第2話
上着を脱いで、下着の上から少し汗ばんだシャツ一枚の姿になった彼女は、湿ったシャツの下に柔らかな膨らみとしっとりとしながら柔らかく艶のある肌の質感を意識してしまい、指で触れることをためらう。
徐々に高まる火照っていくような熱から意識をそらすように手の甲で汗の溜まりを拭う。衣服と共に用意された乾いたタオルで体を拭いて全身の湿り気も除く。
手に向かった他の意識で余った意識が向けられたのは、注文した男女兼用のトラディショナルスタイルに近いブレザーとパンツスタイルの服と一緒にベッドの上に並べられた、セットになった統一デザインのブラとショーツだった。
「着替えは用意したって言われたって……」
能力の暴走を抑えるためとはいえ、男として生まれ男として育った少年にとって、着替えるだけの作業すら、それだけで刺激が強かった。
遺伝上同じ部位であるはずの股ぐらの排泄口の上側に違和感を感じて、身につけた張り付くようなショーツに手をかけようとしたところ、背後から熱を持った何者かに脇から腕を回されて上向きに胸をまさぐられる。
「けっこう、おっぱいあるな」
「ぅひゃん、っ…………ぎゃああ!」
殴った。誰がそれをやったのか理解しているのに恐怖を感じで全身全霊の怒りをもって目を狙ってその人物を殴った。
その人物はまるで体感も揺さぶられることもなく、逆に殴った彼女の方がまるで揺るがない塊を殴った反動で転がってベッドの脚に頭をぶつけて涙目になる。
「ぐっ……っぉぉ痛い。クラリッサ、貴様よくもぉ」
「ふぇ、ごめん。テレガートンがそんなに怒るとは思ってなくて……」
「勝手に部屋にはいらないでくださいよ!!」
怒鳴りながらテレガートンと呼ばれた女体化少年はクラリッサと読んだ彼女を睨む。
「ごめんごめん、一応護衛も仕事だからさ、まさか漏らしてるとは思ってなくて」
「へ……? あっ……」
指摘された染みになった恥にやっと気づき、顔を赤く染めプルプルと小刻みに肩を震わせる。
「死ねぇい!」
そばにあった枕を掴んで投げて頭にぶつからずあらぬ方向へ飛んでいく。
「はは、肉体の感覚の変化を舐めていたのかな?」
キツく、睨もうとしたら、
「あ、その、ごめん」
目頭が熱くその目頭が熱くなるとそれをみたクラリッサは申し訳無さそうに指で拭う。
「ぜぇ、はぁ、僕も……ごめん。びっくりして」
「済まない。冗談のつもりだった。反省する」
申し訳なく感じていそいそと振り返って部屋を出る前に、上着の裾を引っ張って引き止められる。
「待って! その……」
「なんだ」
「…………つけて」
「は?」
「ブラを……つけるの、手伝って」
顔を真っ赤に染めて堪えるようにうつむく少女の姿に、そこまで深刻に怒っているわけじゃないことを察して手を貸そうと肩と背中を押して背中を向けさせる。
「あぁ、うん。できないの?」
「やっぱ、いい。じぶんでやる!」
しかし、やはり恥ずかしさが勝ったらしく、断ったことにクラリッサは可愛らしさを感じてしまった。
「そう?」
「出てって」
首をかしげ問いかけるように微笑むがやはり必要ないらしい。テレガートンはクラリッサの背中を押して退室を促す。
「部屋を出てって」
「今は女の子同士だからいいだろう? 気にしなくてもいいだろう」
「男同士でも裸は見せ合わないよ!」
「そうなの?」
「え、いや……うーん、そういえばあんまり友達いなかったし他の野郎同士がどうなのかはよくわからないような……?」
そんなわけがないと分かっていながら、あえて問われると正確なことを何も言えないことに気づいて首をかしげ顎に指を当てて考えていると、軽快な電子音がポーンポーンと7回短く鳴って何かを知らせる。
「これ、なんのベルだ!? 敵か!」
「お客様っ、ただの呼び鈴だよ! 応対するから着替えが終わったら貴方も降りてきてね」
「わかっ……もう、いないか」
自分が呼び鈴の音すら理解できない世間知らずである事実に愕然とし、返事したその瞬間には既にいなく鳴っていたクラリッサの姿が無いことにまた困惑する。
携帯端末でインターネットのブックマークしたページを開いて前にしっかり確認していなかったページを見る。
その内容を参考にして体の側面で留めたブラジャーを正しい位置にずらすやり方を試して、あんなに苦労していた作業が簡単に成功したことに感動を覚える。
「回せばいいって言ってたのはこういうことなのか……! ブラジャーはこれでいいとして、パンツは……あぁ……」
着替えの入ったカバンから予備の下着が入った包みを開いてブラジャーとセットのショーツではなくボクサータイプのパンツを履くことを選択する。
「大変大変! 着替えは終わったか!? 大変だ! すぐに降りてくれ」
「うん。どう?」
「ブラはともかく、ショーツはそれでいいのか?」
「うっ、それは何も言わないでくれ」
セキュリティ上、一応隠している身分や正体を疑われないためには素直にブラジャーとセットのショーツを選ぶことが最善であるはずなのだ。それでも、ただ気安い意地悪で指摘しただけのクラリッサがテレガートンの照れた反応を見ても楽しいだけだ。
「それはそもかく、結構なビッグネームが急にきたから、相応の対応をしなくちゃ……あぁ、大変だ。あいつが来るにしても私だけなら友人と会ったで話が終わるのに、立場のある相手に公式に会ったりする場所なんかじゃ、いま、お手伝いさんが秘書の方と一緒に支度しているから、こっちの服に着替え直して」
「ビッグネームって誰がきたんだよ」
「
「技術保全継承機関の実動隊のエースじゃないか!」
「いまからでも正装に……」
「あ、ちょっ、一人で着替えられ」
「ごめん、時間かかりずぎるから練習は後でして」
そう言って、強引にカバンとは別にクローゼットに用意していたテレガートンの為に新調されたレディーススーツの包装を解いていそいそと着付けを始める。
「あー、れー! ちょ、本当に!? ひゃっ」
「変な声出さないで、今はふざけている場合じゃないんだ」
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