第30話 入学式
端夜たちに見送られて、私は炎狩の郷学院に帰ってきた。
廊下に、クラス分けの用紙が貼られていた。
二クラスに分けられて、受験番号と飛び飛び炎狩人名が書かれている。
私とヤイルは同じく二組。
知ってる人がいて、よかったと、少し安心しながら、受付の人によって差し出された紙を受け取る。
「炎狩人名と性別、年齢、受験番号をお書きください」
22 14歳 女 桜夜 サクヨ
書類の空欄を書き込んで、「お願いします」と言って、手渡した。
翌日、ドアの前に制服の入ったカゴが置かれていた。
シックな色合いに程よく朱色が入ったデザイン。
鏡の前で、制服に着替えると、胸元の炎の紋章がきらりと光った。
寮から体育館の間の通路を歩幅を合わせて、胸を張って歩く。
足が一斉に床を踏んで、その音が響いた。
次第に体育館が近くなり、緊張が増していく。
体育館に入ると、広々とした空間が広がった。
天井は空ほど高く、カーテンの隙間から日差しが差し込んだ。
床は優しく照らされて、生温かい。
担任の講師が、名簿を手にして、一人一人の炎狩人名を読み上げていく。
その声が、自分の番になると、胸が高鳴ってしまう。
足に力を込めて、立ち上がり、「はい」と返事をして、椅子に座る。
私の次は、体育館に響き渡る大きな返事をしたヤイル・閃華(せんか)。
その名前に、明るく話す眩き輝きや表情のバリエーションの多い鮮やかさが投影されていて、素敵だなと感じ入る。
「二組。以上です」
担任の炎月講師がそう告げて、壇上を降りていく。
「では、校長先生のお話です。お願いします」
教壇のマイクを手に取って、丁寧にお辞儀をした。
「新入生の皆さん。ようこそ炎狩の郷学院へ。今日、ここに集った皆さんは、一人一人が素晴らしき精鋭です。この学校で、一生懸命励んで、夢を手にしてください。
ところで、皆さん。炎とはどんなものだと思いますか。暗闇を切り裂く光であり、心を照らしてくれるものでもあります。その事を忘れずに、励んでいってくださいね。 以上です」
炎は、心を照らす、か。
確かに、私の心を照らしてくれていた。
心に誇りを持って、体育館を出ていく。
美しい音楽が流れ、私の心は温かく彩られていた。
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