言えない

 そして夏休みになりました。

 

 

 夏休みは、一緒に部屋で勉強というなのイチャイチャ。

 

 オレの部屋でね!

 

 オレの部屋に結衣菜さんがいるのが、はじめは不思議な感覚だった。

 

 女の子っていったら、今までルキノしか来なかったからな。

 

 でも、結衣菜さんは、彼女〜♡

 部屋に彼女だよ?

 

 

 やっぱりさ、どうしても密室だし?顔も近いわけじゃん?

 

 そりゃね?

 

 ね、そうなりますって。

 

 学校の勉強なのか、キスの勉強なのかってくらい、キスを堪能してございます。

 

 でもさ…

 

 正直…あんまり言葉では好きって、伝えていないんだよね。

 

 だって、照れくさいじゃん。

 

 しかし、こうやってキスしてるんだから好きは、伝わるはずだ。

 

 …きっと。

 

 

 

「あ、ねぇその漫画好きなの⁉︎」

 ふいに本棚に目を向ける結衣菜さん。

 

「あー、ルキノに借りてそのまんまだった」

 

 少し間が空いて結衣菜さんは、少し不機嫌そうに

「そう」

 と目を伏せて、勉強しだした。

 

 あれ?

 なんか怒っちゃった⁉︎

 

「すきありー‼︎」

「きゃ〜‼︎」

 

 チュ〜♡

 

 ちょっと強引なキスだったけど、少し結衣菜さんの機嫌がなおったみたいだ。

 

 漫画借りたからかな?

 

 早く返そっと。

 

 

 

 で、次の日、速攻で返しました。

 

 

 それからはオレと結衣菜さんは順調で、クリスマスをそろそろ迎えるって感じだった。

 

 

「冬希くん、二十四日のイブが楽しみだね〜!」

「うん、めっちゃ楽しみ!」

「次の日は、家族と過ごすんだよね?」

「…うん。」

「結衣菜もだよ」

「そっか…」

 

 …言えない。

 

 ほんとは、家族だけじゃないって…

 

 実は…毎年昔からクリスマスは、ルキノ家族と合同クリスマスをしていた。

 

 でも…なんか言い出せなくて、つい家族でって言ってしまった。

 

 

 言ったら、結衣菜さんがまた嫌な思いしそうだし…

 

 

 …

 

 

 こうして、オレたちはクリスマスを過ごして、何事もなくお正月を無事迎えた…はずだった。

 

 でも、冬休み明けの休み時間廊下で結衣菜さんは、神妙な面持ちで

「クリスマス…ルキノが冬希くん家族と過ごしたって言ってたよ」

 と、なんともかなしそうにオレをじっとみた。

 

「あー…ごめん。なんか言い出しにくくて」

「そっか、わかった。」

 と結衣菜さんは、ニッコリ微笑んだ。

 

 

 …

 

 あ、オレ…今結衣菜さんのこと無理矢理笑顔にさせてるんだ。

 

 …言えばよかった。

 ちゃんと言っておけばよかったな。

 

「ほんとごめん」

「ううん、こっちこそなんかごめんね、じゃあ、教室戻るね」

 って、気にしてない感を出して戻ってしまった。

 

 …

 

 オレのせいじゃん…

 

 

「どうしたぁ?結衣菜とケンカでもしたんだ?部屋で無理矢理押し倒して怒られたんだぁ?」

 ちゃかすように笑うルキノ。

 

「そんなんじゃねーよ」

 思わず真顔で怒ってしまった。

 

「ふーん」

 ルキノは、つまんなーいって顔で次の授業の準備をしだした。

 

 …

 

 

 オレ…結衣菜さんに無理させてんのかな。

 

 

 でも、次の日結衣菜さんは普通にオレにおはようって、朝日と同じくらいの爽やか笑顔を向けてくれた。

 

 なんとなくホッとした。

 

 

 …

 

 もう、話してくれないとかになったらどうしようって思ったから、安心した。

 

 

 

 二時間目と三時間目の間の休み時間に、英語のノートを宿題に出されていたことを思い出して、オレは慌てて適当にノートに書いていた。

 

 そしたら、

「冬希くん…」

 って、珍しく休み時間に結衣菜さんがオレの目の前に現れた。

 

 思わず顔を上げると、結衣菜さんが申し訳なさそうに、数学の教科書を貸して欲しいとお願いしてきた。

 

 あー、残念…

 

 オレのクラスは、今日数学がない。

 

「ごめん、結衣菜さん。今日数学ないんだ」

 そっかと結衣菜さんが戻ろうとすると、ルキノが

「わたし置き勉してるから、貸そうか?」

 と、数学の教科書を差し出した。

 

「え、いいの?」

「うん、全然いいよ。てかさ、二人っていつまでくんさん呼びなわけ?」

 って笑った。

 

 たしかに… 

 

 

 ルキノの言うように、そろそろ名前呼び捨てとか…あだ名みたいなので呼び合いたいかも。

 

 

 あとで結衣菜さんと話し合おうかな!

 

 

 続く。

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