★おまけ①

丈瑠と志津香以外の周りの反応集①



 ◆学校の昼休みにて――




「あっ、いたいた。丈瑠!」


 ある日の昼休み。

 授業が終了して、丈瑠が使っていたノートや教科書を片付けていると、別のクラスから志津香がやって来た。

 その手にはスクールバッグが握られていて、丈瑠の姿を見つけた途端、彼女はパタパタと走ってきて、彼に声を掛けたのだ。


「ん、志津香か。どうしたんだよ、急に?」


「どうしたも何も、これからお昼でしょ。だから、あんたを誘いに来たんじゃない」


「……そんな約束してたっけ?」


「別にしてないけど……けど、いいじゃない。それに……ちょっと、相談というか……」


「相談って、何の?」


「ほら、なんていうか……(モテる為の)作戦会議をしておきたくて」


「……あぁ、なるほど」


 志津香が何を言いたいのか、口にしなくともそれを察した丈瑠。


「了解。それじゃあ、一緒に食べるか。えっと、志津香は弁当だよな?」


「うん、そうね」


「で、どこで食べる?」


「食べるだけなら、食堂でもいいけど、(モテ会議なんて)あまり人に見られたくないから……屋上とかでどうかしら?」


「いいよ。じゃあ俺、購買に行ってパンでも買いに……」


「あー、待って待って。別に購買なんて行かなくても、ちゃんと丈瑠の分のお弁当も作ってきてるからさ」


「え、マジで?」


「大マジよ。ほら、これ」


 そう言って志津香は手に持っていたスクールバッグの中から弁当を1つ取り出すと、それを丈瑠に手渡した。


「最初から誘うつもりだったから、用意しておいたの。せいぜいありがたく思いなさいよね」


「サンキュー、志津香。いつも助かります」


「どういたしまして」


 素直に感謝の気持ちを伝えれば、志津香は得意げに笑ってみせた。


「それじゃあ、早く行きましょ。もたもたしてると、時間が無くなっちゃうからさ」


「そうだな。よし、行くか」


 そう言って二人は屋上に向かおうと歩き出す。

 しかし、数歩ばかり歩いたところで、志津香は足を止めて丈瑠の顔をじーっと見つめだした。


「ん? 急に立ち止まったりして、何かあったか?」


「んー、なんていうか……ちょっといいかしら?」


「え、なにを?」


 不思議そうに首を傾げた丈瑠に対して、志津香はゆっくりと歩み寄ってくる。

 そして互いの顔が間近にまで迫ると、彼女は丈瑠の後頭部、後ろ髪に手を伸ばした。

 そのまま優しく撫でるように手を滑らせると、丈瑠の頭を触り始めた。


「うーん、やっぱ髪の毛が伸びてきてるわね」


「そ、そうか?」


「うん。もうそろそろ髪が襟に届きそうになってるし、これから暑くなることだし、邪魔じゃない?」


「まあ、確かに……」


「だから、今日の放課後にでも切ってあげよっか? 確か部活は今日、休みだったでしょ?」


「そうだけど……いいのか?」


「ええ、いいわよ。(その方がお金も掛からないし、)あんたも私がやった方が気が楽でいいでしょ?」


「そうか……分かった。じゃあ、お願いするよ」


「うん、任せなさい」


 丈瑠と志津香は笑顔で頷き合うと、今度こそ屋上に向かうべく歩き出した。

 ……しかし、彼らは気づいていなかった。この時、自分達に向けられる視線があったことに。

 の視線を浴びていたことに最後まで気付かないまま、二人は教室から出て行くのだった。



 ◇ ◇ ◇




 丈瑠達が立ち去った後の教室内。

 先程までのやり取りのほとんど、ほぼ全てを見ていたクラスメイト達はヒソヒソと話し始めていた。


「見たかよ? あの二人、相変わらず仲の良いカップルぶりだよな?」


「見た見た。ナチュラルにイチャついてるし、正直、見てるこっちが恥ずかしくなったもん」


「だね~。あんな白昼堂々イチャイチャできるなんて、すごいし羨ましい限りだよね~」


「てか、作戦会議って何のことだろうな? なんかの隠語か?」


「僕が推測するに、おそらく次のデートの予定を立てる可能性が大ですな。間違いありません」


「ふっ、確かにそれはありうる。だから人目を気にして、屋上で食べようとか言い出したんだよ」


「しかし、七海さんも世話焼きというか、本当に尽くすタイプだよな。愛妻弁当まで作ってくるとか、家庭的で最高の彼女じゃん」


「あと、あれよね。さり気なく彼氏の髪の毛の長さとか気にしてて、細かいところまで見てたりとかさ。そういうのを見ると、やっぱりお似合いだと思うわね」


「しかも、自分で髪の毛を切ってあげるとか、あれ絶対に他の人に髪を触らせたくないとか、切らせたくないだけよ! 独占欲の塊よ! お、推せるわ!」


「いやー、ホント。あれは大胆を通り越して、ただのバカップルでは?」


「そうね。けど、今永くんも七海さんもどっちも天然というか、脇が甘いからさ。平気で他の異性に近寄ろうとするから、その辺は私達がフォローしてあげないとね」


「だな。まあ、本人達は完全に無自覚だろうけどな」


「けど、あれだけ想いあってるんだから、二人には幸せになってもらわないと。私達がしっかり支えてあげなくちゃ」


「おう! 二人の平和は俺達が頑張って守ってやろうぜ!」


「「「「「賛成!」」」」」


 丈瑠と志津香がいなくなった教室では、そんな声が上がっているのだった。




 クラスメイト編 完



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