東京駅構内は週末ということもあって混雑していた。いまはランチタイムなので、カフェやレストランで入店待ちの行列ができている。僕はスマホで構内案内を確認し、目的の花屋に向かった。

『MK FLOWER』は北口の近くにあった。いろいろなアレンジメントフラワーがおしゃれなBOXに入れられて店頭に飾られていた。店では花柄のギフト雑貨なども販売されているようだ。また、なぜかテイクアウトのアイスティの看板も出ている。

　まずは店の写真を撮ることにした。店全体は2枚、ズームして店員の顔がわかるくらいの写真を数枚撮ってみた。すぐに顔を確認してみると、３人の女性の中に社長の娘と思われる人がいた。

「この人が美木綾華（みきあやか）かな？」

『そうだよ』

「…!?　彩貴さん!?」

『そうだよ。　言ったよね？呼んでくれたら通じるって』

「でも…僕は思ってるんじゃなくて、普通に声に出ちゃってるんですけど」

『ああ、どっちでもおんなじ。　だからどっちでもOK』

　周りからみたら…心配になって辺りを見てると

『スマホを耳に当てて話せば？』

　なるほど！

　それから僕は聞き込みをするのにどうすればいいか尋ねた。彩貴さんは、構内のコンビニの店員であることを伝えて、北口の店についてのアンケート調査に協力してほしいと言って聞けばいいと言った。適当な紙とペンを手に持って、聞いたらその場でメモする。聞くことは北口の花屋について利用したことがあるか、利用したいと思うか、店について思うこと、店員さんについてなど。また、聞いた人についてメモしておくこと。時間も。

　僕はいつもカバンに入れてるメモ帳とボールペンを出した。そこに、今の時間と近くの店の店名を先に書いておくことにした。

　カフェやレストランはいまの時間聞きにくいので、それ以外の店の人に聞いた。

「すみません。　そこのコンビニの者ですが…」

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　１時間半くらい経った時だった。彩貴さんが店に山野が現れたと言ってきた。すぐ花屋に戻って写真を撮るように言われた。

　店の前にスーツを着た男性がいた。店の中から美木綾華と思われる女性が出てきて、男性に話かけた。

　僕は2人の写真を全体、アップといろいろ撮った。

『近づいてスマホで会話を録音してくれる？』

　店の方へ行こうとすると、

『店じゃなくその横のアイスティの看板の後ろ』

　言われた通り看板の後ろに行くと、そこからスマホを2人のいる方に向けて声を録音した。

『山野を尾行してね。　気づかれないようにメモみたりしながら』

　山野はアイスティをもらって歩き出した。僕は言われた通り少し後ろを歩くようにした。会社に戻るらしいとわかったのはMIRAビルの入り口に来たときだ。地下から3階まではいろんなショップやクリニックなどが入ってるらしく、観光客も見かけた。

　オフィス階行エレベーターホールの手前で足を止めると彩貴さんからついて行くようにと言われた。

『コンビニには近所に配達する店員もいるよね』

　うちはやってない。でも確かにオフィスビル内のコンビニではそういうサービスやってるところもある。

　山野と同じエレベーターに乗り、同じフロアで降りた。

『会社の入り口の前にチラシがあるからもらってきて』

　僕は言われた通りチラシをもらい、エレベーターで下に降りた。

『ビルの中のお店の人にそのチラシ見せて会社について聞いてくれる？社員さんが店に来るかとか、知ってる人いるならどんな人か』

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　時間を確認すると5時少し前だった。

『お疲れ様』

「帰ったら結人に写真とメモ渡してまとめてもらいます」

『その前に、きみは心を読む力があるよね。　今日会った人のことをよく思い出してもう一度メモし直してくれる？もちろん聞いた話もね。　時間も忘れずに。　写真はそのまま全部渡してOK』

　調査終了メールを結人に送信してから僕は駅を出た。