【07 skit2.体育前】

・【07 skit2.体育前】


 次の授業は体育なので、着替えないといけない。

 女子は更衣室へ行って、男子はそのまま教室なんだけども、すぐに男子の大熊大我くんがデカい声で、

「おい! 志村! 早く脱げよ!」

 とか言い出して、女子のいる前で脱ぐわけないじゃんとか思っていながら、つい立ち止まって様子をうかがっていると、

「志村ぁ! 毛深い体を見せてくれよぉ!」

 と大熊大我くんが叫んで、周りの女子がクスクス笑いだしている。

 そういうの良くないと思うけども(笑うほうも、むしろ笑うほうが)と思っているわけなんだけども、大熊大我くんは止まらず、

「というか床に落ちているこの毛、オマエの胸毛か腹毛じゃね? ちりちりだもんなぁ!」

 と笑いながら言い、女子たちも「えぇー、何かヤダー」とか言って、そっちのほうがむしろ私が嫌な感じだなぁ、と思っていると、航大くんの声がした。

「大熊、そういうこと言うのやめろよ」

 すると大熊大我くんの声が聞こえなくなり、さすが航大くんだ、とますます惚れ直してしまうって感じ。

 一緒になって笑っていた女子もばつが悪そうな顔をして、そそくさと更衣室へ向かっていった。

 これならもう、と私は安心して更衣室に行ったんだけども、実際女子は何も安心していないって感じ。

 まあでも当たり前かぁ、クラスメイトが愚痴るように、

「いよいよ暑くなってきたからさ、薄い体操着にならないとまた杉本がキレるよねぇ」

「アイツ、キモいよね、女子の透けた下着見たいんじゃない?」

 杉本とは体育の先生の杉本先生のこと。

 杉本先生はジャージの下の、薄い体操着じゃないと怒る面倒な先生。

 この女子の言う通り、薄い体操着が本当に薄くて、下着が透けてしまうので、女子には不評なのだ。

 何でこんな体操着使っているんだろうと思っていると、一人の女子が、

「二枚着ると良い感じだよ!」

 というライフハックを言っていて、確かにそれはそうかも、と思った。

 でもごわごわするだろうなとも思っちゃうけども、男子にじっと見られるよりはマシか。

 まあ私はダッサいババシャツを中に着ているので、そういう心配は無い……けども、そもそも私の下着を見ようとする男子なんていないとは思う。

 そんな会話を聞きながら着替えていると、スクールカースト女子の九条渚さんが、

「芽衣また巨乳になったんじゃないっ?」

 とか言い出して、

「ちょっと、あんま見ないでよー」

 と仲間内でやっている分にはまあいいかと思っていると、九条渚さんは意地悪そうな声で、

「ゆぅなぁー! おっぱいデッカ! 彼氏いっぱいいるんじゃないのぉー?」

 と私と同じような陰キャ女子に絡んでいて、何かこういうの本当に最悪のメシマズ案件だなぁ、と思った。

 対する私は誰も魅力を感じないような寸胴体型で、逆に良かった。

 そんなこんなで着替え終わって、体育の授業へ行った。

 下着を男子から見られるとか胸が大きいとか、そういう心配してみたいとは思わないけども、全く誰の目にも映っていないというところは、ちょっと反省するべきなのかもしれない。

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