ここはどこ?

「ここは緋那ひなの屋敷」


心の奥の方からぼんやりと声が聞こえた気がした。


緋那の屋敷?


「そう、私が住んでいた屋敷よ」


それより、貴方は誰?どこにいるの?


「貴方と同じ体の中よ。気づかない?」

えっ…?


「貴方が突然私の体の中に来たの」

冷静になりかけていた頭が再び混乱してきた。


緋那の体の中に私が入ったってこと?


「そう!何故だかわからないけど、いきなり入ってきたの!」


言葉にしなくても考えただけで緋那に通じてることに気づいた。


「やっと分かった?言葉にしなくても聞こえてるの。同じ体の中だから通じてるってこと」


それは分かってきたけれど、ここはどこ?


「ここは江戸」


江戸って…。タイムスリップした?


「タイムス…リ…ップ…?って何?」

私が住んでいた時期は江戸時代じゃないの。もっと後の時代なの。


「違う時代から飛んで来たってこと?」


そうみたい。


「どうして?」


そんなこと言われても私も分からないもん!

目が覚めたら部屋も違ってて、見えるもの全て真っ赤だし、人は倒れてるし一体何が起こったのかも分からない!こんな場所に来たくなかったもん!


「あ……。そうか、そうだね。知らない時代にいきなり来たんだもの驚くね。わけ分からないのに、あれこれ言われたら困るね。ごめんなさい」


緋那は楓乃のパニック状態を冷静に受け止めてくれていた。



一息ついた緋那が自分の周りを端から端まで1つ1つ確認する様に見ている。

「やっぱり……」緋那はそう言って自分の周りの惨劇を冷静に見つめていた。


「えっ?あれは さち?な、、なんで?何でさちが?」


横で倒れている女の子を見つけた緋那は急に焦り始めた。女の子の手を取って生死を確認しているかのようだった。


緋那どうしたの?楓乃の声は聞こえていなかった。



緋那はさちを抱きかかえて顔を覗き込む。


「さち!さち…!もしかして…私の代わりに?いやーーっ!」


緋那は完全にパニックになってるいる。状況が分かってなかったの?


「私も放心状態で今やっと正気に戻ったところ……。そしたら、さちが……」

緋那はそう言いながら泣き出した。


何が何だか分からないので、緋那を見守るしかなかった。


急に襖が開き楓乃の父と同年代位の男性が数名の男達に連れられて入ってきた。


「こ、これは一体…何が起きたのだ?!」


「この家は反逆の罪によりお取り潰しとなった。家の者は全て処刑するよう命じられたまでだ」


「ここで処刑を?」


「そうだ!上からの命で直ぐに始末を!とのお達しだったのでな。それでお主の娘は無関係だからと命は助けた。娘に間違いないな?」



聞かれた男は私の方をじっと見ている。緋那は何か言いたそうにしている。


「はい、私の娘さちに間違いありません」

男はそう言い放った。


緋那はビクッとして「えっ…」とつぶやいた。



男は近寄り声をかける。


「さち、立てるか?さあ帰ろう」


「帰るのは止めはしないが、このことは他言無用だ」


「委細承知!」男は短くキッパリと答えた。


私と緋那は、訳のわからないままこの男の屋敷に連れて行かれることになった。

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