建物編④ アンサー
「テラスハウス」
玄関に階段とテラスが付けられたためそう呼ばれた。ローハウスとも。
縦積みに住宅が並ぶアパートメントとは違い、戸建てが横に連なった共有住宅。特に高さやデザインが統一され、境界壁(party wall)を共有し繋がった住宅をさす。
大体2~3階建てで、それぞれに庭と玄関がある。一階に商店があることも。
16世紀頃から見られる建築だが、産業革命(18-19世紀)以降は労働者階級向けの住宅として大量に建築された。
ロンドンだとリージェンツ・パーク(王立公園)周りにある、スタッコ塗りの白いテラスハウスが有名。
現在、『リンデル王室』赤の守護者編では、魔法陣から飛ばされて見つけたテラスハウスがアルス王子の拠点となり、労働者階級の自警団「赤の守護者」と交流しています。ぜひ。
「テラスハウス」は『元聖女のファーメンテーション』を書く時に調べたことがあったので、すぐに出てきました。
と言っても、以前紹介したアムステルダムの運河沿いにある建物は各々特徴的な破風を持っているため、壁やデザインを共有するテラスハウスとは違うのですが。
Wikipedia「Rijtjeshuis」によると、「700万戸あるうち400万戸がテラスハウス」となっているため、計算するとオランダの全住宅の57%がテラスハウスになります。半分以上がテラスハウス。
同じくイギリスでも大人気のテラスハウスですが、Wikipedia「Terraced houses in the United Kingdom」の「21st century」の欄によると、象徴されるヴィクトリアン時代の様式より、その前の「ジョージアン様式(18世紀~19世紀初頭)」の方が人気のよう。
「ジョージアン様式」
1714~1811年。ジョージ3世の時代からつけられている。
シンメトリー(左右対称)とギリシャ神殿風な古典装飾が特徴。「パラーディオ主義」に影響された建築。また、ジョージアン様式のテラスハウスには使用人たちが働く地下があった。
「パラーディオ様式(Palladian architecture)」
ルネサンス様式の一つ。建築家の名前が由来。
①四方どこからも同じに見える建物(つまり玄関が4つある)
②ギリシャ神殿のような「ペディメント」と「ポルティコ」(この二つは「建物編② アンサー」 https://kakuyomu.jp/works/16818792438190188555/episodes/16818792438398663962 にて)がある
③窓を多用(ルネサンスからたくさん窓がつけられた)
大体ヨーロッパの建築はパラーディオ様式に影響を受けている。
この頃、特にギリシャ神殿の装飾が流行ったことから、「新古典主義建築」とか「アダム様式」などが生まれるそうなんですが、話が長くなりそうなのでカットします。
一方、『リンデル王室』のモデルとなったヴィクトリア朝は左右非対称で、教会を思わせるゴシック様式が流行っていたそう。
「ヴィクトリアン様式」
女王ヴィクトリアの名前から。1837~1901年。
アシメントリーな外観と、キリスト教の影響を受けて中世のゴシック様式が復活。シンメトリーで古典ギリシャの影響を受けるジョージアンとは対照的。
板ガラスが普及されたのと、窓税が撤廃されたので、建物にめっちゃ窓が増えたらしい。
「ゴシック様式」
由来はゴート族から。簡単に言うと教会風。
直線的で、ひたすら高い尖頭(spire)などが特徴的。ロマネスク様式の頃は無理だったが、ゴシック様式では大きな窓がつけられた。
産業革命後、低賃金労働者向けに作られたテラスハウスの一つ、「バック・トゥ・バック住宅」が増えるようになりました。
「バック・トゥ・バック住宅」
テラスハウスの一つだが、こちらは背中合わせに隣家と繋がっていることからつけられている。
しかしこの建物は、圧倒的に不衛生なつくりでした。
そこで1875年、「公衆衛生法」が制定されます。
主に下水処理、排水などが定められ、テラスハウスにも水道が引かれ、水洗トイレやお風呂が出来ました。この頃に、テラスハウスから地下室がなくなりました。
この法律により、公衆衛生は爆上がりしたそうです(『建築知識2021年12月 洋風住宅・洋館の用語図鑑』p47参考)。
この頃ウィリアム・モリスという人が「アーツ・アンド・クラフツ」運動(手芸品やデザインの地位向上などをめざした)を起こすのですが、これも長くなるので以下省略。
簡単に言うとウィリアム・モリスが作った壁紙のデザインがこの時期大流行しました。現在のイギリスの部屋って言ったらこの壁紙。
テラスハウスの一種に「タウンハウス」があるのですが、イギリスにおけるタウンハウスは貴族がシーズン中などに利用するロンドンに建てた集合住宅のことです。
「タウンハウス(イギリス)」
⇆対義語「カントリーハウス」。
社交界シーズンなどの拠点地として利用された、主にロンドンにある貴族向けのテラスハウス。
1666年にロンドン大火が起き、市街の大半(資料によっては8割)が消失。
大火の後、19世紀までロンドンの貴族たちはガンガン建築しました。それが今残っているタウンハウスのようです。
大火の後は木造建築が禁止され、建物の高さや階数が定められるようになりました。建築基準法ってやつですね。
テラスハウス、日本ではあまり見ないですがあるのでしょうか。
テラスハウスというと、あのリアルタイム恋愛番組を思い出します。
というわけで、オオオカ エピ様、時輪めぐる様、田鶴さま、薄井氷さま、おめでとうございます!
とここで、オオオカ エピ様から「アルトバウ」、碓氷シモン様から「コーポラティブハウス」という回答をいただいたので、調べてみました。
「アルトバウ(Altbau)」
ドイツ語で「古い建物」。⇆対義語Neubau
定義としては産業革命~第二次世界大戦前に建てられたものをさす。
「コーポラティブハウス」
入居希望者が組合をつくり、事業主となって建設する集合住宅のこと。
建築様式というよりは概念でしょうか。写真を見ると、テラスハウスに似た建物もありました。
というわけでPart.2。
後者は、「暖炉 飾り棚」で検索しました。
一発で出ました。
でも日本語版Wikipediaにはなかったので、英語版Wikipedia「Fireplace mantel」で検索。
「マントルピース(Fireplace mantel)」
壁付き暖炉の飾り枠。
「オーバーマントル」
暖炉にある壁にまで装飾が施されたもの。主に暖炉の上に絵画や棚、鏡がかけられているイメージ。
「マントルピース」や「オーバーマントル」は富の象徴だったようです。というのも労働者にとって暖炉は暖房だけでなく厨房でもありました。装飾より実用性が求められるのは考えてみたら当たり前ですね。
また石炭が大変多く消費されるので、個人部屋まで暖炉があるのはチョー裕福なお家だったそうな。考えてみたら以下略。
マントルピースには、当時の憧れやステータスが詰め込まれていたのでしょうね。
というわけで、オオオカ エピ様、時輪めぐる様、幸まる様、碓氷シモン様、薄井氷様、正解です!
なおWikipedia「Fireplace mantel」の関連項目によると、マントルピースの上には、さまざまなものが置かれていたそうです。
「マントルクロック(Mantel clock)」
マントルピースの上に置かれた、家庭用時計。
「スタッフォードシャー・ドッグ(Staffordshire dog figurine)」
マントルピースの上に置かれた、陶器の置物。二体で一対の番犬。日本の「犬箱」に似ているかも。
ヴィクトリア女王が飼っていた「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル」がモデルだが、色々あるよう。
ヴィクトリア朝を象徴するテラスハウスとマントルピース。
多分掘り下げたらもっと出てくると思うのですが、今回はここまで。
雷師ヒロ様、お題を提供してくださりありがとうございました!
まだまだお題募集しているので、皆さんよろしくお願いいたします!
【今回の話に役に立ちそうな本】
澤井聖一『建築知識2021年12月 洋風住宅・洋館の用語図鑑』エクスナレッジ社
(大体これを読めば今回の話がわかる)
森薫『エマ』エンターブレイン(全10巻)
(名作。ヴィクトリア朝のことについて知るならこの漫画)
森薫・村上リコ『エマ ヴィクトリアンガイド』エンターブレイン
(『エマ』に登場するヴィクトリア朝についての説明が書いてあります。あと村上リコ先生はヴィクトリア朝の本を何冊も書いているので作者で調べるのもオススメです)
ジェームズ・ストートン著・フリッツ・フォン・デル・シュレンブルク写真・ダコスタ吉村花子翻訳『英国の邸宅遺産 : ロンドンの華麗なる館』河出書房新社
(タウンハウスの内装などが収められているらしい。まだ読んでない)
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