第14話 ヒトの心、わたしの心 ③
[お前のせいだ!]
ごめんなさい!
[アンタのせいよ!]
ごめんなさいっ!!
[[お、ま、え、の、せ、い、だ!]]
ごめんなさいっっ!!!
わたしは、居住区を逃げる様に飛び出し、部屋に向かって走っている。
ごめんなさいっっっ!!!!
わたしのせいで!
わたしが居たせいで!!
それしか、考えられない…
ドンッ!!
ヒトにぶつかった気がする。
「痛えな!何処見て…おい!」
麗玲さん、だったかも…
立ち止まって謝ることは、今のわたしにはできなかった…
ただ、ただ、走って逃げるだけ…
「チッ!どうなってやがる。晴れ姿を冷やかしてやろうと思ったんだが…」
そんな、麗玲さんの呟きなんか、ぶつかったことすら気付いていない今のわたしに、気付くはずもありませんでした。
プシュー
わたしの部屋、艦長室のドアが開く。
そのまま、わたしはベッドへ。。。
う
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!
涙が止まらない。
大きな声をあげて泣く。
今まで、耐えてきたものが崩壊したかの様に、涙と泣き声がとめどなく溢れ出てくる。
ごめんなさいっ!
ごめんなさいっ!!
ごめんなさいっ!!!
わたしのせいなんだっ!
みんな、わたしのせいだと、わかってるんだ!
わたしが、みんなをまきこんだんだっ!
わたしがいたから
わたしがシャトルにのっていたから
わたしが『リア・ファル』なんてものをもっていたから
わたしがっ
わたしがっっ
止まらない自己嫌悪。
気がついたらわたしは宝物ペンダントを外して握りしめていた。
「こんな物をもっていたからっ!」
わたしはペンダントをダストボックス目掛けて投げようとしてしまっていた。
思い出される。お父さん、お母さんの顔。
このペンダントをプレゼントしてもらった日の事。
そう…
あれは…
。。。
わたしの15歳の誕生日の日。
両親はわたしを『銀座』に連れて行ってくれた。
アーク・ジャパンとなった今の東京。
その時代の繁栄にあやかって『銀座』という繁華街を整備。地球、宇宙、あらゆる国からあらゆる高級ブランドが軒を連ね、今では『地球圏で一番高級で華やかな街』と称されている。
その日のわたしは、映像でしか見たことがない華やかな銀座に心を踊らせていた。
お父さんが懇意にしている宝石店に連れてきてくれた。
お父さんが仕事でもプライベートでも地球圏で一番信用におけるバイヤーの方のいるお店みたい。
「これはこれは、ノイマン博士。お待ちしておりました」
バイヤーの方やスタッフの方々も丁寧に出迎えてくれる。
こんな高級なお店に入ったことのないわたしはおのぼりさんの様に口を開けてキラキラとしたジュエリーにキョロキョロするだけ。
「以前からお伝えしていた通り、今日は娘の15歳の誕生日でね。何か特別な物でも、と思ってね」
お父さんがバイヤーさんと話している。
「承知しております。博士に是非見ていただきたい品がございます。ささ、お嬢様も奥様も奥へどうぞ」
こうして案内されたのが、俗に言うVIPルーム。
わたしはただただ、あんぐりと口を開けてるだけ。
「これでございます」
バイヤーさんがお盆?みたいなのに何かを乗せてくる。
ほんの直径2cmくらいのサイズの宝石。
不思議なカタチに整形されていて青い輝きを称えている。
白手袋をはめるわたし達。
「ささ、お嬢様。お手に持ってどうぞ色々な角度で光に当ててみてください」
わたしは両親に挟まれた状態でドキドキしながら宝石を光に当ててみる。
うわぁぁぁ…
きれい………
その宝石は角度、光の当て方によって輝く色を変える不思議な宝石でした。
「アレキサンドライトの仲間の様ですが、他のことは何も。ですが、希少な品物である事は事実。プラチナミレニアム世代のお嬢様に相応しいかと思いまして」
バイヤーさんが説明をしてくれる。
すっかり、その美しい輝きに魅入られていたわたし。
「お父さん!コレが良いっ!コレが欲しいっ!!」
お父さんは優しい眼差しで頷いて
「だそうだ。それを貰おうか?アクセサリー加工は?」
「勿論、直ぐにさせていただきます。お嬢様。どの様なアクセサリーに加工いたしますか?」
「ペンダント!ペンダントがいいっ!」
「畏まりました。直ぐに、当店一番の職人により、最高の一品に仕上げて参ります」
わたしはワクワクして目をキラキラさせていたわ。
「良かったわね、エリィ。ところで、あなた」
それを見ていたお母さんが咳払い1つ。
「エリィにだけですか?わたしも誕生日が近いのですが?」
お父さんは肩をすくめて。
「勿論だよ。キミにとっても特別な誕生日の日だ。好きなものを選んでスタッフにお声がけしなさい。私は少しだけ仕事関係の話をしてくるよ」
そう。
わたしは15歳!お母さんは40歳!
二人とも記念の誕生日なのっ!
数時間後…
「うわぁ…キレイ…お父さんっ!ありがとうっ!これ、わたしの宝物にするっ!肌見放さないでずっとつけてるね!お風呂のとき意外っ!」
わたしはお店を出たところでくるりと回ってニッコリと笑う。
その後は、とても良いお店でお食事を頂いて。とても楽しい、思い出の1日でした。
。。。
そう、これがわたしが『リア・ファル』を手に入れた日の事。
石を握りしめながらわたしの目にはその日の幸せそうな両親の顔が浮かぶ。
この、『リア・ファル』には両親の愛と願いが込められている。
家族の色褪せない思い出が刻まれている。
この石を通して、お父さんとお母さんが見守っていてくれている。
そんな、そんな宝物をわたしは…
石を握る手を胸元に押し当て
「お父さん…お母さん…会いたいよぉ…」
会いたいよぉぉぉッ…
只々、泣くだけでした。
辛いこと出来事も嬉しい思い出もひと混ぜに、只々、涙を流し、声を上げて泣きました。
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