レベル1冒険者と行くやさしい魔窟<ダンジョン>探検
路地猫みのる
第1話 かけだし冒険者
冒険者というのは、フリーランスなお仕事だ。だれも生活を保証してくれない。
同じ、
俺、アレクがそんなブラックなお仕事に就いたのは、つい一ヶ月前。
何故って? 金が必要だからだ。魔物を倒して得た素材、時折見つかる水晶、誰かの落とし物などなど。魔窟には、金目のものがごろごろ転がっている。まぁ、
(だがしかーし。これで貧乏脱却だ!)
俺は、羊皮紙に書かれた報奨金の額に、にまりと緩む頬を隠せない。
組合ってのは、冒険者の登録や斡旋を行う団体だが、基本的にはお国の言いなりで、掲示板には変わり映えのしない依頼が並ぶ。「春のスタートダッシュ討伐大会」とか、「水晶買取価格査定アップキャンペーン」とか。
ところが。俺は見つけてしまった。地方領主の依頼したレア案件を。「未踏の洞窟の調査依頼」「オプションで報酬上乗せ」っていうふたつの美味しい要件が重なってる!
まず、調査依頼。これは文字通り、魔窟の地図を作成したり、どんな魔物が生息しているかを調べる仕事だ。大多数の魔窟は、誰かがそういう調査をして、前情報ありきで討伐に挑む。でもまぁ、毎年のように新しい通路が発見されてるから、あんま信憑性はないかもだけど。誰も知らない場所なんだから、豊富な水晶が採れる確率が高いのが魅力。危険は高いものの、必ずしも魔物を倒さなくちゃならないわけじゃないし、可能な範囲を調査して確実に報酬を貰えばいい。
そこへさらに、オプションがついてるのが今回の依頼。
「行方不明者を発見した者には追加報酬を与える。手がかりの発見は応相談」
つまり、報酬が二重取りできる。こんないい仕事はそうそうない、はず!(だって俺、初心者だもん。業界には詳しくないんだって。)
――ん? 初心者がそんな危険な仕事を受けられるのかって?
依頼ってのは、冒険者登録さえしてれば誰でも受けられる。だって、人生に適正レベルなんてものはない。
生まれた瞬間に強敵に見つかって死んじまうこともある、生きるために身の丈に合わない服を着ることもある……そうだろ?
国も組合も、依頼が達成されればそれでいいのさ。初心者が挑んで返り討ちにあったところで、なんの問題もない。
ま、あまりに失敗が多くて調査が難航するようなら、ベテランが招集されるかもね。
とはいえ、俺にとって厳しい依頼なのは確かだ。だから、強く頼もしい仲間に頼るとしよう。
だがしかーし。(あ、2回目。)
あいつらに、ヤル気というものは欠片もない。
今日も俺がビシバシ、ケツを叩いてやらなきゃな。
まずは、自己紹介。
名前は名乗ったけど、もっかい。
俺は、アレクサンダー。みんなにはアレクって呼ばれてる。金欲しさに冒険者デビューした14歳。身長は……伸び代しかない!
オレンジがかった明るい茶髪も、若葉みたいな緑の目も母さん譲り。父には似てないって言われる。まったく光栄な話さ。あんな奴に似てるって言われても、寒気がするぜ。
より俺のことを知ってもらうために。
「
□--------□
【冒険者ID】00545311
【登録名】かけだし冒険者
【職業】剣士Lv.1/召喚士Lv.2
【技能】肉体強化Lv.1、白炎Lv.1
□--------□
身につけた通信デバイスで表示できる身分証明書の内容だ。世界中飛び回る冒険者のマストアイテムと言っていい。これがあればたいていの領地に出入りできるし、逆にこれがないと依頼も受けられない。
――バンッ。
俺は、勢い込んで宿屋のドアを開け放った。
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