悪魔の最期

落雷によって全身黒焦げになった黒い悪魔が海底へと沈んでいく。

「す、すげぇ!大俵さんとエミリーさんが遂に黒い悪魔を…。」

負傷した孝之も思わずボートから身を乗り出した。


「Good…。大俵…無茶苦茶だけど見事な作戦だった…。」

エミリーも感服しながらボートへと戻る。

それに次いで浩靖も孝之に手を貸してもらいながらボートに這い上がるが、黒い悪魔の尾びれの一撃により肋骨を負傷してしまっていた。

「大丈夫ッスか大俵さん?」

「ま、まぁな…。肋骨数本程度、奴を殺るには相当の代償だ…。」

黒い悪魔を倒しつつも、三人は嵐の海を岸に向かってボートを漕いでいく。


漸く海岸が視野に入ってきたその時…。

ボートの後方でオールを漕いでいた浩靖の前に海面から大口を開けた黒い悪魔が再び襲い掛かって来た。

その全身は黒く焼けただれてまさに悪魔のような形相を醸し出している。


「こ、こいつ!?何て執念だ…。」

「雷を受けてまだ生きてるなんて!?」

「不死身の怪物ッスよ~!」


驚愕する三人に執拗に迫る黒い悪魔がボートに体ごとのし掛かり、大口を開けて浩靖を襲った。

咄嗟にオールで黒い悪魔の頭部を攻撃する浩靖だが、オールの方がへし折れてしまった。

更に黒い悪魔の巨体でボートが斜めに沈み始める。

「うわぁぁぁ!」

「江原君!」

孝之は再び海へと落下し、エミリーもボートにしがみつく体勢に陥る。


そんな中、テント内から滑り落ちてきた木箱を浩靖はすかさず手に取った。

「そんなに喰いたいならこれでも喰らいやがれ!」

食らい付こうとする黒い悪魔の口に木箱を放り込む浩靖。

「鯱女!発煙弾をよこせ!」

ボートにしがみつくエミリーは、腰に着けた赤い発煙銃を浩靖に投げる。

それを受け取った浩靖は、木箱を豪快に噛み砕く黒い悪魔に銃口を向ける。

「鯱女!海に飛び込め!」

「あの木箱まさか!?」


黒い悪魔が木箱を噛み砕き、口を開けると大量の黒い火薬が付着している。

浩靖は殺されたジョーを思い返しながら叫ぶ。

「くたばれ!化物っ!」

浩靖が発射した発煙弾が黒い悪魔の口に直撃し、大爆発する。


咄嗟にエミリーが浩靖に横から飛び付き、二人は抱き合ったまま海に投げ出される。


黒い悪魔は粉々に爆散し、遂に海の藻屑と消えた。


「ハッハッハッ!見たか鯱女!」

「ったく、ホント無茶苦茶だな鮫男!」


抱き合う二人は思わず熱い口付けを交わしていた。


「大俵さ~ん!エミリーさ~ん!」

流されて来る孝之に気付き、二人はすぐに離れる。


「今度こそ黒い悪魔は死にましたね!」

「でも、ボートも爆発しちゃったわ…。」

「岸まであと二キロくらいか?」

荒れ狂う波が三人を逆に沖へと流そうとする。

しかし、そこに船の音と聞き覚えのある声が三人の耳に入ってくる。


「大ちゃん!エミリーちゃん!エバラ~!」

海上警備隊の船に乗って現れる佐々木に三人は更に歓喜の声を上げた。

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