盆香
Rie
― 盆宵に結ぶ影 ―
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わたくしに 会いに来るには
たぶん いけない道を 通られたのでしょう
けれど お顔を見てしまえば
それで どうでもよくなってしまいます
盆提灯が ゆらめく夜は
過去も 名前も 影になって
ふたりで 同じ匂いを まとえるのですね
灯籠の火が 照らすたび
ああ、やはり お綺麗なかた……
指も 舌も 覚えてしまっているのです
“また来年”なんて――
おっしゃらないでくださいませ
わたくし お迎えに行ってしまいそうです
死装束を隠してでも
暑さのせいにして 脱いだ浴衣
汗ではないのです この熱は
この身体の奥のほうで
ずっと 待っていたのです
ふれて、
帰らないで、
いけないと わかっていても
どうしても そう願ってしまうのは
今夜が お盆だからなのでしょうか
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盆香 Rie @riyeandtea
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