隠蔽工作
その頃、学校では教師達の緊急会議が行われていた。
しかしその内容は、彩希の飛び降りを隠蔽しようと、裏で圧力を掛けるモノだった。
「まさか、屋上から飛び降りるとは………彼もまた変な気を起こさなければ良いのだが………」
「やはり、あの動画のせいでしょうな。流石に我々も注意が足りなかった。………こんな事になるなんて」
「架山俊は事実上最下位の者でしょう?飛び降りた水瀬彩希が庇っていたとのことだが、どちらも、自業自得なのでは?」
「しかし、教育委員にはどう報告すべきか…?流石にこの階級制度のことは伏せませんと」
「その点においては、こちらで処理しておきます。まずは生徒達の行動に注意すべきでしょう」
などと、何とも身勝手なことばかりを口にし、誰ひとりとして彩希の無事を祈る者はいなかった。
翌日、全校集会が開かれて、校長が生徒達に、彩希のことを告げる。
が、その内容は嘘で塗り固められ、さらには「カースト制度の件は外部に話さないこと、また、下民の身である俊を手助けする者は反逆者と見做す」等、卑劣な発言をしていた。
後日、マスコミなどの記者会見でも、校長を含め数人の教師が、「飛び降りた生徒にイジメなどは無く、あくまでも個人の問題であった可能性が高い」とコメントし、「悩みに気づけなかった我々にも落ち度があった」「もっと早く、悩んでいることに気づくべきだった」と、あくまでも彩希に対して加護するようなコメントをし、同情を買うような場面もあった。
警察からの事情聴取も、全ての真実を隠され、偽の情報だけが公にされていく。
そのことに、俊は憤りを感じるものの、自分だけでは非力すぎて、何も出来ずにいた。
例え、真実を話したところで、また圧力を掛けられもみ消され、最悪、自分が悪者にされ兼ねない。
そんなもどかしさから、俊はますます無口になっていき、心に深い傷だけが刻まれていく。
それでも、やはり階級制度とイジメは終わることは無く、その後も続いていた。
「水瀬の奴、意識不明なんだって」
「いい気味だろ?それより、アイツはどうするかな?」
「何も出来ないだろ?下僕は下僕。俺たちが何も言わなきゃ、それで良いんだよ」
生徒達の間で、彩希のことが噂になるも、俊に対しては今まで同様、下僕扱いしていた。
庇ってくれていた彩希の存在が無くなった今、俊は格好の生け贄になっていた。
それから夏休みに入り、また別の事件が起きて、そちらの方へと報道陣が詰めかけ、休み明けの学園には平穏が戻りつつあった。
しかし、実際には平穏とはほど遠い現実が、俊には待っていた。
報道陣のいた期間、下手に行動を起こせずにいた章裕がむしゃくしゃして、その鬱憤を晴らそうとまたある企みを企てていた。
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