靴箱の上の水槽
本田余暇
靴箱の上の水槽
小学生のころ、友達の家に遊びに行ったときの思い出で、よく覚えているできごとがある。 立川くんは遊戯王カードをたくさん持っていて、カードのコレクションをよく自慢していた。その日は、たくさんあるカードの中からいらないカードを整理したからあげるというので、クラスの男子8人でその子の家に押しかけて行った。家が遠いこともあって、立川くんとは普段はあまり遊ばなかったが、カードがもらえるならもちろん行く。僕だけじゃなく、あの頃はみんな、小学生らしい無遠慮さを持っていた。
立川くんの家はよくある住宅地の中の戸建て住宅で、自分の家と同じくらいの大きさだった。小学生のお小遣いでは、遊戯王カードは少ししか買えなかったので、立川くんちはてっきりお金持ちだと思っていたけど違ったようだ。聞いたところによると、親戚のお兄さんが引退したときに大量に譲ってもらったらしい。僕にはそんな人脈はなく、両親も紙切れにお金を費やすことに難色を示していたのでその子のことがとても羨ましかったし、カードを手放してもよいと思える心理も理解できなかった。僕が当時持っていたカードの20倍くらいの量が山盛りになった段ボールが二つ並んでいて、好きなだけ持って行っていいよと言われた。僕は自分のデッキに合うカードや強いカードを見つけては愛用していたアディダスのショルダーバッグに入れていった。足元に落ちていたタオルケットがカードを選ぶのに邪魔だったので、除けようと持ち上げたら、ぐにゃりと温かかった。予想していたのとは全く異なる、初めて触る感触に思わず手を離すと、それは振り返りもせず隣の部屋に駆けていって、猫だったことに気づいた。立川くんはその一部始終を見ていて、にこにこしながら「お前持ち方やばいな」と言ってきた。他の友達はカードを探すのに夢中で気付いてなかったと思う。
それ以来、犬や猫を触ったことはない。
大学を卒業し東京の会社に就職をして、江戸川区にアパートを借りて住み始めた。築25年で8畳の1Kだけど、駅から近くて悪くないと思っている。もっとも、地元と比べると、東京には駅から遠い場所なんてないけれど。
家に入ると右側に大きめの靴箱があって、その上にちょっとしたスペースようになっている。引っ越しから半年が経って生活も落ち着いてきたので、水槽でも置いておしゃれな空間にしようと思った。土曜日の朝に早起きをして、東京メトロを乗り継いで築地に行き、生きているモクズガニを一匹買ってきた。モズク蟹を選んだのは、スマホで調べた感じかなり飼いやすそうだったから、というそれだけの理由だ。体長は10cmに満たないくらいで、余裕でリュックサックに入る。家に帰って洗面器に水を入れ、包んでいた紙から蟹を移した。つめや脚はあまり動かないものの、口はちゃんと動いていて呼吸しているのがわかる。ただ、さすがに洗面器では狭そうだったので、その日の午後にはまた電車に乗ってホームセンターに行き、水槽とザリガニ用の餌を買った。45cm水槽の実物は想像していたよりも大きく、帰りはタクシーを呼んだ。水槽を靴箱の上に乗せると左側が少しはみ出たけど、縦と奥行には余裕があって悪くはない。青色のホースで水道水を溜めてカルキ抜きを入れ、洗面器から水槽に蟹を移す。殺風景な水槽の中で、おずおずと蟹が動いている。
次の週には、ネット通販で注文しておいたろ過機が届いた。緑色をした、かなり大きく無骨な装置だ。取り付けは簡単で、どちらかといえば、一週間経った水を新しい水に入れ替える作業のほうが面倒だった。サイフォンの原理で水を流しに捨てようとして、ホースに口をつけて水を吸いだしたら、勢い余って水槽の水を少し飲んでしまった。一週間経った水の味は、薄めのドブみたいな味だった。せっかくろ過機を買ったのだから、ろ過機のポンプで吸いだせばよかった。
取り付けも終わって、スマートフォンでアクアリウムと入力し、色々なブログや動画を調べる。みんな趣向を凝らした綺麗なアクアリウムを作っていて、自分の水槽の素っ気なさが恥ずかしく思えてきて、例の水槽を購入したホームセンターにで水草と底石を買ってきた。本当はジャングルみたいに植物が生い茂った水槽にしたかったけど、買ってきた10本セットの水草を全部植えても、奥の壁が全然見通せるくらいまばらだ。それでも、先ほどよりは景観がずいぶんましになって、とりあえずは満足した。蟹も先週にうちに来た時よりもずいぶんと元気になって水槽内を歩き回っている。
あくる日に、大学生のころから付き合っている真紀ちゃんがアパートにやってきた。真紀ちゃんは千葉の会社に就職して、千葉市内にある女子寮に住んでいる。「ただいまー」と言いながらうちに入ってきてすぐ、靴箱の上の水槽に気が付いた。
「へ~! 水槽置いたんだね! サイズぴったりじゃん! 何か飼ってるの?」
「ほら、あれ」僕は蟹を指さす。
「かわいい~」
しばらく顔を寄せ合って見ていたが、その時に限ってあまり動かなかった。
「名前はなんて言うの?」
「…考えてなかったな」
名前か。犬や猫であれば呼びかけもするだろうが、蟹に名前が必要だとは思っていなかった。
「真紀ちゃん付けてくれない?」
「え~、いいの?」
真紀ちゃんには何かしら思案しているとき、少しくちびるを尖らせるくせがある。
「う~ん、楽ちゃんなんてどう? かに道楽から、楽ちゃん」
もちろん異論はなかったので、楽ちゃんに決まった。オスかメスかは知らない。 帰るときに真紀ちゃんは「楽ちゃんまたね~ バイバイ!」と言って水槽にむかって手を振った。真紀ちゃんを見送った後、水槽に餌を撒くと、蟹はのそのそと動き出した。真紀ちゃんと水槽を眺めているときに餌をやれば、幾分か楽しかったかもしれないと思った。
夏になった。モクズガニの飼育は10℃から30℃くらいが適正なので、アクアショップで水温計を買ってきた。ホームセンターは卒業して、グッズを買うときは専門のアクアショップに行くようになったのだ。昼間に見ると30℃を少し超える程度の水温だった。これなら出勤しても、帰ってきたときには茹で上がっているなんてことはなさそうだ。水槽用のクーラーはかなり高額で、電気代もかなりの額になりそうなので、玄関の日当たりが悪くて助かった。ただ、一カ月前と比べると餌への食いつきが悪くなっているような気がする。週に3、4回はリモートワークなので、その日は玄関側とリビングを隔てるドアを開けることにした。クーラーの冷気がが水槽の方まで届くようになって、水温は28℃前後になる。
仕事の方は、新人研修は5月までに終わって、開発チームに配属された。リモートワークでは基本的にずっとカメラはオフになっているので、Tシャツに短パン姿で仕事をする。6月頃はパンツ一丁で椅子に座っていたけれど、太ももにあせもができてしまったので綿のズボンを履くようになった。ソースコードを書いてはたまにコードレビューの依頼のチャットを送る作業の繰り返しだ。半日に一回くらいはweb会議に参加する。昼休みになると、パソコンをスリープに切り替えてごはんを用意する。
ごはんは今朝炊いていたけどおかずがなかったので、今日は味噌汁を作ろうと思う。濃い目に作れば十分白米のお供になるし、何より短時間で作って食べれる。冷蔵庫を開くと茄子と刻み小葱があったので両方取り出す。鍋に水を入れて火にかけ、茄子をいちょう切りにして油で炒める。それだけでは味気ないので、もうワンアクセント欲しくなって、水槽に手を突っ込んで蟹をお尻から掴み、前後に折り曲げて取れた脚にハサミで切り込みを入れて煮立っている味噌汁に放り込んだ。茹だった脚から身を取り出してご飯の上に乗せ、味噌汁をぶっかけてスプーンですくって食べる。味噌汁には多少は蟹の出汁が出ていて、入れないよりは美味しくなっていると思う。水槽の中の蟹の脚が、10本から9本になった。
夢を見た。多分、僕は京急電鉄の電車のロングシートに座っているが、なぜか長めの槍を持っている。満員というほどではないが立っている人もそこそこいて、どうにも槍が邪魔だ。周りの乗客も迷惑そうな顔をしている。乗客の中には地元の友達もいる。恥ずかしくてなんとかしようと触っているうちに、槍の石突のところのボタンを押せば槍は鞄に入るくらいに小さくなることを思い出す。ボタンを押したら、槍が縮みながら回転するような変な動きをして自分の右手の人差し指を切ってしまったところで目を覚ました。 切られたところの指がなんだか痛いような気がしたが、気のせいだった。トイレに行ってまだ4時半なので布団に戻る。枕元に置いてあるスマホに手を伸ばして、ブラウザを起動して『蟹 痛覚』で検索をすると、甲殻類には痛覚があるらしいという欧米のどこかの研究を紹介する記事がヒットした。痛みを与えると神経系の活動が活発化し、爪や足を自切することもあるらしい。このままスマホを見続けて完全に覚醒してしまうと今日の仕事中に眠たくなってしまうことは間違いないので、電源ボタンを押してもうひと眠りする。
アパートの徒歩圏内に大きめのイオンモールがあって、映画館が入っている。映画館以外は本屋とカルディが入っていて、他は興味がない。その日は真紀ちゃんと映画に行き、それから最初と最後だけ面白かった映画の感想とかすべてを呪いたくなるくらい暑すぎることとかを喋りながらうちまで歩いた。ドアを開けて二人で「ただいまー」と言う。
「楽ちゃーん、元気してた~?」
靴箱に手をかけた。あぁ、水槽には脚が取れた蟹がいたんだった。今日も元気に左右に動いている。
「あれ、どうしちゃったの? 脚、ないじゃん。かわいそう…」
真紀ちゃんはかわいらしく両手で口を覆う。
「あ~、脚のことね… 先週くらいだったかな、いつの間にか自切しちゃってて」
できるだけ神妙な顔を作るよう努力する。できてるかな?
「かわいそう… どうしてだろ… なんか、かわいがりすぎちゃったりしてない?」
「う~ん、そうかもしれない。自切しちゃった日はかなり暑かったから、そのせいかもと思っていたけど」
真紀ちゃんは真剣な表情でスマホを操作している。僕はその様子をじっと見つめている。
「今調べてたんだけど、楽ちゃんが脚を切っちゃった理由、タンパク質不足らしいよ。自分の脚を切って食べるんだって」
「あ~、それだわ! ずっとザリガニ用の餌しかあげてなかったから、足りなかったのかも」
「ザリガニ用の餌?」真紀ちゃんは怪訝な表情をする。
「いや、ザリガニ用の餌がいいって、ネットに書いてあったんだけどね」
「え~、実際自切しちゃったんでしょ? あ、そうだ、今からスーパーに行って健康によさそうな食べ物買ってこようよ」
手をつないで近所のライフに行き、今日の晩御飯のための食材と、蟹でも食べれそうなタンパク源を見繕ってカゴに入れる。真紀ちゃんが鮮魚コーナーに置いてあるむきエビを手に取ったとき、「蟹を生かすためにエビを食わせるのか」と思ったけど、口には出さなかった。真紀ちゃんがエビより蟹派だとかそういうことではないのだろう。そういうことではないとしたら、余計な事は言わないほうがいい。もちろん、僕が蟹の脚を食べたことも。
帰って水槽にそれらを入れると、蟹はハサミを使ってそれらを食べた。真紀ちゃんが嬉しそうにしていたので、僕も嬉しい。
冬が来た。学生のころと比べると時間の進み方が異様に早く、気を抜くといつの間にかコピー&ペーストみたいな日々を過ごしてしまう。真紀ちゃんがいなかったら、きっと僕はほとんどこの部屋から出ていなかっただろう。クリスマスイブの夜にお高めなイタリアンのレストランを予約して、でも普段通りの他愛もない話をしているときに、ふとそう思って感謝を伝えた。真紀ちゃんは一瞬驚いた表情を見せたけどすぐに目を細めて「私もだよ」と言った。いつも以上に気合を入れておめかししたのであろう真紀ちゃんが可愛すぎて思わずプロポーズしそうになって慌てて口を閉じる。まだ結婚を考えられるほどお金が貯まってないし、その前にある程度同棲する期間も挟んだほうがいいと聞く。多分、本当にプロポーズをできるのは2、3年後のことになるだろう。でも、これから年を取って僕たちがおじいちゃんとおばあちゃんになっても、必ず真紀ちゃんと一緒にいるだろうという信頼と確信がある。
明日も仕事なので別れを惜しんで家に帰ると、蟹が死んでいた。水槽の中で仰向けに倒れている。11月に取り付けたヒーターが点灯してなかったので、なんでだろうと思って周りを見るとコンセントが抜けていた。昨日水槽を掃除したときに抜いてそのままにしてしまったらしい。僕は腕まくりをして水槽に手を突っ込んでピクリとも動かない蟹を取り出す。水はとても冷たい。
鍋に水道水を入れている間、死因について考える。水温計が示す温度は5℃で、適正な水温である10℃からそんなに外れているわけではない。モクズガニは北海道にも生息しているので、そのくらいの水温にはなることもあるだろう。築地で買ってきた蟹なので、寿命が来たのかもしれない。あるいは、水温と寿命と脚の怪我が重なってのことだったのかも。考えを巡らせているうちにお湯が沸いたので、蟹を中に入れた。十分に茹だってから火を止めて、味噌と刻みネギを入れる。ただ、今日は美味しいイタリアンを食べてお腹が膨れているので、ハサミを一本だけ食べて残りは明日の夜に食べることにする。出社したときは、帰宅途中に瑞江駅前の松屋に寄って牛丼の並を食べるのがルーティーンとなっているので、うっかり寄ってしまわないように注意しないといけない。
次の日、無事に帰宅して蟹を食べ終えて、殻だけが残った。お墓を作ろうと思い立ち、ハサミを片方だけ水と洗剤でよく洗った。残りはコンビニのビニール袋に詰めて、玄関の脇に置いてあるゴミ袋に入れた。さて、お墓はどうやって作ろうか。今日は金曜日で夜更かしできるし、ただ石を積み上げるだけではつまらない。僕はクローゼットの奥にある段ボールからカッターナイフとデザインナイフを取り出した。大学時代に暇すぎて消しゴムはんこを作っていたときのものだ。キッチンの引き出しから割りばしを持ってきて、まずはカッターでおおまかかつ慎重に薄く削る。木くずが床に落ちないよう、ゴミ箱を足で挟んで固定しながら作業を進める。ある程度薄くなったら紙やすりで表面を整え、インターネットで拾った画像を参考に側面にギザギザの模様を付ける。それから、小学生のときに通っていたころから使っている習字セットを引っ張り出してきて、達筆風に南無妙法蓮華経を書いた。仕上げに、表面にニスを塗って乾かす。いままでの趣味で購入してきたグッズが役に立つのは、これまでの経験が生きていて、人生が肯定されているみたいで気分がいい。気づけば鼻歌を歌っていた。
真夜中になってようやく完成した卒塔婆とハサミの殻を持って、近所の公園に向かう。適当な植え込みに殻を埋めて、卒塔婆を挿す。子供に見つかって引っこ抜かれるかもしれないけど、そうなったらそうなったでまあいいかと思った。家に帰って軽くシャワーを浴びてすぐに布団に入る。もうすぐ正月休みで、帰省しているときに蟹の餌をどうしようか少しなやんでいたけど、その必要はなくなった。自動餌やり機を買おうか迷って高かったので躊躇していたけど、買わなくて良かった。
空になった水槽が靴箱の上を占拠していて、今更ながら寂しさを感じる。代わりの魚を何か買ってこようか。正月明けの話にはなるけど、今度はちゃんとアクアショップで買ってこようと思う。寿命が近いものは売っていないだろうし、多分、僕が飼うなら美味しくない方が向いている。
真紀ちゃんがうちにやってきて、水槽で泳いでいる金魚を見て首をかしげる。
「金魚? が、いるじゃん。楽ちゃんが見当たらないけど、どこかに隠れちゃってるのかな」
まあ、蟹がいないことには気づくだろうとは思っていた。
「12月の27日だったかな、水槽の中で冷たくなってて…」
僕たちがイタリアンを食べてる間に死んでいたなんて真紀ちゃんが知ったらショックかもしれないから、命日はずらした。このくらいは想定質問である。
「え、死んじゃったの?」
「うん…」
神妙な顔をする。この半年で、だいぶ上達した気がする。
「なんで教えてくれなかったの? って言っても、仕方ないよね… ねえ、死んじゃった理由って分かる?」
「多分寿命だったんじゃないかなって思ってる。もともとペット用に売っていた子ってわけじゃないし、平均寿命は三年らしいから買ってきた時点で結構な年齢でもおかしくはないから。僕がそう思いたいだけかもしれないけどね」
「エサもちゃんとやってたんだよね?」
ここで言う”ちゃんと”とは、ザリガニのエサ以外のことを指すのだろう。
「うん、虫とかもあげてたよ」
「寿命、かあ」そう言って真紀ちゃんはうっすらと浮かべていた涙を袖で拭う。
「ちょっと、モカちゃんを思い出しちゃって…」
モカちゃんとは、真紀ちゃんが小学生だった頃に飼っていた犬の名前だ。茶色の犬だったに違いない。
「そうだ、楽ちゃんのために、近くにお墓を作ったんだ。といっても、立派なものじゃなくて卒塔婆を作っただけなんだけど」
「そとば? なんだっけ」
「え~と、お墓の横とかに刺さってる、戒名とかが書かれた木の板みたいなやつ。まだ残ってると思うけど」
「そっか。楽ちゃんも喜んでるよ」
真紀ちゃんは玄関の小上がりに座って靴を脱ぎ始める。てっきりお墓を見に行く流れになるかと思っていたが、どうやらそのつもりはないらしい。結構手間をかけて作ったので見てもらいたいという気持ちはあるものの、急に自分の作ったものがつまらない矮小なものだったかのように思えてきて、それ以上は言えなかった。
真紀ちゃんの涙はもうとっくに乾いている。
「そうだ、名前はなんて言うの?」
「考えてなかったよ。また付けてもらおうと思って」
「じゃあさ、一匹ずつ付けてあげようよ。私、この紅白の子を考えるね」
二人で金魚を見つめながらちょっと考えて、
「じゃあ、僕の方は金さんにしようかな」と言うと、真紀ちゃんふふっと笑った。
「そうしたら、私の子は銀さんにしないといけなくなっちゃうじゃん」
「真紀ちゃんは真紀ちゃんで自由に決めてよ」
「じゃあ、そうだね…」真紀ちゃんはうーんとうなりながらしばらく考え込む。
「神楽ちゃんとか? 銀さんと関係があるし」
「いいね。 あ、楽ちゃんの名前も入ってるし、ってこと?」
「そう! 良く気づいてくれたね。楽ちゃんが神様になって、私たちを見守ってくれてたらいいなって」
真紀ちゃんは満足げな表情をしている。金魚はひらひらと泳いだり止まったりを繰り返していて、真紀ちゃんが餌を入れるとふよふよと水面に口を突き出して食事をする。蟹がいたときからある海藻は、ポンプの作り出す水流に乗って揺らめいている。こんな日々が、いつまでも続けばいいと思う。
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