建物(悪役令嬢)編⑥ アンサー

「ガラスがたくさん作れる時代はルネサンスから」

「廊下(部屋に行くための通路)のあるお城は少なくとも16世紀以降」

「のちの建物に見られる尖塔(spire)はゴシック様式を踏まえたもの」


 という今まで調べてきた前提の情報をもとに、ワードを作りました。

 コメントおよび検索(AIも含めて)をかけると、「ゴシック様式」「バロック様式」が挙げられていますが、はたして。


 そもそも建築様式の時系列が国をまたいでいるためわかりづらいので、簡単に分けてみました。


 



古代

【ギリシア・ローマ様式】

論外。

ただし古典建築によく見られる左右対称のつくり、フルーティングされた柱やドームなどは他の建築様式に流用されており、悪役令嬢世界にもよく見られる。

パスタ(pasta)と呼ばれる廊下やシャンデリアのような照明器具もあったよう。


「フルーティング(fluting)」

柱に縦の溝が装飾されたもの。これを入れるとクラシカルで歴史を感じる気がする。




中世(5~15世紀)

【ビザンティン様式】4~15世紀

窓ガラス わからん。モザイク画ならある。

シャンデリア 多分木製とポリカンデラ

廊下 わからん

お城の尖塔 残っているものが教会しかない

お屋敷 以下略


「ポリカンデラ(polycandela)」

金属製。鎖で吊るされた平らな円形。石油ランプが使われた。



【ロマネスク様式】10~12世紀

窓ガラス ない

シャンデリア 多分木製とコロナ

廊下 わからん

お城の尖塔 ない

お屋敷 わからん

有名なお城 ロアーレ城


「ロマネスク様式」

由来は「ローマ」から。

教会としては石造りの厚い壁、小さな窓、円形アーチが特徴。ザ・中世という感じの重厚なお城や要塞がある。「ピサの斜塔」もロマネスク様式。


「コロナ(corona)」

この頃に王冠型のシャンデリアが登場。ろうそくを支えるプリケットがある。より大きなものはホイールシャンデリア(wheel chandeliers)とも。



【ゴシック様式】12~15世紀

窓ガラス 教会にステンドグラスが増える

シャンデリア 多分木製とコロナ

廊下 わからん

お城の尖塔 お城より教会の方が尖ってる

お屋敷 多分この時代までマナー・ハウス

有名なお城 ハイデルベルク城


「ゴシック様式」

ゴシック様式に関してはこちら (https://kakuyomu.jp/works/16818792438190188555/episodes/16818792438639336745 )も参照。

高い尖塔が印象的なのは、天国と交信するイメージらしい。ただし風でよく壊れている。

天井の軽量化が進んだことで天井が高くなり、「バラ窓」などの広い窓が見られるようになった。頂点だけが尖った尖頭アーチと、天井を支える肋骨(リブ)が特徴的。


「マナー・ハウス」

カントリー・ハウスの前身で、近世になると同一視されることも。荘園の家という意味。この頃は家と言うより要塞。

この頃はまだ、要塞じゃない巨大建築がなかった。


 ロマネスク様式・ゴシック様式は、一部それらしい要素は見られますが、やはり中世は、悪役令嬢モノの世界観ではないと思います。

「ゴシック」と言えば尖塔ですが、尖っているのは圧倒的教会。要塞に尖塔があっても風で倒れては問題がありますもんね。

 でも、結婚式とかで教会とかは出てきそう!



近世(16~18世紀)

【ルネサンス様式】15~17世紀

窓ガラス めっちゃ増える

シャンデリア 水晶製でめっちゃ光る

廊下 シュノンソー城にはある

お城の尖塔 ある

お屋敷 カントリーハウス登場

有名なお城 シュノンソー城、シャンボール城、アゼ=ル=リドー城など


「ルネサンス様式」

「再生」「復活」という意味。宗教というよりヒューマニズムの意識が強くなった。

ルネサンス様式についてはこちら(https://kakuyomu.jp/works/16818792438190188555/episodes/16818792438639336745)も参照。

その名の通りギリシア・ローマの古典的な装飾が復活した。天窓や連続した窓が見られるようになり、部屋が明るくなった。あと部屋数も増えた。


「シュノンソー城」

ゴシック様式の尖塔+ルネサンス様式。

全員が女城主のお城。攻め込まれにくさより住みやすさを重視したためか、廊下がある珍しい城。



【チューダー様式】15~16世紀

窓ガラス 大きくなる

シャンデリア 水晶製

廊下 登場? ロング・ギャラリーはある

お城の尖塔 ある

お屋敷 カントリー・ハウス登場

有名なお城 ソーンベリー城


「チューダー様式」

イギリスのチューダー時代からエリザベス朝までの建築。

離婚するために英国教会を作ったヘンリー8世、カトリックの修道院をぶっ壊して臣下に与えたのがカントリーハウスの始まりとなったよう。

また、アングロサクソン文化のハーフティンバー様式が大流行した。ハーフティンバー様式に関してはこちら(https://kakuyomu.jp/works/16818792438190188555/episodes/16818792438202872855)。


「corridor(廊下)」

イギリス英語。「etymonline」によると16世紀末に登場。語源の「correre」は「走る」を意味する。廊下は走るな。


 エリザベス1世の話を読んでいると、本当にこのダメ親父(ヘンリー8世)のせいで国がハチャメチャになってるな……と思います。ニセ通貨の話本当にヒドイ。



【バロック様式】16~18世紀

窓ガラス めっちゃある

シャンデリア 水晶とガラスの組み合わせ

廊下 ロング・ギャラリーならある

お城の尖塔 ヴォー・ル・ヴィコント城ならある、ヴェルサイユにはない

お屋敷 登場

有名なお城 ヴェルサイユ宮殿、ヴォー・ル・ヴィコント城

有名な屋敷 チャッツワースハウス


「バロック様式」

「歪んだ真珠」という意味で有名だが、いまいち分からない。均衡のとれたルネサンスからあえて逸脱するような表現をしたかったらしい。

とにかく金箔とガラスで装飾された豪華なイメージ。


「ロココ様式」

バロック様式からさらに優美さや豪華さをパワーアップさせたもの。マリーアントワネットの時代はまさにロココ。家具などに曲線が多い。


「エリザベサン・ジャコビアン様式」

エリザベス1世とジェームズ1世の時代から。16~17世紀。

別名イギリス・バロック様式。贅を尽くした豪邸(マンションmansion)と左右対称的になったカントリーハウスが特徴的。

ガラスが手に入りやすくなったため、校舎のように窓ガラスが横三列にずらりと並んでいる。


「ブレナム宮殿」

イギリス・バロック様式(エリザベサン・ジャコビアン)のカントリーハウス。

真ん中が凹んでおり、両端にある翼棟(ウイング)が飛び出したシンメトリーな建物。

悪役令嬢が住みそうなカントリーハウス。柱廊がある。


 悪役令嬢の時代として可能性があるのは、やはり近世からでしょうか。

 ちなみに「ヴェルサイユ宮殿 廊下がない」で検索したら、いくつかヒットしました。トイレだけじゃなく廊下もなかったんですね。



近代(18~20世紀)

【新古典主義建築】18世紀後半~19世紀

窓ガラス ある

シャンデリア 真鍮製・鉛ガラス登場

廊下 ある

お城の尖塔 ない

お屋敷 対象的なカントリーハウス

有名なお城 バッキンガム宮殿


「新古典主義建築」

ギリシア・ローマ建築をリバイバルしたルネサンスのリバイバル「ネオ・ルネッサンス(ルネサンス・リバイバル)」。パラーディオ主義がさかんに。くわしくはこちら(https://kakuyomu.jp/works/16818792438190188555/episodes/16818792438639336745)を参照。

「ジョージアン様式」「リージェンシー様式(スタッコ仕上げのテラスハウスが有名)」などがあてはまる。


「Hallway(廊下)」

アメリカ英語。「Hallway history」で検索した結果、この言葉ができたのは19世紀なんだとか。「ホール+道」の造語らしい。



【歴史主義建築】(19~20世紀)

窓ガラス 板ガラス発明

シャンデリア 形がすごく複雑になる

廊下 ある

お城の尖塔 ゴシックな尖塔が人気

お屋敷 色んな様式がくっついて、非対称な建物が増える

有名なお城 バルモラル城、ノイシュヴァンシュタイン城


「歴史主義建築」

「ヴィクトリアン様式」などが当てはまる。こちら(https://kakuyomu.jp/works/16818792438190188555/episodes/16818792438639336745)も参照。

「ネオ・ゴシック(ゴシック・リバイバル)」「ネオ・バロック(バロック・リバイバル)」などかつての様式を復活させたり、これまでの建築様式をお子様ランチのように盛り合わせた建築様式。


「ノイシュヴァンシュタイン城」

かの有名なシンデレラ城のモデル。ロマネスク+ゴシック+古典様式の詰め合わせセット。




 結論:多分悪役令嬢モノのお城は、ノイシュヴァンシュタイン城というよりシンデレラ城。


 うん、わかってた。ディズニーの中でも代表されるシンデレラ城のイメージだって。ここに『ベルばら』を付け加えたら日本人が思い浮かべる舞踏会です。

 シンデレラ城と検索すると、AIが「ゴシック様式」と答えていました。悪役令嬢に中世のイメージが生まれたのは、ノイシュヴァンシュタイン城のようなゴシック様式が復活したからかもしれないですね。

 というか多くのお城は後で大幅に建築し直されているから、建てた当時の様式とは全く違ったりして。今回、現存しているお城は立て直された時代で割り当てました。わかる範囲でですが。


 ワードからとしては、悪役令嬢の時代は近代のルネサンスから歴史主義建築まで、ということに。

 碓氷シモン様のバロック様式を正解とさせていただきます。「ネオ・バロック」の「迎賓館赤坂離宮」……とっても気になりますね。やっぱドンピシャだと歴史主義建築かな。

 


 こうして見ると、中世のお城やマナーハウスは戦争が多かったから無骨なイメージが強く、攻められる心配が減ったから装飾や廊下が出来たのかなと思います。

 悪役令嬢の世界は割と平和な世界ということですね。近代化が進むにつれて、起きる戦争の被害は格段に上がっていそうですが……。


 私が悪役令嬢モノを書くとしたら、エリザベサン・ジャコビアン様式のカントリーハウスを登場させたいです。どう表現しようか、腕がなります。




【今回の話に役に立ちそうな本】

アルメル・ド・ヴィム(著)『ロワールの城』アルトー・フレール出版社

(家に眠っていた本。翻訳家の名前も、一体いつ出版されたかも書いてないです。シュノンソー城などのフランスのお城が紹介されています)


澤井聖一『建築知識2021年12月 洋風住宅・洋館の用語図鑑』エクスナレッジ社

(建築様式の歴史とカントリー・ハウスの各部位の名前はこれにくわしく書いてあります)


マシュー・ライス(著)、岡本由香子(翻訳)、中島智章(監修)『英国教会の解剖図鑑』エクスナレッジ

(尖塔がついた教会がいっぱいです。部位の名前もついています)


フィリップ・ウィルキンソン、鈴木博之『知のビジュアル百科 世界の建物事典』(あすなろ書房)

(ギリシア・ローマの柱やリブなどの説明がわかりやすいです)



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