無双ツインズは迷わない!

いまい あり

ひとつめの約束

勘弁してよね!

眠い…。何でこう眠いんだろう。


古典の時間は嫌いじゃないけど眠くなって困る。


今日も上手く寝てないフリしなきゃならないわ!



磨井うすいさん!磨井さん」



ん…?遠くから呼ばれてる気がするけど…




「磨井!磨井 楓乃うすい かの!起きなさいっ!」




「ふぁぁ…ねむーーい!」




誰か隣にいる?ゆるく頭をあげたら目の前に…


「あ、ウマコ!」




「誰がウマコですって?!」




教室中が大笑いしている。


しまった!失敗した!先生のあだ名で呼んでしまった!ヤバい!




古典の先生は、細身で面長な顔なので、こっそりウマコと呼んでいた。


教室中に聞こえる様に言ってしまうなんて誹謗中傷って言われるかも?


いやだーー!



私が焦ってるのと反比例してウマコは冷静だった。



「磨井さん…授業始まる前から寝てるってどうなの?」


「最近、体調悪くて……」


「あらそうなの。今日の古典は野外授業で、御所に見学に行くんだけど大丈夫?」


「それなら、行きます!行きます!」



ウマコの視線から逃げる様に野外授業の場所に行った。



楓乃は高校2年生。歴史が好きで自宅から1時間弱かけて歴史都市の高校に


通っている。定期券があればいつでも歴史観光が出来るからと、


この高校を選んだ。



今日みたいに野外授業で観光地を巡ることもあるので楓乃はとても


気に入っている。



御所は宮廷文化を知ることができる古い建物で、千年以上昔の貴族たちの生活を垣間見ることができる。楓乃は、初めて見る天皇の住まいや障壁画に圧倒されていた。



高校生の楓乃は、専門的なことは分からないが、本能的に建物や庭園を見ていると、とても懐かしく心が和む気がした。



 野外授業が終わってからも、楓乃は夢心地のまま午後の授業を受け自宅に


帰った。


「おかあさん、ただいま!」


楓乃が覚えていたのはそこまでだった。



------------------



ふと目が覚めた。


「もう朝……?」




目を開けてみると畳の上に座っている自分がいた。


えっ……座ったまま寝てたの私?信じられない!




それに畳?ここって和室?!私の部屋じゃないっ!



座っている自分をよく見ると着物を着ている。

どうして着物?



何これ!ここは一体どこなの?



周囲をよくみたら見えるもの全てが赤い。



ここはどこ?寝ている間に何か……



真っ赤な床、真っ赤な屏風、そして赤く染まった着物。


よく見ると壁には血が飛んた様なシミがある。



手を顔の前に近づけた時、生臭くさい血のにおいがする。


自分の手も赤く染まっていることに驚いて固まった。



目の前には同年代位女の子が倒れている。



巫女さんの衣装?



赤い海に身を沈めていて動かない。

えっ…もしかして…死んでる?



部屋を見渡すと、いつもの部屋とは全く違っている。一目で古い時代の部屋だと分かった。太い柱、廊下側には赤く染まった障子が見える。


床には、女の子の他に数名の男性が赤い海の中に倒れていた。



な、何ここ?知らない間に殺人事件に巻き込まれたの?


楓乃は現状が理解できなかった。



座ってるのは楓乃だけ。他は皆倒れて絶命している。


あまりの出来事に声も出ない。



ぼんやりしたまま、どれほど時間が経ったのか分からない。

少しずつ落ち着いてきた、というのか慣れてきたのか冷静に周囲を見渡した。



ここって……うちじゃない!まるで御所みたい……。



私は一体どこにいるの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る