人喰い鮫の存在

警察による海上捜索はその日も続けられたが、海水浴場付近にサメらしき海洋生物は見つからなかった。


最初の犠牲者の相方と思われる女性の行方も解らぬまま、夕方交番に戻った孝之の元にぐちゃぐちゃになったサーフボードを持った金髪の若者がウェットスーツ姿で現れた。


サーファーの若者は日中真っ二つにされたボードだけを残して海に消えた友人の話を孝之に話した。


「ま、マジッスか…。海中に何か居ませんでしたか?サメのような海洋生物的な物が…。」

「サメなんて見掛けなかったよ。あそこの波はサーファーの中じゃ有名なんで何回か来てるけど、サメなんか出た事なんて…。」

そこまで話して若者は閥が悪そうに口を閉じた。


「困りますね!南の区域は遊泳禁止なんだから入っては行けないのに…。」

「そ、そいつは知らなかったんだよ。勘弁してくれよお巡りさん。」

「まぁ、そんな事を咎めるよりも君の友人を捜索しなければな…。」

孝之は警察の捜索が始まってからそのサメと思われる怪物が人気の無い南の区域に移動した可能性があると見ていた。


翌日の捜索はそちらの区域を中心に行われた。

普段より高波と激流が激しいその海域での捜索は難航していたが、激流に流されている人間の右足を発見する。


船酔いと凄惨な発見に孝之は船の中で再び嘔吐していた。

右足は鑑識の結果、行方不明となったサーファーの一人である事が判明した。


報告を受けて哀しみに暮れるサーファーの若者は、やりきれない気持ちを孝之にぶつけてきた。

「何で海にサメがいるって告知しなかったんだよ!」

「すまない…。正直まだサメだと断定出来ていなかったんだ…。」

孝之は若者の気持ちを受け止めつつも無力な自分達を攻めるしかなかった。


一方、新たな犠牲者の鑑識結果により、犯人が巨大なサメである事は有力となった。

その結果を持って町長土井の元を訪れる佐々木。


「土井さん、これで分かって頂けたでしょう。海亀海岸の沿岸海域にはサメが存在する。しかも外海からの巨大なサメであることも予測出来て来た。」


土井は悔しさに何も応えなかった。


「土井さん、海開きは中止して頂きたい。これは警視庁からの直属の指示です。」

「わ、解りましたよ…。ただ、その主犯とされるサメが捕獲出来れば問題はないのでは?」

土井はまだ思惑通りと言った表情で佐々木に反撃する。


「まぁ、その時は引き続き厳重な監視下の基ではありますが、解禁も出きるでしょう…。」


佐々木の言葉に不敵な笑みを見せる土井。

彼はすぐに伊藤率いる漁業団体を港に集める。

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