建物(悪役令嬢)編⑤ アンサー

 まず、婚約破棄するシーンでよく使われる、あの部屋が何なのかを当たってみました。

『図説英国社交界ガイド エチケット・ブックに見る19世紀英国レディの生活』によりますと、舞踏会は主に「ホール」「サルーン」「ロングギャラリー」などで行われたようです。



「大広間(Great hall)、ホール」

主にパーティーや食事が行われる場所。その多くは玄関ホールの大階段の奥にある。

オックスフォード大学の「クライスト・チャーチ」にあるホール(食堂)が有名。



「グレート・チャンバー(Great chamber)」

chamberとは公式な間、謁見室のこと。

初期は生活の場であったが、多様な部屋が生まれたあとは応接間となり、パーティーの場所として使われた。

そのうち玄関ホールとなり、家族のみでとる食堂室が別にできたらしい。



「玄関ホール(entrance hall)」

玄関にあるホール。大階段がある。

大広間の代わりとして使われることも。


『名探偵テスとミナ』(ポーラ・ハリソン(著)、村上利佳(翻訳))と言う児童書で、まず玄関ホールでダンスがあって、その後2階にあるホールで音楽会が行われていたような気がします(手元に本がない)。



「サルーン(Saloon)」

正餐会や舞踏会の会場に使われたとのこと。

Wikipedia「カントリー・ハウス」では「広間」と訳されているが、Wikipedia「Saloon」ではドローイングルーム(談話室などの機能を持つ)を指している。わからん。

フランス語で「サロン」のこと。そのうち社交会、展覧会、文化人の交流の場を意味した。



「ドローイングルーム(drawing room)」

応接間。元々はパーティーから引き上げて(drawing)休憩する客間だったが、そのうち婦人たちのお茶会に使われた。



「ロング・ギャラリー(long gallery)」

長広場。天井が高く、細長い部屋。その多くはどちらかの壁に窓がある。絵画が掛けられることも多く、「画廊」とも訳される。部屋としても通路としても使える。

ヴィクトリア朝時代、バートン・コンスタブル・ホールでは、ここで多くのボール・パーティーが開かれたという(「BURTON CONSTABLE HALL & GROUNDS」より)。


 イギリスでは廊下(corridor)という通路専用の概念は16世紀から導入されたらしく(あるいはまだなかった?)、その前は部屋から部屋へ移動していたようです。コネクティングルームってやつかな?



「音楽室」「ボール・ルーム」

音楽やダンス専用の部屋もあった。



 この部屋はお城だけでなく、貴族が住むカントリー・ハウスにもありました。

 一番有り得そうなのはやはり大広間か、玄関ホールですかね。冒頭で大体階段が描かれている気がします。

 また、「ダンス・パーティー」と「ボール・パーティー(舞踏会)」は規模が違い、『図説英国社交界ガイド エチケット・ブックに見る19世紀英国レディの生活』によると、「ダンス・パーティー」だと80~200名、「ボール・パーティー」は200~500名になるそうです(p92より)。すごいですね。人の顔と名前が覚えられない私は絶対に参加できません。




 お城と言ったら舞踏会、舞踏会と言ったらマリー・アントワネット、マリー・アントワネットと言ったらヴェルサイユ宮殿。

 というわけで、「CHÂTEAU DE VERSAILLES(ヴェルサイユ宮殿公式ページ)」さんを、――と思ったのですが、翻訳アプリ使っても英語がよく分からなかったので、日本語で書かれた「Amazing TRIP」さんと見比べて参考にし、一体どこでパーティーが開かれていたのかを調べてみました。

 オスカルやマリーたちはどこでパーティーをしていたんでしょうか。



「鏡の回廊」

基本的に謁見や儀式のための部屋だが、稀に王様が舞踏会やゲーム、レセプションなどを行っていたらしい。

公式行事がある時は、「アポロンの間」から玉座を持ってきた。


 ヴェルサイユ宮殿と言ったら鏡の間。

 金ピカな壁や天井にシャンデリアがキラキラ~としていて、マジで宮殿! って感じです(語彙力)。



「豊穣の間」

ステートルームの一つ。イブニングでワインなどの飲み物がビュフェスタイルであった様。


 ちなみにビュッフェで食べ物を置いているあの台は、フランス語だとそのままビュッフェ(buffet)、英語だとサイドボード(sideboard)と言うらしいです。



「ヴィーナスの間」

ステートルームの一つ。

イブニングには軽食をとる場として利用され、フルーツやマジパン(マルチパン)などのスイーツが置かれていたらしい。


 マジパンが置かれていたんですね。

 マジパン、ケーキの上に乗せる食べられるお人形のイメージでした。



「ディアナの間」

ステートルームの一つ。ルイ14世がビリヤード好きだったので、イブニングにはビリヤードに使われていた。わざわざ観客席は2段になっていたとか。


 ビリヤード、なんでこんなに人気なんでしょう。明治以降の建物にも必ずあるビリヤード室。



「マルスの間」

ステートルームの一つ。元々は「衛兵の間」だった。その後音楽会、舞踏会、賭博の場所として使われる。

昼間は博物館みたいな場所だったらしい。


 賭博が出てきましたよ。マリーとポリニャック夫人が賭博したのもここだったのでしょうか。



「アポロンの間」

ステートルームの一つ。玉座があった広間。イブニングではダンスや音楽を楽しむ場として利用された。



 割と色んなところでパーティー開いているんだな……。お城ともなれば、ホールがたくさんあるので、あちこちを使ってパーティーが出来るのでしょうね。

 ちなみにステートルーム(State room)とは「グレート・チャンバー」の派生で、国家のお偉いさんをもてなす客室のことを指すようです。だからState(国家)なのか。

 ということは、他の国の皇太子がやってくるような場所では、悪役令嬢が断罪されるのは「ステートルーム」が正しいのかもしれない?


 ……いやもう、大広間でいいか! コメントの皆さんも「大広間」って言ってるし!

 碓氷シモン様、maru様、時輪めぐる様、ありがとうございます! 大広間にいたします!



 ところで、悪役令嬢たちの時代は、一体どのへんがモデルになるのでしょう。

 異世界ファンタジー=中世ヨーロッパのイメージがありますが、金とシャンデリアでキラキラなバロック建築の代表格ヴェルサイユ宮殿は近世にあたりますし、板ガラスが大量に作られたヴィクトリア朝だと近代です。プリンス系のイメージ大体近代なのに、なんで中世だと言われるようになったんでしょうね?


 ――というわけで悪役令嬢が住む建物から、どの建築様式がモデルになっているのか調べてみます。



【今回の話に役に立ちそうな本】

村上リコ『図説英国社交界ガイド エチケット・ブックに見る19世紀英国レディの生活』ふくろうの本

(ヴィクトリア朝に関して、村上リコ先生とふくろうの本は他にもオススメ)

トレヴァー・ヨーク(著)、村上リコ(訳)『図説イングランドのお屋敷~カントリー・ハウス~』マール社

(ホールやグレート・チェンバー、サルーン、ロングギャラリーなど、より詳しく部屋の説明が書かれています!)


澤井聖一『建築知識2021年12月 洋風住宅・洋館の用語図鑑』エクスナレッジ社

森薫・村上リコ『エマ ヴィクトリアンガイド』エンターブレイン

(カントリーハウスの見取り図があります)



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