第3話『GUM⭐︎SHALA』3


 アーチンのベースソロが終わり、今度はキーボードのルンルンがバッキングしながら即興でメロディを奏でる。明るいルンルンは笑顔で有名アニメ楽曲のフレーズを遊びで入れたりする。それを聞いて観客だけでなくミッチやアーチンも笑顔を見せる。正にバンドのムードメーカーだ。


 やがて、下手側の観客が騒つき始める。

リードギター、ケイトが登場する。


 キャーーッ!

 ケイちゃーーん!

 ケイトーー!

 ケイティーー!


 アズテックゴールドのストラトキャスターを下げ、ギターに合わせたスモーキーなゴールドに軽いウェーブの入ったウルフロングのヘアスタイル、ゴールドのネックレスを何種類も首から掛けている。黒いスパンコールのタンクトップに革パン、黒のピンヒールのロングブーツ。


 リズム隊の演奏に乗りギターのセッティングをしながらたまにステップを踏んで踊ってみせるケイト。


トゥトゥーーン……ティーーンティロリィロリィーーン……

 チューニングの音だけで観客が盛り上がる。


ギュワァァァーーーーン……

ギュイイイイーーン……ティリティリティリティリティリティリティリティリティリキュウィーーイィーーーーン!


 恒例のケイト速弾きソロが始まった。髪を振り乱しながら高速でタッピングするケイト。観客は悲鳴を上げ、あるいは固唾を飲んでそのプレイを見つめる。俯いた顔を時に振り上げる時に光る汗がスポットで輝き、観客を興奮させていく。


ギュワァァァーーーーン……


 ケイトの速弾きが終わった合図と共にミッチのカウントで、バンドが刻むテンポが100BPM程度に落ち着いた。


ドゥンッタットゥドゥンドゥンタットゥク……


 殆どの観客が知っている。ケイトのソロの後、この伴奏で登場するメンバーを。


 フォーーーーッ!

 ギャーーーーッ!

 トゥエ様ーー!

 トゥエルブーーッ!

 トゥーーエ!トゥーーエ!トゥーーエ!……


 にわかロック少女、真由美は動画を一時停止した。

「ちょいまちーー! 今、お客さんトゥエルブって呼んだよね? 高校生でもうトゥエルブなの!?」


 真由美が驚くのも無理はない。五百旗頭邸警護隊シャドウズのトゥエルブこと田中町子は12月12日生まれ、出席番号5年連続女子の12番、『12』は学生時代からのラッキーナンバーだったのである。


「これからいよいよトゥエルブお姉さんの高校時代が降臨するのーー? ちょっと無理なんですけどーー!」

 真由美はベッドにうつ伏せに倒れ込み、手足をバタバタさせた。


「真由美!? どうしたの大きい声出して、近所迷惑よ!」

 母、真佐江に怒られた。


《NEXT》

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