第34話 学校生活4
「ねえ、閃華」
「私はヤイルと関われないのは嫌だから、輝羽と和解してほしくて」
「無理。キミハ。分かってよ」
歯を食いしばって、力を溜め込んだような声だった。
そして、走り抜けていった。
間違いだった。
大丈夫なんて。
「待って」
走って、走って追いかける。
ただ、私は元の世界の苦しみに囚われているだけなのかもしれない。
ヤイルのため、ではないのかもしれない。
「まって」
トン。
ヤイルの足が止まる。
「輝羽と仲良くなりたいって思えない」
「輝羽と私は合わないの。輝羽と違う意見を言うと、睨まれて自由に思ったことを言えない。それは、私にとって死だよ。苦しんだよ。だから、輝羽と仲よくするのは無理なの」
「そっか」
望んでるとばかり思って、嫌だということを考えても見なかった。
「輝羽」
不安そうな顔をして振り返った。
申し訳なさ、いたたまれなさが募る。 だけど、ごめん。
「輝羽と一緒だと、ヤイルと関われないなら、私はヤイルと一緒にいる。ごめん」
「私のためにとかで輝羽と離れなくていいよ」
後ろにいたヤイルが言った。
だけど、私はそんなにいい人間じゃない。
「ヤイルのためじゃないよ。自分のため。後悔したくなくて、それでいて、怖がりだからだよ」
「そっか」
輝羽が小さく呟いて、私の言葉を呑み下す。
「わかった。輝羽と閃華は関わらない。そして、輝羽は桜夜と閃華がかかわることには関与しない。これなら、桜夜は輝羽と一緒にいる?」
後ろから燦空が飛び出してきた。
「いいよね」
「いいけど。でも」
「輝羽もこれでいいよね?」
ありがとう。燦空。
ヤイルと離れたくない気持ちで、輝羽にはああ言ったけれど、輝羽とも離れたくない気持ちはあった。
だから、どっちも離さずにいられるのは、よかったって思う。
「私的にも、桜夜と離れたくはないからね」
私の肩に手を置いて、ウインク。そして、キザな微笑み。
心の底から嬉しかった。
燦空に離れたくないって言われたことが、誰も苦しくない選択肢を選べたことが、ちゃんと自分の影響で目の前のことを変えられたことが。
だからありがとう。
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