- 密談 -
- メリとメルが離れた後 -
ティアも水辺にきちんと座り軽く頭を下げた。
『主様お久しぶりでございます。先程いた人の子は我が命を助けてくれました。なので我が子として世話をしていきますのでよろしくお願いします』
『ほぅ、お前ほどの者が救われたと』
『意識が朦朧とする程多く血が流れ続け覚悟をしましたが、薬草で血止めをしてくれたので回復がギリギリ間に合いました』
『重畳』
『まだスムーズな会話は無理ですが、娘と息子共々簡単な念話が出来ております』
『ティーマーの才能があったのだな』
『私が強く望んだというのと』
ティアが主様にメルのこと語ったことを要約すると、
薬草採取のために森に通い、知り合いのペットや家畜を治療したこと。
野生のうさぎを治療して懐かれ困ったこと。
野生動物は血止めや罠から解放するだけなど最低限にしなさいと叱られたこと。
近隣の村の狩人や行商人やその護衛などに森でのあれこれを教えてもらったこと。
など受け入れる要素が元々あったのだと後に知って納得したと。
『なるほどのぅ』
『まだ狩が下手な息子を残して儚くならずに済んだのはあの子のおかげ。本当の両親は既に居ないため護ってやりたいのです』
メリがいくつか拠点が欲しいと願っていて、この沼の近くにも住める場所を探しに来たことを話し相談した。
『う~む』
実は沼の主である水蛇も悩みがあった。
水蛇一族の管理する池や沼が複数あり、その一つの池に10年に一度くらい人間が生贄として鳥の卵や動物の赤子を水中に捧げてくる場所がある。他の池でも人間は己が都合のために祈りという頼みをしに頻繁に来る。
そのため人間が近付き祈りを捧げていたので『またか』と思いつつメリに念話したのだった。
予想外に可愛らしい願いだったため拍子抜けした。しかし孤児になり尊敬し頼っていた薬師のところも、放蕩息子達のせいで逃げざるを得なかったと聞き、護ってやろうと思った。
そして最大の懸念であった事も思い起こす。
10年に一度生贄は前回までは森の生き物達やその眷属だったため、同じ種族や我が子を亡くしたばかりだったり、番を亡くした者などに預けて育ててもらっていた。
しかし3ヶ月ほど前に生贄捧げられたのは、獣状態だった狼獣人の子だった。獣人でも生涯獣形態で人語を話す者も居るため、預かった時は同族以外は気付かなかった。他種族は意識して嗅がないと違いが分からないことがあるためだ。通常は人の3歳相当くらいまでは生まれた時の形態のままのはずであり、預かっても特に問題はないと思ったそうだ。
ところが1週間前に何があったか人形態になったまま戻らなくなったらしい。群れが居たのは森の浅い場所で、獣人や狩人達が時々来る場所で見つかると攫ったと勘違いされ討伐の危険性が高いため、3日程前に向こう岸に避難と相談に訪れていた。
『お前と人の子に頼みがある』
狼獣人の子を引き受けてくれるなら棲家や必要な物を用意するという提案だった。人間形態の世話が出来る者が居ないし、原因が分からず戻すことも出来ないため困っていたという。
『あの子次第ですが、たぶん喜んでくれるでしょう』
主様から吉報を聞いた狼達の群れは物凄い勢いで向こう岸から駆けて来た。獣人と気付きつつ受け入れたのは、腹の怪我で産めなくなった中堅のメスで、同じくらいの大きさだった兄弟の子と群れで子育てをしていたそうだ。
着いた時にメリが居なかったため訝しがられたが、森豹が大怪我したところを助けてくれた孤児である人の子を我が子として受け入れ、一緒に育ててくれると聞いてホッとしたようだ。
メルに念話で『メリも連れて帰って来い』と伝え、狼達が居るが警戒して唸らない様に注意した。
狼達は人の子を怖がらせない様に全員伏せて待つことになった。
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