すべては

我々の愛するモノタチを護るために―……。



古い遺跡のような城。

日光があまり届かない広い間で。

男の低い声だけが響いていた。



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