第3話 初めての異常

「しっかし、この館広いなぁー!あ、そうだ、美沙の他にも、館に誰かいるのか?」


そう美沙に問いかけたが、美沙は少し悲しそうにこう言った。


「それが、わからないの…気配も音もするのに、見えないの…」


(見えない…?これもバグか…?)


(そうだね!これも異常バグの1つ!しかも、このエリアに、"核"はいるよ。)


「だったら何処にあるのか教えてくれよぉ」


(もー、言ったでしょ?せっかくなら謎解き頑張って!)


「ぶーぶー。ヒントぐらいよこせー」


「よ、よこせー…?」


(しょーがないなぁ。まぁ、1つヒントを出すとすれば、館の"地下牢"に行ってみなよ!)


「地下牢…行ってみるか…!って、美沙、どした?」


「地下牢…」


一言ぽつりとそう言い放った美沙の顔は、寂しげだった。


地下牢を探して歩いていると、光っている球が転がっていたのを見つけた。


光っているとはいえ、とても微力な光だ。力が失われているのがよく分かる。


そして、触ろうとすると…


バチッ!


「いって!これ、電気帯びてんのかよ…」


「大丈夫!?おにいちゃん!?私が触っても、何にもならなかったのに…」


「えー?じゃあ、プレイヤ…他のとこから来た奴は触れないってことか…?いや…もしかしてこれか…?」


「案内人、ちょっとバンド外すぞ。」


俺はそう言って、腕につけていたバンドを外し、再度球に触れた。


「おお、やっぱりな。よそからきたってだけで攻撃はしない。ただ、刺激するから攻撃してくるんだな。なるほどなるほど…」


「なんで、そんなに触ろうとするの?」


「んぇ?ただの知的好奇心だけど?」


「ちて…?」


「あー、まだ早かったな。まぁ、色んなことに興味があるからだよ。」


「ふーん。」


(聞いといてなんじゃその反応は…)


「とりあえず地下牢探すぞ!」


「う、うん!」


〜地下牢前〜


「んー。」


なぜこんなにも俺が唸っているかと言うと…


「…開かないね…」


そう、地下牢前の扉が開かないのだ。


どれだけ力を込めて開けようとしても、開かない。


「ただ、鍵穴とかもないよな?」


「うん、この前までちゃんと開くようになってたし…あ、」


「なんだよ?」


「そういえば、あの光る球も、この前まで無かった!」


「なんか関連してそうだな…よし!行くぞ!」


〜光る球の部屋〜


「おけ、ベルト外して…」


(ちょぉぉっとまったぁぁぁ!)


「うぉっ!何だようるせえな…」


(ベルト外しすぎても、ペナルティあるから!)


「はぁー?まじかよぉぉ…ってか、ペナルティってどんなのよ」


(一生ここで暮らすことになるよ)


「まぁぁじかよぉぉぉ…ん?じゃあよ、ベルトつけてない方の手で待つとどうなるんだ?」


そして、球を持った…が、電気が流れることはなかった…とりあえず成功だ。


「よっしゃ!じゃーこれ持ってくぞ!」


「それ…私が持った方が…」


「…あ。」


(バカだね〜)


〜地下牢前〜


元はとりあえず美沙は危ないので部屋に置いていき、地下牢の前まで足を運んだ。


「とりあえず地下牢前まで来たけど…お?」


「うわぁ!ひ、光った!」


ゴゴゴゴ…


「ひ、開いた!」


「やったっ!」


(なかなかやるねぇ〜)


〜地下牢〜


「おぉ、鉄格子なんか作って…どんな凶悪犯か…な…」


「おどれ何勝手に儂の陣地入っとんじゃ…殺られてぇのか…?」


「ヤクザいるんだけど…それより…ムクロって喋んのぉぉ!?」


(普通は喋んないけど、異常バグだからねー。そんな時もあるよ)


「とりあえずヤクザさん。一回戦い申し込んでいいすか。」


「儂ぁヤクザさんやない。れっきとした龍牙っちゅー名前があんねん」


「龍牙…さん…」


「んで…一戦のことやったなぁ…まぁ、何秒持つか…気になるところやな…」


シュ!


刹那、龍牙の拳は元の頬をかする。


ただ、そこらのかすり傷とは訳が違う。


その拳による傷は、"かする"というよりも"切れる"と表現すべきほどだった。


「ッ!」


ドゴッ!


それに対抗しようと、元も拳を固め、龍牙の顔めがけて放った。


「やるやないかあんちゃん…名前ェ…聞かせてくれや」


「俺は…元…水戸元だ!」


「そうか…じゃ、また戦うのを、楽しみにしてるぞ…」


「…え?」


ドゴォッ!


ドサッ


「ガハッ」


「は、はじめおにいちゃん…!」


「…」


その時の優しい龍牙の目の先には、美沙がいた気がした。


「っは!」


「やっとおきた!」


「…何時間くらい寝てた?」


「…わかんない…」


「っはは!そっか。わかんねぇか!」


(龍牙…あのムクロ…かなり…いや…死ぬほど強かったな…よし!)


「俺は!あいつを!龍牙を倒すために!修行するぞー!」


「え?」


「まずは筋トレ!1、2、3…」


「腕立て始めちゃった…」


〜2時間後〜


「うし、筋トレはこんなもんにしといて、次は瞬発力のトレーニング!案内人!いい練習台ないか?」


(すごいね…2時間も筋トレするなんて…美沙ちゃん寝ちゃってるよ?)


「あ、ほんとだ…」


「zzz…」


(ま、龍牙に何度も挑むしかないねー…あ、)


「あ?他にあるのか?」


(うん。あったわ。他にもね、ムクロが核の異常バグがこのエリアにあるのさ。場所はね、玉座!)


「は?玄関の先の?そこならもう行ったぞ?」


(最後まで聞いて!1回玉座に座ると、ナイトバグ《使命を失いし者》が大量に出てくるよ!しかも、普通のムクロより早いから、瞬発力鍛えるのにもってこい!)


「おぉ!ナイス案内!今日はちゃんと案内人してるじゃねーか!」


(…)


「スンマセンシタ」


〜玉座〜


「せっかくならカッコよく座りたいなー」


そうして俺は、玉座に足を組み、腕を組んだ状態で座った。


ドドドド…


「お、きたきたー!」


スッ…


「?」


(何かが起きた。とんでもない速さで。だが、いったい何が…)


そう思い、頬に手を当て、その手を見てみると、血。


「は?」


(あっちゃー。まさかその構えで座るとはね…アイツは、ナイトバグの上位存在。名前は無いけどね。で、今見た通り、クソ早いから、アーメン。)


「助けろよ!!」


(んー、無理かも☆)


「ざけんな!!!」


ガゴン


「か、構えた!!」


 スッ…!

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