第8話 「共演者」

 母が入院し、久しぶりに病室を訪れた悠。

その帰り、カウンターで麗子に呟く。

「親って、弱ってる姿見せないですよね。」


 麗子は真剣な眼差しで言った。


「親はね、最後まで舞台の役者でいようとするの。だから、今だけは観客じゃなくて共演者になってあげなさい。」


 悠は翌日、母の好物を病室に持って行った。

舞台に立つ母の隣に、ようやく自分も立てた気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る