嫁に裏切られたので自殺したら今度の運命は嫁の妹と関わる事になっていた。その妹は前世を知るヤンデレに変わっていた...。

楽(がく)

第一章 ただ歪愛を

第1話 憎悪

嫁がただひたすらに憎い。

その為に俺は証拠写真と遺書を書いてから。

嫁の浮気を全てを書き記しこの世からサヨナラする事にした。

馬鹿嫁が死ねよ。

そう考えながら俺は列車に飛び込んだ...筈だった。



「先輩。起きてます?」


なんかそんな声がした。

俺は目を覚ましてから上を見る。

そこに何故か幼い顔の少女が居た。

というか増本花(ますもとはな)が居た。

俺をジッと見ている。


「...増本花?...なんで...」

「なんでってそりゃ決まっています。私が起こしに来たからです」

「起こしに来たって俺とお前ってそんな関係というか待て。俺は...え?」


俺はまさかの事に起き上がる。

それから鏡を見る。

そこにやつれた髭が伸びた顔は無い。

パジャマ姿の若い俺が居る。


10年ぐらい若返っている感じがする。

ちょ、ま。

何が起こっている?

俺は冷や汗を流す。


「先輩?」

「...花。...おかしいだろ」

「何がですか?」

「お前と俺は殆ど...接点が無い...」

「ありますよ?だって私と貴方は幼馴染ですよね?」

「それは確かに奴の姉妹としては...」

「先輩?何かおかしいですよ?」


怪しむ顔になる花。

いや待て本当に混乱している。

何故なら立ち位置が違う。

そう考えながら俺はゾッとした。

先ずこの少女と関りは殆ど幼い頃で途切れている。

最近は話もあまりしてない。

それが逆転している様な...そんな馬鹿な。

夢でも見ているのか?


「まあそうですね。混乱もしますよね」

「は?」

「この世界の立ち位置がお姉ちゃんと変わっていますから」

「...は?お前何を言っている...」

「私はお姉ちゃん。華菜(かな)と立ち位置が変わっています」

「お前何...」

「気が付きませんか?私は華菜と...立ち位置を変えたんですよ。それも先輩が好きですから」


その言葉に俺は更に寒気を感じてから「...じゃあその。俺が死んだ事も全部知っているのか?」と青ざめる。

すると花は「はい。全部遺書を見ました。...全部知ってますよ。華菜を死に追いやりますか?なんなら」と言い出す花。


「...それは...」

「それは、って先輩。それで良いんですか?甘くないですか?」

「...華菜が裏切った事も知っているんだな」

「知っています。浮気して先輩が死ななくちゃいけなかった事も。私は許しませんよ。あの人を絶対に」

「都合が良すぎる...なんで...そんな...」

「私は言いましたけど先輩が好きです。死んでほしくなかった。だから私はあの日。白い布が顔にかかっている先輩を見て決意しました。...お姉ちゃんを殺してやると」


そう言いながら花は俺に近づく。

俺はその顔に寒気を感じてから一歩後ろに下がる。

花はそれでも近付いて来た。

それから「とにかく私はお姉ちゃんに苦しんでほしいですね」と花は言い出した。

そして俺を見てくる。


「こんな事になるなら...初めから先輩を奪っておけば良かったです」

「お前俺が好きだから全てを巻き返したのか?」

「ですね。先輩が大好きです。この世界のお姉ちゃんはどんな思いか知りませんけど私と幸せになりましょうね。先輩」

「...!」


そして花は俺を抱きしめてきた。

それから花は俺を微笑みながら見上げてくる

冷酷な薄らな感じのまなざしをしている。

その姿に俺は顔を引き攣らせる。

花を引き剝がす。


「花。気持ちは分からんでもない。だけど...殺すとかは無しだ。ぶっ殺す前に痛めつけよう。お前が警察に捕まっちまうぞ」

「私は構いませんよ。今捕まろうと構いません。私は...あくまでお姉ちゃんを許す気は無いですので」

「...」


俺は「...」となりながら沈黙する。

そして顔を上げた。

「取り合えず考えが纏まるまで無しで良いか。俺も混乱していてな」と花を見る。

花はキョトンとしていたがやがて「分かりました」とニコッとした。


これは俺と花の。

究極の歪んだリベンジストーリーだ。

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