第47話 キミハが死んだ翌日

 消火活動が終わった日。


 火山の中に入ったが、キミハの死体はなかった。


 そして、投げ入れたはずのハーバリウムの瓶も跡形もなく消えていた。


 火の勢いが強かったとはいえ、消えたというのは不自然。



 でも、キミハらしいな。




「前の世界に戻れたのかな」


 気持ちのいいくらいに晴れ渡った空を見て思う。



 記憶の中では、キミハの笑顔が輝き、声も微かに耳に残っている。



 胸を締め付けて、涙となって溢れる。



 空を仰ぎながら涙を流す端夜の隣に、迅斗がしゃがみ込んだ。



「姉貴もキミハも失って、悲しいし、辛いけど、キミハは俺らを守るために飛び込んだんだろ。なら、涙流さず、一生懸命生きようぜ」


 涙が溜まった目で微笑み、肩を叩く。



「お前だって、泣いてんじゃん」



 嗚咽に途切れ途切れになりながら、笑う。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る