第25話 杏奈vs美咲 キャビンアテンダントキャットファイト 空の上の修羅場
# 空の上の修羅場
機内の緊急アナウンスが鳴り響く中、キャビンの後部座席で二人の美貌の日本人キャビンアテンダントが激しく揉み合っていた。
「美咲さん!もういい加減にして!」杏奈の声が震える。
「あなたこそ!いつも私を見下して!」美咲の黒髪が乱れながら叫んだ。
二人の制服はすでにボタンが飛び散り、襟元が裂けていた。一時間前の出発時には完璧だった二人のプロフェッショナルな姿は見る影もない。
きっかけは些細なことだった。機内サービスの配分を巡って始まった口論。だが二人の長年の確執—客室乗務員としての昇進競争、同じ男性への思い、そして密かに育まれた嫉妬—が爆発したのだ。
杏奈は美咲の髪を掴み、勢いよく引っ張った。美咲は痛みに顔をゆがめながらも、杏奈の腕を強く噛みついた。
「痛っ!」杏奈が悲鳴を上げると同時に、美咲の膝が杏奈の腹部に叩き込まれた。
乗客は恐怖に凍りつき、他のCAは二人を引き離そうとしたが、互いに激しく絡み合った二人の身体を引き離すことができなかった。
「放してよ!」
「あんたこそ!」
杏奈の爪が美咲の頬を切り裂き、血が制服の胸元に滲んだ。美咲は怒りに震えながら、杏奈の首筋に噛みついた。
「お願い……止めて」美咲が弱々しく呟いた瞬間、機体が大きく揺れた。
二人はバランスを崩し、床に倒れ込んだ。それでも互いの手を離さなかった。
乗務員長がようやく二人を引き離したとき、美咲と杏奈の目からは涙が溢れていた。
「もう遅すぎるわ……」杏奈は震える声で言った。
「何があっても許せない」と美咲も答えた。
空の上で繰り広げられた二人の女の戦いは終わったが、心の中の戦いはまだ続いていた。
# 血染めの制服
離陸からわずか三十分。静寂なはずのビジネスクラスの機内は、今や血と涙で満ちていた。
乗務員長が強引に引き剥がした二人のCA。美咲の肩には杏奈の指が食い込んだ赤い痕が、杏奈の腕には美咲の歯型がくっきりと残っていた。どちらも目尻に涙を浮かべながらも、相手を睨む眼光は鋭かった。
「申し訳ございませんお客様……すぐに別の乗務員を」
乗務員長が言いかけた時、杏奈が突然笑い出した。
「他の乗務員なんていないじゃない」
嘲笑うように言い放つ彼女の言葉に、乗務員長の表情がこわばった。
確かに今日のシフトには二人しかいなかった。整備不良による急な欠員の補充が間に合わなかったのだ。
「責任はあなたにあるわね、美咲さん」
杏奈の目が冷たく光る。
「私の同期昇進のチャンスを台無しにしてくれてありがとう」
美咲は唇を噛みしめた。確かにそれは事実だった。先週の会議で杏奈の昇格案に反対票を入れたのは彼女だ。
「あなただって……私の婚約者に近づいていたくせに」
美咲の声が震えた。
「気づかないとでも?彼があなたに送ったあの写真……消したはずなのに」
杏奈の瞳が揺らいだ。「あれを見ていたの……?」
再び二人は身を寄せ合い—否、組み合い始めた。今度は美咲が優勢だった。杏奈の襟を掴み、頭を揺さぶる。
「私たちは似ているわね」美咲は囁いた。
「だからこそ許せない」
その時、機内電話が鳴った。管制塔からの入電。エンジントラブルが発生し、緊急着陸を要請しているという連絡だった。
二人の動きが止まった。
「行きましょう……」美咲が小さな声で言った。
「仕事よ……」
杏奈は何も答えず、ただ頷いた。二人は背を向けたままコックピットへと向かった。
機内で起きたいさかいのことは何もなかったかのように、彼女たちはプロフェッショナルな態度を取り戻し、乗客への説明と安否確認を始めた。
しかし乗務員長だけは知っていた。二人の美しいCAの背後に刻まれた傷跡と、決して溶け合わない憎悪の存在を。
# 落ち着いた翼の裏で
緊急着陸のため滑走路に近づく機内は緊張感に包まれていた。美咲と杏奈は冷静さを取り戻し、プロフェッショナルとしての役割を全うしていた。
「落ち着いてください。皆さんの安全は保証されています」
美咲の声は以前より幾分落ち着いていたが、その瞳には冷たい光が宿っていた。
杏奈もまた、表面上は完璧な笑顔を見せていたが、口角が微かにひきつっているのを乗務員長は見逃さなかった。
「トイレに行きたい方はこちらへどうぞ」
「お水をお持ちします」
彼女たちの完璧なプロフェッショナルぶりに客たちは安心を取り戻しつつあった。
着陸態勢に入り、機体が大きく揺れる。その瞬間—
「痛っ!」
小さな悲鳴が聞こえた。乗務員長が振り返ると、美咲が足首を押さえている。
「大丈夫ですか?」
杏奈が即座に駆け寄った。
「助けが必要なら言ってください」
その笑顔は完璧だった。あまりにも完璧すぎて不自然だった。
美咲は一瞬躊躇したが、「ありがとう」と小声で答え、杖を借りて歩き始めた。
杏奈は周りに気づかれないよう小さく微笑んだ。
乗務員長は全てを見ていた。杏奈がさりげなく美咲の足首を踏んだことを。そして美咲がその意図を理解しながらも報復しなかったことを。
二人は並んで歩きながら、誰にも聞こえないような小声で囁き合った。
「次はどこで会いましょう?」
「決まってます。次の便で……」
「もちろん……あなたの新しいルートでしょう?」
彼女たちの表面上の穏やかな関係とは裏腹に、二人の間に流れる緊張感は増すばかりだった。
機体は無事に滑走路に降り立った。乗客は安堵の表情を浮かべていたが、二人のCAの眼差しの奥に潜む敵意を知る者はほとんどいなかった。
これからも続くだろう彼女たちの闘いは、公の場ではなく、職場の陰で、そして何よりも二人だけの時間の中で展開されることになるだろう。
# 血縁の遺産
緊急着陸後の空港ターミナル。美咲と杏奈は並んで報告書を作成していた。表面上は協力的な態度を見せていたが、お互いを見る目には冷たい火花が散っていた。
「これで終わりだと思う?」
美咲がペンを持つ手を止めた。
「この件で上層部はきっと私たちを遠ざけるわ」
杏奈は静かに笑った。「それが狙いだったのかも」
「何?」
「私たちの因縁を終わらせるために」
美咲は驚いた様子を見せなかった。二人とも同じ結論に達していたのだ。今回の出来事は会社にとって深刻な問題であり、おそらく二人は別々の拠点へ異動させられるだろう。
「でも」杏奈が続けた。「私たちは同じ会社の幹部候補リストに載っている。いつか必ずまた交差するわ」
沈黙が流れた。美咲は窓の外の夕日を眺めながら口を開いた。
「祖父が残してくれた言葉があるの。『美しい花ほど根は深く張るものだ』」
杏奈は意味を察したように小さく頷いた。
「私も祖母に言われたことがある。『水面下で根が絡み合う二つの植物は決して離れられない』と」
二人は互いに見つめ合った。
「じゃあ」杏奈が立ち上がった。「これが最後ではないということね」
美咲も椅子を引き、「そうね」と答えた。
「次はもっと……公平に戦いましょう
# 鋼鉄の空の下で
機内清掃中、乗務員室に二人だけになった瞬間だった。
「さっきの続きよ」
美咲の声と共に杏奈の長い髪が掴まれた。床に押し倒される杏奈の目は怒りに燃えていた。
「生意気な!」
反撃した杏奈が美咲の頬に平手打ちを食らわせると同時に、両者の髪が絡み合った。床に転がりながら、美咲が杏奈の唇に噛みついた。
「痛い!」
杏奈が美咲の耳を引っ張り、美咲は顎で杏奈の喉を押し潰そうとする。制服が乱れ、肌が露わになっていく。
「この野良猫!」美咲が罵りながら杏奈の指を噛む。
杏奈は鼻血を拭うことなく、美咲の眉間に頭突きを食らわせた。二人はまるで獣のように床を転がり回り、互いの肉体を貪るように攻撃し続ける。
「死ね!」
「地獄に落ちろ!」
血と汗と唾液が混ざり合い、空調の風に吹かれてもなお熱気が渦巻いていた。二人のプライドと憎悪が肉体を通して直接的に衝突する様は、まるで見えない刃で互いを切り刻んでいるかのようだった。
# 喧嘩の最中に彼氏が乱入し二人に罵倒される
戦いは一瞬にして終わった。彼氏が乗務員室に入ってくると、美咲と杏奈は同時にその名を呼んだ。
「悠斗!!」
二人の目は怒りに満ちていた。悠斗は状況を把握できず立ち尽くした。
「また来たのね」美咲は冷ややかに言った。「私たちがこうなる原因を作ったのはあなたよ」
「え?どういうこと?」
杏奈が美咲の髪をさらに強く引っ張りながら怒鳴った。
「この売女!悠斗を奪おうとしているくせに!」
「あなたこそ!」
二人は悠斗の目の前で激しく睨み合い、互いの唾が顔にかかるほどの距離で罵り合った。
「二人とも……落ち着いて」悠斗は必死に仲裁しようとした。
「黙りなさい!」美咲が叫んだ。「全部あなたのせいよ!」
杏奈も怒りに震える声で続いた。
「そうだ!あなたが二股かけるからこんなことに!」
# 激突する二輪花
深夜の貨物エリア。監視カメラの死角で二人の華奢な身体が激しく絡み合っていた。
杏奈の指が美咲のポニーテールを鷲掴みにし、勢いよく床へ叩きつけた。コンクリートに頭部が打ち付けられる音が倉庫内に響く。
「ぐっ……!」
呻き声とともに美咲が反撃に出る。杏奈の前髪を両手で握りしめ、自分の唇で杏奈の口を塞いだ。舌と歯が絡み合う湿った音が闇の中に響く。
床を転がりながら、二人の身体が複雑に絡み合う。杏奈の膝が美咲の脇腹を捉え、美咲の肘が杏奈の側頭部を打った。
「この……っ!」
美咲が杏奈の右耳朶に噛みつく。血の味が口内に広がる。杏奈は痛みに顔を歪めながらも、負けじと美咲の鎖骨に歯を立てた。
二人の制服は既に泥と埃で汚れ、破れた布から白い肌が覗いている。髪は乱れ、互いの唾液と血液で顔が濡れていた。
倉庫の柱に背中を強打した美咲が体勢を立て直す間もなく、杏奈が彼女の膝裏を蹴り上げた。バランスを崩した美咲の喉元に、杏奈の鋭い歯が迫る。
「んっ……!」
窒息寸前の美咲が必死に杏奈の頬を拳で打ち据える。血が飛び散り、杏奈の唇が青紫に変色した。
床を転がりながら二人は互いの身体の上に乗ろうと足掻く。美咲が杏奈の腰に跨がった瞬間、杏奈が片足を持ち上げ美咲の肋骨を強打した。
「ああっ!」
一瞬の隙を突き、杏奈が美咲の髪を掴み直す。二人の体重が床に沈み込み、激しい転がり合いが始まった。埃が舞い上がり、照明の光を遮る。
最終的に壁際に追い詰められた美咲が最後の力を振り絞り、杏奈の指を一本ずつ口に運んだ。骨の軋む音とともに杏奈が悲鳴を上げる。
二人の絡み合いは倉庫の隅まで移動し、最終的には照明器具の下で固まった。互いの顔を至近距離で睨み合いながら、息を荒げて次の一手を探る——。
夜明け前、倉庫には二人の血と汗の匂いだけが残された。勝敗は未だ決していない。
# 黒い月の下で
雨の匂いが漂う深夜の屋外駐車場。ヘッドライトの光だけが二人の濡れた姿を照らし出していた。
「さあ、続きを始めましょう」
美咲の声に応えるように杏奈が一歩踏み出す。雨粒が二人の顔を洗い流す中、杏奈の指が美咲のツインテールの一方を掴んだ。
「っ!」
痛みに顔を歪ませながらも、美咲はもう一方の髪を掴み返した。二人は互いを引き寄せ合い、額を正面衝突させる。衝撃で視界が白くなる。
転がりながらも両者は髪を放さず、コンクリートの地面に擦りつけ合いながら回転を続ける。美咲が杏奈の顔面に膝を押し付けると、杏奈は美咲の太腿に噛みついた。
「この……っ!」
美咲が杏奈の髪を引っぱり仰向けにさせると、馬乗りになり首筋に噛み付いた。皮膚を貫通する音と同時に杏奈の悲鳴が上がる。
抵抗する杏奈が美咲の髪を掴み返し、頭を左右に振って美咲の顔を自分の顔に打ち付ける。鼻血がお互いの顔を汚す。
泥水の中で二人は絡み合いながら転がり続けた。美咲が杏奈の右耳に噛みつくと同時に、杏奈は美咲の左乳首を歯で挟んだ。
「ぎゃあっ!」
二人は激しく悶えながらも離れない。まるで磁石のように引き寄せられながらも憎悪で反発する。互いの身体を引き裂かんばかりに掴み合い、噛みつき合い、引っ張り合い。
雨脚が強まる中、二人の衣服は泥と血で重くなり、体液まみれになっていた。美咲が杏奈の指を一本ずつ折っていく様子は、雨の中でもはっきりと見える。
「許さない……絶対に!」
美咲の呪詛のような言葉に応えるように杏奈も叫ぶ。
「地獄へ道連れにしてやる!」
彼女たちの戦いは夜明けまで続き、朝日に照らされた駐車場には無数の擦り傷と血痕が残されていた。しかし二人の戦いはまだ終わらない。新たな戦場を求め、泥と血を纏ったまま去っていった。
# 根と根の絡み合い
倉庫街の暗がり。コンテナの間から漏れる機械灯が二人の姿を照らし出す。
美咲が一気に間合いを詰め、杏奈の髪を両手で鷲掴みにした。勢い余って二人は地面に倒れ込む。砂利が背中を擦り、痛みに顔を歪めながらも両者は互いを引き寄せた。
「この……!」
杏奈が反撃に転じ、美咲の髪を掴み返す。二人の頭部が激しく擦れ合う音が闇に響く。地面を転がりながら、互いの顔面を狙って膝を突き上げる。
「っ!」
美咲の膝が杏奈の頬を直撃し、鮮血が宙に舞う。だが杏奈も負けじと美咲の顎を掌底で突き上げた。
転がり続ける二人の身体はコンテナの壁に何度も激突し、金属音が周囲に響く。美咲が杏奈の腕を掴み、自分の顔面へと引き寄せる。そして—
「死ね!」
その言葉と共に美咲が杏奈の唇に噛みついた。歯と歯が激しくぶつかる音がし、血の味が口内に広がる。杏奈も負けじと美咲の首筋に牙を立てる。
「ああぁっ!」
美咲の悲鳴と共に杏奈が体勢を逆転させる。今度は彼女が美咲を地面に押さえつけ、髪を引っ張りながら顔面を何度も地面に打ち付けた。
泥と血で顔を汚しながらも、二人は互いを離さない。美咲が最後の力を振り絞り、杏奈の耳朶に歯を立てる。
「ぎゃあっ!」
杏奈の絶叫と共に二人の身体が痙攣する。絡み合った指と指、噛み合った唇と唇。まるで一つの生き物のように蠢きながらも、その本質は互いを滅ぼそうとする獣だった。
夜明け近く、二人はようやく動きを止めた。コンテナの影で、血と汗と唾液にまみれた姿で横たわっている。だが二人の目は依然として憎悪に満ちており、戦いの終焉を告げる鐘はまだ鳴っていない。
# 血脈の交錯
午前三時の港湾地区。防波堤の影で二人の女性が向き合っていた。潮風が髪をなびかせる。
「覚悟はいい?」美咲の声に怒りが滲む。
杏奈は無言で一歩踏み出し、美咲の長い髪を一掴みにした。力任せに引き寄せると同時に、美咲も杏奈のサイドポニーを掴む。
「ぐっ……!」
お互いを引き寄せ合いながら地面に倒れ込む。コンクリートに背中を打ちつけながらも、両者は髪を放さない。転がりながら位置を変え、海の匂いが混じる闇の中でもつれ合う。
美咲が杏奈の上に乗ると同時に顎で杏奈の顎を押し潰す。そして素早く唇を奪う—いや、噛みつくと言った方が正しい。血の味が口内に広がる。
「この……売女!」杏奈の罵声と共に美咲の顔面に肘打ちを浴びせる。
痛みに顔を歪めながらも美咲は反撃に転じ、杏奈の胸元に噛みついた。布を貫通し皮膚を食いちぎる音が静寂を破る。
「あああっ!」
杏奈の悲鳴と共に二人は再び転がり始める。防波堤の端まで辿り着き、危険を感じた美咲が体勢を整えようとすると—
「終わりよ!」
杏奈の声と共に美咲の髪が更に強く引っ張られ、二人は共に地面に倒れ込む。今度は杏奈が馬乗りとなり、美咲の首筋に歯を立てる。
「んっ……!」
美咲が苦悶の声を上げるが、負けじと杏奈の髪を引っ張り返し体勢を逆転させる。星空の下で繰り広げられる壮絶な争いは、夜明けまでの長い時間をかけて続きそうな予感があった。
# 塵と血と汗
早朝の公園。朝霧に包まれた遊具の陰で二人は対峙していた。
「こんな場所まで追いかけてきて」杏奈の声には疲れと怒りが混じる。
「あなたが逃げるからよ」美咲の手が伸び、杏奈の髪を掴む。
そのまま引き寄せられるように二人は地面に倒れ込んだ。草と土が跳ね上がり、朝露に濡れた制服が汚れていく。転がりながらも両者は髪を放さず、時には相手の髪を自分の体に巻き付けたり、地面に押さえつけたりする。
「この……!」
美咲が杏奈の髪を掴んだまま自分の唇に引き寄せ、首筋に噛みついた。血が滲み出る感触に満足したのか、今度は杏奈の頬に歯を立てる。
杏奈も負けじと美咲の耳に噛みつき返し、耳朶を引っ張りながら地面に押し付ける。二人の顔は既に泥と汗と血で汚れていた。
公園の中央まで転がりながらも攻防は続く。遊具の支柱に背中を打ちつけた美咲が一瞬怯むと、杏奈がその隙を突いて彼女の肩に噛みついた。
「あぁっ!」
美咲の悲鳴と共に二人は再び地面に転がり込む。今度は杏奈が上になり、美咲の首筋に吸い付くように唇を這わせる。
「死ね……この売女……」
呪詛のような言葉と共に杏奈の歯が美咲の肌に食い込んでいく。
だが美咲も簡単には屈しない。体を捻りながら杏奈の髪を掴み返し、自分の顔に引き寄せると同時に杏奈の唇に噛みついた。
二人はもつれ合いながらブランコの支柱に身体を擦りつけ、鉄錆の匂いが加わり新たな痛みが生まれる。それでも両者は離れない。
朝日が昇り始めても尚、二人の戦いは続いていた。公園の地面には血と唾液の跡が点々と残され、遠くから見る者には単なる事故現場にしか見えなかっただろう。
# 羽をもがれた二羽
早朝の廃工場。錆びた金属パイプが転がる床で二人は対峙していた。
「ここなら邪魔されないわね」美咲の目が妖しく光る。
「ええ」杏奈は一瞬の躊躇もなく美咲に向かって走り出した。そして一気に美咲の髪を両手で掴む。美咲も同様に杏奈の髪を掴み返す。
二人は引き合うように床に倒れ込む。金属音と衣擦れの音が静寂を破る。転がりながらも髪を放さず、時には互いの顔を地面に押し付けながら移動していく。
「この……っ!」
美咲が杏奈の髪を自分の顔に引き寄せると同時に唇に噛みついた。血の味が口内に広がり、杏奈の顔が苦痛に歪む。
杏奈は美咲の髪を掴んだまま体を起こし、今度は彼女の頬に噛みついた。皮膚を破る音が小さく響く。
「ぐっ……!」
美咲の呻き声と共に二人は再び地面に倒れ込む。今度は美咲が上になり、杏奈の首筋に歯を立てる。
「死んでしまえ!」杏奈の絶叫と共に彼女の拳が美咲の腹部を直撃する。
一瞬怯んだ美咲に代わり、杏奈が上になる番だった。彼女は美咲の髪を自分の唇に引き寄せながら耳朶に噛みついた。
「ああっ!」
美咲の悲鳴が工場内に響く。両者の顔は既に泥と血と唾液で汚れており、制服も破れて肌が露出している部分が多い。
「あなたなんかに負けるものですか!」美咲が反撃に出る。杏奈の髪を引っ張りながら自分の顔に引き寄せ、頬に噛みついた。
激しい痛みに杏奈が顔を背けるが、それこそ美咲の狙いだった。彼女は杏奈の首筋に再び噛みつき、今度は深く歯を食い込ませる。
「ぎゃあっ!」
杏奈の絶叫と共に二人は床を転がりながら位置を変える。金属パイプにぶつかりながらも互いを離さず、ついには窓際まで辿り着いていた。
朝日が差し込む中、二人の姿は血と泥で覆われながらも美しさを失っていなかった。だがその内面は憎悪と怨念で溢れている。
「私は……負けない……」美咲の囁きが杏奈の耳に届く。
その言葉に応えるように杏奈も呟く。「私も……負けません……」
そして二人は最後の力を振り絞り、互いの唇に噛みつき合った。血の味が濃くなり、意識が朦朧とし始めた時だった—
「そこまで!」
第三者の声が割って入り、二人の争いは一時中断されることとなった。だが彼女たちの戦いはまだ終わっていないことは明らかだった。
# 二羽の堕天使
早朝の高架下。雨上がりのアスファルトが僅かな光を反射している。
「こんなところまで追いかけてきて」杏奈の声は疲労と怒りに満ちている。
「それは私の台詞よ」美咲の目が怪しく輝く。
次の瞬間、二人は同時に動き出した。互いの髪を掴み合いながら地面に倒れ込む。水溜まりが跳ね上がり、泥と雨の匂いが混ざり合う。
転がりながらも髪を放さず、時には相手の髪を自分の体に巻き付けたり地面に押さえつけたりする。アスファルトに擦れる音と荒い息遣いだけが空間を支配する。
「この……!」
美咲が杏奈の髪を掴んだまま自分の唇に引き寄せ、首筋に噛みついた。血が滲み出る感触に満足したのか、今度は杏奈の頬に噛みつく。
杏奈も負けじと美咲の耳に噛みつき返し、耳朶を引っ張りながら地面に押し付ける。二人の顔は既に泥と汗と血で汚れていた。
高架の柱まで転がりながらも攻防は続く。柱に背中を打ちつけた美咲が一瞬怯むと、杏奈がその隙を突いて彼女の肩に噛みついた。
「あぁっ!」
美咲の悲鳴と共に二人は再び地面に転がり込む。今度は杏奈が上になり、美咲の首筋に吸い付くように唇を這わせる。
「死ね……この売女……」
呪詛のような言葉と共に杏奈の歯が美咲の肌に食い込んでいく。
だが美咲も簡単には屈しない。体を捻りながら杏奈の髪を掴み返し、自分の顔に引き寄せると同時に杏奈の唇に噛みついた。
二人はもつれ合いながら側溝に身体を擦りつけ、鉄錆の匂いが加わり新たな痛みが生まれる。それでも両者は離れない。
朝日が昇り始めても尚、二人の戦いは続いていた。高架下の地面には血と唾液の跡が点々と残され、遠くから見る者には単なる事故現場にしか見えなかっただろう。
# 鋼鉄の檻にて
倉庫街の一角にある古い配管設備の陰で二人は向き合っていた。
「ここで終わりにしましょう」美咲の声は冷静さを取り戻していた。
「望むところです」杏奈は即答する。
その言葉を合図に二人は同時に動き出した。互いの髪を掴み合いながら地面に倒れ込む。砂と小石が舞い上がり、二人の顔を傷つける。
転がりながらも髪を放さず、時には相手の髪を自分の体に巻き付けたり地面に押さえつけたりする。錆びた鋼鉄の匂いと二人の体臭が混じり合う。
「この……っ!」
美咲が杏奈の髪を掴んだまま自分の唇に引き寄せ、首筋に噛みついた。血が滲み出る感触に満足したのか、今度は杏奈の頬に噛みつく。
杏奈も負けじと美咲の耳に噛みつき返し、耳朶を引っ張りながら地面に押し付ける。二人の顔は既に泥と汗と血で汚れていた。
配管設備まで転がりながらも攻防は続く。
動画はこちらhttps://x.com/nabuhero
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