極北の茶会 Ⅰ.モデラート
極北の茶会 Ⅰ.モデラート
BGM-Henryk Mikołaj Górecki - 『Concerto for Harpsichord (or piano) and String Orchestra, Op. 40, 1. Allegro molto』
そして
匣は徐々に
すると露側から
彼もまた我と同一の道を歩いてきた者だ。それで吟行しているのだろう。
その麻衣、髪は粒波
彼を目撃した我は
「
その声を聞いた剣歯虎は紫檀の椅子の座板に
「ああ、私も同じだ。だが、まさか
私は杯を指で撫でながら、液面に映る己の顔を覗き込む。その波紋は、千年の孤独を抱えた者の
「……プルートーのみなもと、か。ふむ、君はそう呼ぶのだね」
剣歯虎の眼光は揺るがぬ鉄のように私を射抜く。
「問おうか我が友よ。記憶の売買とは何だ。私たちは何を支払い、何を手にいれる」
私は杯を口に運び、鸚緑に侵された液体が舌を撫でる感触を味わう。
「記憶とは、今を生きる己の
「多世界に生きるとは、卿にとっては記憶を意図的に構築するということなのか」
「ああ。それ即ち、今という非可逆の中で、一つの宇宙ではなく、概念上可能なすべての宇宙の集合中で生きようとすることだ」
「情報生成が
キリル・スヴェトザロフ、スヴェトは、湯気がみえなくなったマルコ・ポーロを漸く啜る。猫舌なのではなく、応答を集中してい聴いていたのであろう。
「続きをたのむ」
「記憶の秩序にすらすら強い理性を働かせること。それは、我らの認識に確かな客観的要素が入り込むということ。そして、記憶自体の価値が明確になる」
我は
「記憶の売買の先にある境地。そこは名無き地だ」
TOLDEKIM 大鳥 修司 @Amadeus22498
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