1章

逃亡

 村が寝静まるまで待ってからそっと裏口を開け籠を背負って森へと向かったの。背負い籠は早朝に採取をしに行ったと思わせるため、出発した時間を誤魔化せたらと思って持って出たの。中に持ち出せるだけの荷物を入れたカバンと毛布が入っている。

 森に逃げ込んだ後は見つからない様に背負い籠を直ぐには見つからない場所へ隠した。

それから下からでは見つからない様な大木を探して登った。夜は歩き回るのは危ないからこれ以上動くのは止めるの。窪みに荷物を抱える様にして毛布を羽織って目を閉じた。


 朝日が昇ると直ぐに起き、慎重に今まで入ったことのない奥へと急ぐ様に必死になって早足で歩いた。息が上って苦しくて少し立ち止まる以外は、なるべく足を止めない様にお昼近くまで歩き続ける。居ないことに気付かれるのがいつか分からないけど、今日は出来る限り遠くまで行かなきゃと思ったから。

 甘い匂いのする果実を見つけ休憩する。

「…あまい」

 口に入れるとホッとする。完熟し切った実はその場で食べ、青い物以外は袋に入れて腰にぶら下げた。水があるところまでは出来るだけ休憩せずに早歩きをする。暗くなって来たので今夜の寝床を探すため速度を落とす。今夜は昨夜より大きな木で荷物を枕にして寝た。翌朝は枝を渡って離れた場所から降りて更に奥へと進む。

 そんな風に数日間水場を見つけるまではひたすら歩いた。毎日のように森に採取してたから良かった。そうじゃなければとっくに挫折して捕まってたと思う。でも段々立ち止まる時間が増えて、速度も遅くなってる気がする。ここまで動物や魔獣に遭遇しなかったのは、薬師のおばあさん直伝の強力魔避け玉のおかげと、爪や足跡の痕跡を見てルートの決めているからなんだよね。

 ようやく目標にしていた川の音が聞こえる。先ずは喉を潤し、川を渡って下流へ川沿いにしばらく歩く。薬草や食べられる物を採取しながら開けた場所まで行く。枯れ枝を集め焚き火をし、きのこは大きな葉に包み焼いて食べる。岩の反対側に枯葉を集めて敷き詰めしばらく体を横たえ休憩する。起き上がったら濡らして軽く絞った布で身体拭き新しい服に着替えた。火の始末をしたら空の竹筒を水でいっぱいにし、荷物を片付け川から離れて奥へと進む。

 焚き火や落ち葉の寝床はもしものための偽装工作なんだ。川下の方へ向かったように思わせるためなの。こういうのはお母さんが旅の時に悪い人達にあった経験から実際にやって来たことを聞いて考えたの。森に入る時に迷子になったり、動物とかにあって逃げる時に必要だからって旅の知恵を色々教えてもらったの。隣村の狩人のおじさんや時々来る行商のおじさんや護衛の冒険者の人にも教えてもらったよ。

 生き物達を誤魔化すために木に登り、今度は川上沿いになるように枝を伝って移動する。移れなくなったので降りて寝床を探す。こうすることで臭いで探す動物を誤魔化すの。

 小さな洞穴を見つけた。入り口付近は低く狭いが中は意外と広くて高かった。放置されてから時間が経っている様で臭いはそれほどしなかったので、しばらく拠点にする事にしたの。眠気が限界だったから。

 入り口から中を燻している間に寝床用の枯葉を集める。それから太い枯れ枝や石を焚き火用と入り口を塞ぐ用に集めた。慌ただしく食事を済ますと久しぶりに安心して寝ることにした。

 久しぶりに安全な場所で手足を伸ばして柔らかな落ち葉の上で寝られたから逃亡生活の疲れも少しは楽になった。採取道具だけ持って周囲を住めるかどうかの確認のために軽く散策する。いつでも次の移動が出来る様に昨日脱いだ服や汚れた毛布を洗って干したりなどで1日が終わる。明日は今日より更に周辺を散策して目印になるところも探すの。こんな森の奥まではポポラ村の人は来れないから、私を捜索するのなら隣村の狩人か、冒険者に依頼しないと無理。これからは住めるところを探すの。ここは候補の1つにするつもりで、採取の拠点や隠れ家としてもいいかなって思ってる。目印をなるところを見つけたら次の場所を探すために出発するの。

 あと少しで家から持って来た食料がなくなるから、食料が手に入りやすい場所を他にも見つけないと。


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