近しい関係と遠い記憶(仮

三毛猫

第1話

 ツバメが低く飛んでいる。

 アルプスの麓、ロッジ風の建物にパン屋がある。少し早めに着いた私は時間潰しに、パンとコーヒーにする。夏の湿った空気と私の気分が重なる。車は砂利道に入って停まった。パン屋へと足を進める。クロワッサンを取るとそのままレジへ行き、コーヒーを注文した。

「イートインで」

 私は低い声で言うと店員は目も合わせずにはいとだけ言う。

 乾いた小麦粉の匂いが店内を包んでいる。休み前に吸った煙草が舌にこびりついたまま、ヒリヒリとした感覚を残している。

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