驚愕

順番に撫でていた手から何かが抜けた感じがして驚いて手を見た。

『(ワタシ、ティア)』

『(リリ)』

『(‥ル)』

突然頭の中に辿々しい言葉が響いた。

「えっ!」

『(メリ、ワガコ)』

その直後に頬をベロんと舐められた。

「ッ!嘘、テイミングしちゃったの?」



一般的なテイミングは力でねじ伏せて服従させるか、信頼関係を築いて互いに納得して主従関係になるものを指す。

だが今回のテイムは滅多にない対等なテイムの一つの家族ファミリアテイミング。互いが守り、守られる血の繋がりではない本来なら相容れない異種族との家族の絆の契約。

そのため一定の知能があればいきなりカタコトの念話が可能になり、馴染む程絆が深くなる程に流暢になっていく。

この特殊なテイミングは成人すれば人化出来る種族やエルフなどの長命種の長老クラスしか知らず、ただ一緒に生活しただけでは出来ず、家族になりたいと時にのみ成立するために事例がほとんどない。

メリは安易に名付けしたせいで、テイムしてしまったと落ち込んだ。

でも3匹から伝わって来る嬉しいという感情と、愛情を感じるすり寄りに徐々に元気になっていく。


 出かける気分じゃなくなったので採取していた薬草を整理することにした。生のまま使うもの分け、虫食いや成長不良なものなどを取り除いた。時間のある時に作った蔓製の籠に広げて置いたり、茎を纏めて縛って吊るした。薬研は重くて嵩張るから持って来れなくて作れるものは限られるけど、代わりになるものを見つけるまでは素材を集めるだけ用意しようと思っている。

 生のは肉や魚に使う料理用。臭みを消したり味付けに使う。貯めていたものを全て処理してしまった。桶にまとめて入れていた処分するはずの薬草を片付け様と手にかけたが、何かおかしい。

「あれ?もう少しあったはずなのに」

保管場所が少ないから小さ過ぎるものは全部捨て様と入れたはずだからちょっと盛り上がっているはずなのに、平らになっている。

ジッと観察していたら微かに動いた様に見えた。虫か爬虫類でも入ったのかと布を持って来て桶の中身を広げて拾った枝でかき回してみると、半透明なものが薬草を取り込んで溶かしていた。

「何故こんなところにスライムがいるの?しかも小さい?」

スライムは何処にでもいるが、最弱種族の1つなので近くに自身の5倍以上の生物がいる場所には近づかない。

食事に夢中になって偶然目にするか、逃げ惑っているところを見かけるか。

なので昨日の夕方からずっと1人と3匹が居る洞窟にいるはずがない。

 雑食と言われるスライムだが、薬草を取り込んでいるところを発見された例は聞いたことがない。それに最小サイズが大人の片手くらいと言われているが、この子はその半分もない。消化能力も低い様で良く観察してようやく溶けているのが分かるくらい。

森の掃除屋とか悪食球体という別名がある様に、他の生き物の食べ残しや、毒でも無機物(魔力など入り)も包み込んで溶かす。怪我などで動けなくなった人間も対象で、強くなると人間を襲うこともある。でも大抵は気付かずに踏み付けたり蹴ったりして襲いかかられ、衣服や装備を溶かされるので、見つけ次第討伐か、遠くに飛ばしてやり過ごす。

森などの浅いところで薬草取りをしている冒険者や見習い冒険者達にとっては経験値か、時々落とすドロップ品目当ての獲物でもある。

「スライムの赤ちゃんなのかなぁ」

『(ソウカモ)』と母豹。


今取り込んでいるのは痛み止め効果のある薬草。生のまま揉み込んで患部に当てる方法もあるけど、刻んで絞った汁や他の薬草と混ぜた方が効果は高い。

中の薬草が無くなった姿は鸚鵡の卵くらいの大きさ。ゴソゴソ動いていたが、視線を感じた様で固まった。

手を伸ばして掴み手のひらの上に乗せて観察する。

「あなたも私と同じ1人なら、家族になってみる?」

と問いかけてみる。

「さすがに言葉は分からないよね?でもせっかくだから名前付けてみよう」

う~ん。

「エナはどう?」

瞬間にまた何か抜けた感じ。

ヤッバ、またテイムしちゃったかもしれない。


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