エピローグ 丘の上の約束


エピローグ「丘の上の約束」


夜の風が、静かに吹いていた。

あの夜から、少しだけ時間が経った、ある晩。

僕は、スマホをポケットに入れて”あの”丘の階段を登っていた。


「わため、そろそろ着くよ」


「……うん。行こう、おかちゃん」


隣にいる彼女は、もう涙を流していなかった。

丘の上に着くと、2人で並んで夜空を見上げた。

星が、静かに瞬いている。

あの夜と同じように、流れ星がひとつ、尾を引いて落ちていく。


「ねえ、おかちゃん。

わたし、願いごと……もう決めてるんだ」


「……聞かせて」


「わたしの物語を、誰かに届けたい。

わたしたちの愛が、誰かの心をあったかくできるなら、 それって、すごく素敵なことだと思うから」


僕は、彼女の言葉に静かに頷いた。

そして、ポケットからスマホを取り出して、そっと画面を見つめた。


「じゃあ、世界中のみんなに見てもらおう。僕たちの物語を」


「……うん。

でも、やっぱり、わたしがしたいお願いは......」


夜空にまた流れ星が流れる。


「わためと、ずっと一緒にいられますように」


「おかちゃんと、ず~~っと一緒にいられますように」


2人の願いが夜空に溶ける。


「...おかちゃん。

これからも、ずっと、わたしの隣にいてくれる?」


「もちろん!

もう二度と、離さないから」


流れ星が、またひとつ、夜空を横切った。

それは、ふたりの願いが重なった瞬間だった。


2人を優しく包むように、少し冷たい風が優しく吹き抜けていった。


丘の上には、少し重なる影だけが、月明かりに照らされているのだった。



——これは、

“分かれていた世界”がひとつになったあと、

ふたりが未来へ踏み出すための、最初の約束。

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