第28話 一時帰省1
新一年生の寮から私は端夜と迅斗へ手紙を書いている。
炎月(えんげつ)講師に、手紙を出したいというと、明日の落下地点に届けてくれると言った。
炎狩の郷学院に合格した旨を書こうと思ったけれど、直接伝えたて喜ぶ顔を見たいと思ったから、書かなかった。
代わりに、入試で作れていなかったハーバリウムを「迅斗へ」と書いて、送った。
だが、その一か月後、里帰りをして炎狩人名を決めるようにという、課題を出された。
その言葉を聞いたとき、端夜につけてもらおうと決めた。
私が炎狩人になれたいと思えたきっかけだから。
「またね」
試験を受けた日の記憶を思い起こしながら、道を歩く。
「今日って、燈の玉、どこに落ちたか分かりますか」
「ああ。あそこの道の方だよ」
燈光(ひこう)駅で降りるように、という講師の言葉は正しかったらしい。
おじいさんにお礼を言って、その方向に歩いた。
黒いマントを被った人がぽつりぽつりと視界に移る。
「あ、やっほ~」
なかなか見つからず、疲れ果てていた私に満面の笑みで話しかけてきたのは、宵華先輩だった。
知り合いがいたということに安心してほっと、一息つく私に、矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
「何してるの? てか、試験受かった? あと、炎月講師ってまだいる?」
「受かりましたよ。炎月講師もいますよ」
「お⁉ マジ やったじゃん 炎月講師いるんだ~。今度行ってみようかな」
「炎月講師、好きなんですか」
「うん。恩師だよ」
宵華先輩には珍しく空白のある声。
「あ。宵華」
「今回こそは覚えてくれてたね」と言って、頭を撫でようなとする宵華先輩の言葉をガン無視して、続ける。
「キミハ。どうしてここにいるんだ?」
受かりましたよ。
そう口を開こうとした瞬間、宵華先輩にその言葉を取られた。
「受かったってさ。それで、一時帰省なんだって」
「よかった」
その声に、端夜の心の不安がほどけていく音が聞こえた。
「端夜、受からないと思ってたの?」
「いや。受かると思ってたが、想像すると少し怖くてな」
真摯に考えてくれていた、そのことが伝わってくる言葉に胸が熱くなる。
「ありがとう」
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