第20話 燈球探索8 端夜との遭難2

「もう暗くなってきたから、休むか」


 空を見上げると、空に丸い月が出ていた。


 黒く厚い雲と対照的に、黄色く光る。



 端夜はリュックを下ろして、テントの袋を取り出した。


 袋を開けて、慎重に広げると、撥水性の生地が月光を浴びて、白く輝く。


 ペグを地面に押し込んで、ロープをしっかりと張っていく。


 フレームを組み立てると、金属がかみ合って、テントの形になっていく。



 投げ捨てるように、テントの中にリュックを置いて、その隣に座り込んだ。


 そして、座ることを促すように、端夜はリュックの反対隣りを叩いた。


 荷物を隣に置き、私はゆっくりと膝を折った。



「腹、減ってるか?」


「少しだけ」


 カバンの中身を探って、食べ物が入ったビニール袋を取り出した。


 バーナーのガスのつまみを静かにひねる。


「シュー」という小さな音が聞こえると、箱から一本のマッチを取り出し、鋭くこする。


 赤い光が鋭く瞬き、わずかに芯を震わせながら、端夜の顔を照らした。


 バーナーにマッチを傾けて、、炎を移した瞬間、赤い炎が勢いよくバーナーをから飛び出した。


 急いで、ねじを回して、段々と炎の勢いが弱くなり、酸素量のおい青色に変わった。


 ガスべーなーの上に三脚を、その上に水筒の水を移したケトルを置き、湯気が立つのを待つ。



 ふわりと湯気が立った。


 最初は、気を付けなければ見えないほど控えめに。 だが、段々とくっきり形を帯びていく。


 黄色と赤のパッケージのカップラーメンを二つ取り出して、ケトルの中のお湯を流し込む。


「タイマーは持っていないから、一緒に数えるか?」


「そうですね」



「いーち、にー、さーん、よーん…」


 声の余韻を味わうように、ゆっくりと数えていく。



「ひゃくはちじゅう」


 数えている声が心地よくなってきた頃、声が跳ね、終わりになる。



「どうぞ」


 端夜から割りばしを受け取って、ふたを開けると、スープの香りに包まれた。


 箸で麺をかき混ぜて、一口。 口に運ぶ。


 心がほどけていく。


 ぐっと我慢していた、考えないようにっしていたことが溢れてくる。


 零れだしてくる涙を堪えて、ラーメンを勢いよく啜る。


 温かさと塩気がじんわり心の奥の方にまで広がっていく。



「ハー」


 汁まで飲み切って、ほっと一息。


「ごちそうさまでした」


 隣の端夜に合わせて、丁寧に手を合わせた。


「ゴミはこの袋に入れていいぞ」


 カップと割りばしをその袋に入れて、私は夜空を眺める。


 星のない真っ暗な空。

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