第3話 不毛の荒野
まばゆさの中で、すべてが消えた。
――風がなかった。音も、匂いもなかった。
目を開けた視界にあったのは、テレビに映っていたままの、灰色の空と果てしない荒野だった。
「あれ……?」
彼女は身を起こす。
足元には乾いたひび割れた地面、辺りには草も石もない。
ただ、どこまでも地平線が続いていた。
空は暗く、まるで世界が終わったあとの景色のようだった。
「夢……? ここ、どこ……?」
冷たい感触はない。
むしろ、身体に実感がない――そのことに気づいた瞬間、彼女は自分の手を見た。
指先が、ほんのわずかに透けている。
光が皮膚の奥を抜けていくようだった。
「……え? なにこれ……死んじゃったの?」
不安が胸を締めつける。
叫びたくても声が震えた。
「誰か! 誰かいないの!?」
何度も何度も呼んだが、答える者はない。
ただ、沈黙だけが返ってくる。
そのとき――遥か遠くの空に、一本の光の柱が降り注いでいるのが見えた。
その光の下に、小さな人影があった。
ひとりの男が、跪いていた。
無意識に足を踏み出した。
あの光だけが、今の彼女にとって「生きた世界」と呼べるものだった。
足音も、影もない。
ただ、近づけば近づくほど、男の姿がはっきりしていった。
灰色の軍服――しかし、焦げ跡がところどころ黒く焼けていた。
顔には深い皺。
目はぎらついており、どこかで見たことがある。
アーシャははっとした。
「……あの顔……テレビで、大統領が……」
すると、空の光の中から、音もなく声が響いた。
「汝の功罪を改めて問う。功が多ければ、地獄の責め苦より解放しよう。罪多ければ、無限地獄にて永遠に罪に服す。まずは、汝自身の言葉を聞こう。」
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